第288話 え、パパが勇者!? 前触れなしの大爆発!? 家族の絆で暗闇の先の光を目指せ!?
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
激しい爆発の余波が、古い回廊の崩落音とともに重く響き渡る。
大量の土煙と灰色の粉塵が一瞬で空間を覆い尽くし、目の前の視界は完全に塞がれてしまった。
亮「ゴホッ、ゴホッ! みんな、大丈夫か!? 怪我はないか!?」
あんな「パパ……!? ゲホッ、パパなの!?」
亮「あんな! 無事か!?」
あんな「うん! 大丈夫だよ!」
みゆ「私も問題ありません」
ベアトリス「わたくしも問題ありませんわ!」
もっふる「ピィー♪」
もっふるも無事を知らせるように鳴き、亮は心からホッと胸を撫でおろした。
亮「よかった……! グルムさんたちは!? 無事ですかー!?」
グルム「神崎殿っ!」
もうもうと立ち込める土煙の向こう側から、グルムの声が返ってきた。
グルム「こちらは全員無事だ! そっちに怪我人はいないか!?」
亮「よかったぁ! こっちも全員無事です!」
ボルグ「だが……事態はよろしくないな」
続いて聞こえてきたボルグの声は、どこか重苦しかった。
ボルグ「通路が……派手に崩れてしまったぞ」
亮が土煙の向こうに目を凝らす。
だが粉塵が邪魔をして、数メートル先すら定かではない。
あんな「足元もガレキだらけだし、前が全然見えないよ」
みゆ「はい。土煙が落ち着くまで、この場で待機です」
ベアトリス「無理に動いて二次崩落に巻き込まれるのは危険ですわ!」
一行はその場で姿勢を低くし、粉塵が落ち着くのをじっと待った。
やがて、少しずつ視界がクリアになっていく。
目の前に現れたのは、天井から落ちてきた巨大な岩塊が隙間なく積み上がった、巨大なガレキの山だった。
回廊は完全に塞がれてしまっている。
亮「……うわぁ、見事に埋まってるな……」
あんな「これじゃ……今来た道には戻れないね」
みゆ「はい。完全に退路が遮断されました」
ボルグ「文字通り、完全に足止めだな」
あんな「ただ、これだけの爆発で怪我人がいないのは良かったよね」
みゆ「奇跡としか言いようがありません」
亮「確かにな。怪我人がいないのは不幸中の幸いだけど……」
ベアトリス「わたくしが『火炎剣』でこの岩山ごと爆破して吹き飛ばしますわ!」
あんな「ベアトリス、それは絶対にやめておこうね!?」
みゆ「支持します。衝撃で天井全体が崩落し、全員が生き埋めになる確率が98%を超えます」
ベアトリス「……はいですわ」
あんなとみゆに即座に制され、ベアトリスはしゅんと肩を落とした。
グルム「ふぅ……これ以上前進するのは不可能だな。我々調査隊は、一旦地上へ引き返す」
あんな「それが一番安全ですね。無理に掘り進むのも危険ですし」
グルム「ああ。この事態と、封印の扉が開いていた件を、急ぎ国王陛下へ報告せねばならん」
ノルク「ええ。魔物の異常行動も含め、すべて詳細に伝える必要があります」
みゆ「適切なご判断だと思います」
亮「俺たちは……」
亮はくるりと向き直り、暗闇の続く回廊の奥を見つめた。
戻る道は途絶えたが、目の前の通路は崩れることなく、静かに奥へと伸びている。
亮「俺たちは、このまま先へ進むしかなさそうだな」
あんな「そうだね。戻れないなら進むしかないよ」
ベアトリス「パパが行かれるのでしたら、どこまでもお供いたしますわ!」
みゆ「この回廊の突き当たりに何があるのか、確認しておく必要があります」
グルム「神崎殿!」
ガレキの向こうからグルムの声が響く。
亮「はい!」
グルム「くれぐれも無理はするなよ!」
亮「分かりました! お互いに気をつけましょう!」
一度会話が途切れ、静寂が戻ってくる。
だが、亮は首をかしげながら不意に疑問を口にした。
亮「……そういえばさ」
みゆ「どうしました、パパ?」
亮「さっきの爆発だけど……一体何だったんだろうな?」
みゆ「わかりません」
みゆは積み上がったガレキの山を見つめる。
みゆ「爆発が起きた化学的・魔導的な原因そのものは、現在の情報だけでは特定不可能です」
ボルグ「俺たちにもさっぱりだ。仕掛け罠の類にも見えなかったが……」
グルム「突然すぎたからな」
あんな「でもさ……」
あんなが崩れた天井を見上げながら、不審そうに腕を組む。
あんな「タイミング的に、ちょっとヘンじゃない?」
みゆ「はい。お姉ちゃんの指摘は極めて合理的です」
みゆが静かに深く頷く。
みゆ「この場所で、偶然爆発が起きたとは考えにくいです」
亮「やっぱりそう思うか?」
みゆ「はい。私たちの進行に合わせて起きた、意図的な攻撃と見るのが妥当です」
ベアトリス「では……狙われたのですわ!」
みゆ「その可能性が高いです」
亮「俺たちを狙った……? 一体誰が?」
みゆ「現時点では特定できません」
グルム「何者かが前もって仕掛けていたということか……?」
みゆ「その説が有力です」
ボルグ「しかし、いつそんなものを仕掛けたんだ?」
みゆ「それも不明です」
ノルク「私たちがここを通ることを見越していたのでしょうか……」
みゆ「そこまでは断定できませんが、一つ言えることがあります」
亮「……なんだ?」
みゆ「封印を解いた人物の存在です」
亮「……!」
みゆ「はい。あの固く閉ざされていた扉を開けた者。その人物がこの奥に潜み、私たちが追いかけてくるのを見越して仕掛けを施した……そう考えると、すべての辻褄が合います」
あんな「じゃあ……その犯人が、まだこの先にいるかもしれないってこと!?」
みゆ「十分に考えられます」
ベアトリス「見つけ出したら、わたくしが速やかに吹き飛ばして差し上げますわ!」
あんな「だから吹っ飛ばすのはダメだってば!……でも、それだけの仕掛けができる相手ってことだよね」
みゆ「はい。相応の能力を持った存在であることは確実です」
亮「よし……気を引き締めて行かないとな」
みゆ「はい」
ガレキの向こうで、グルムが低く唸った。
グルム「……その推理だけでも、陛下へ持ち帰る価値は十二分にあるな」
亮「よろしくお願いします、グルムさん」
その時だった。
あんな「……あ、パパ」
あんなが不意に亮の服の裾を引いた。
亮「ん? どうしたあんな?」
あんな「今……何か見えなかった?」
亮「え? 何が?」
あんな「向こう……通路の奥」
あんなが真っ直ぐ指を差す。
亮「……?」
あんな「今、一瞬だけど……何か影みたいなのが動いたような……」
亮「影……!?」
薄暗い通路の奥。
目が慣れてきた暗闇の中で、確かに『何か』が揺らめくように動いた。
亮「……っ!」
みゆ「今のは……」
ベアトリス「間違いありませんわ、人影ですわ!」
グルム「何だと!? 向こうに誰かいるのか!?」
あんな「でも、もう……」
みゆ「……姿が見えなくなりました。気配も消えています」
亮「追えるか!?」
みゆ「いいえ、足跡すら残っていません。追いかけるのは危険です」
亮「くそ……逃げ足が速いな」
静まり返る通路。
人影は完全に消えていた。
あの影は一体誰だったのか。
ここで何をしていたのか。
この爆発と関係があるのか。
何一つ答えは出ない。
グルム「神崎殿!」
亮「はい!」
グルム「我々はこれより撤退する! くれぐれも気をつけてな!」
亮「分かりました! グルムさんたちも気をつけて!」
ボルグ「無事でいろよ!」
ノルク「ご武運を!」
あんな「みんなも気をつけてねー!」
グルム「おうっ!」
ドワーフ調査隊の重厚な足音が、ガレキの向こう側へと遠ざかっていく。
神崎家はその足音が完全に聞こえなくなるのを見届け、ゆっくりと通路の奥へと向き直った。
亮「……よし、行こうか」
あんな「うん!」
みゆ「この先の状況を解明しましょう」
ベアトリス「お供いたしますわ!」
もっふる「ピィー♪」
再び歩み始めた神崎家。
爆発の真相も。
あの不気味な人影の正体も。
封印を解いた何者かの目的も。
何も分からないまま、静まり返った一本道を進んでいく。
すると――。
亮「……あれ?」
あんな「どうしたの、パパ?」
亮「前……何か見えないか?」
みゆ「……これは」
ベアトリス「光ですわ! 光が見えますわ!」
あんな「うそ、地上に出られたの!?」
もっふる「ピィー♪」
漆黒の暗闇が続いていた通路の果てに、ぽつりと小さな、温かい光が揺れていた。
こうして――
謎の爆発と不気味な人影を残したまま、神崎家は暗闇の果てに眩しい光を見出していた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)の旅路の先に、
まだ誰も見ぬ新たな局面が広がろうとしていた。
――そして、その空のさらに高く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、どこまで深き闇をも楽しげな道中へと変えてしまうのですね。
古代の封印が解かれ、招かれざる不穏な気配が漂う禁忌の回廊。
暗闇の底から押し寄せる狂暴な魔物の群れや、行く手を阻む唐突な大爆破に晒されながらも、彼らは決して絆を失うことはありませんでしたね。
胸の奥から湧き上がる感覚を信じ、新たな技を鮮やかに繰り出した娘の成長。
背中を預け合い、完璧な息遣いで敵を退ける三姉妹の揺るぎない絆。
そして、幾重もの理不尽なトラブルに巻き込まれながらも、底抜けの明るさで周囲の恐怖を和らげてしまうあの存在……。
使命感ではなく、純粋な気持ちで……ただ幸せを分かち合い歩む彼らの姿。
どれほど深く不気味な暗闇の中であっても、互いを思いやり手を取り合うその純粋な想いこそが、世界で最も強く、そして優しい魔法なのかもしれません。
未知の深淵を前にしても恐れることなく、ただ家族とともに前を見つめる彼らの歩みは、冷たい回廊の空気さえも温かな光で満たしていくのです。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
断たれた退路の先、暗闇の果てに揺れる温かな光は、あの家族をどのような新しい物語へと導くのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと闇を払う。
その微笑みは、深く静かに優しかった。
【第三十三章「回廊編」を終えて】
古の封印が破られ、怪しげな暗闇へと伸びる一本の回廊。
次々と襲い来る魔物の群れや前触れなき大爆発、そして暗闇の奥に蠢く謎の人影……。
怒濤のトラブルに見舞われながらも、あんなの新技や三姉妹の完璧な連携で見事乗り切った神崎家。
退路を断たれた暗闇の果てで、一行の目に飛び込んできた光の正体とは一体――!?
亮「ふぅ〜! 今回も大冒険だったな! 俺の『フラグ建築スキル』も絶好調だったし、これは読者みんなからの『★』や『ブックマーク』という名の勇者ポイントも大幅増量間違いなしだな!」
あんな「ちょっとパパ! 威張って言うことじゃないでしょ! 毎回ヒヤヒヤさせられる身にもなってよね……。でも、こうして無事に乗り越えられたのは応援してくれるみんなのおかげだね。これからも一緒にスローライフ(?)を歩んでくれたら嬉しいな!」
みゆ「パパの理不尽トラブル誘発率は99.7%を記録。今後の『やらかし予防』および観測データの精度向上のためにも、読者の皆様による【★評価】と【ブックマーク登録】という名のバックアップをご協力お願いいたします」
ベアトリス「お姉様方の仰る通りですわ! パパのやらかしも三姉妹の絆も、皆様の応援があってこそですわ!」
もっふる「ピィー♪」




