第287話 え、パパが勇者!? 新スキル発動!? 99.7%の確率で理不尽トラブル!?
襲いかかる魔物たちとの激しい戦いを終えた一行は、古びた回廊の奥へと進んでいた。
先頭を行くのは神崎家の面々。
そこから少し距離を置き、慎重な足取りで調査隊の三人が続く。
先ほどまでの狂乱のような乱戦がまるで嘘のように、通路は静まり返っていた。
亮「……急に静かになったなぁ」
あんな「さっきまで、あれだけの数の魔物が押し寄せてきてたのにね」
みゆ「はい。現在は魔力・生命体反応ともに完全に皆無です」
ベアトリス「ですが、静かすぎるのも少々不気味ですわね。まるで嵐の前の静けさのようですわ!」
グルム「皆、決して油断はするなよ」
亮「分かってるって、グルムさん」
グルム「この回廊の突き当たりに何が存在するのか、俺たちにはまだ何も見えておらんのだからな」
ボルグ「ああ。それに、この通路自体もどこまで伸びているのやらさっぱりだ」
亮「本当に長いよなー。一本道だから迷わないのは助かるけどさ」
ボルグ「それにしても……」
ボルグが歩きながら、ふと立ち止まって石壁の表面に手を触れた。
ボルグ「やはり、どう見ても鉱山や採掘用の坑道とは造りが根本的に異なる」
あんな「そうなの?」
ボルグ「ああ。鉱石を掘り出すための坑道なら、もっと補強の支柱を立てたり、掘削しやすいようにアーチ状の傾斜をつける。ここは……まるで何かを隠し、不可侵に保つための回廊だ」
みゆ「では、一体何のために作られた場所なのでしょうか」
ボルグ「それがさっぱり分からんのだ」
ノルク「ここまで深く潜っても、建造した者の意図すら見えてきませんね」
ベアトリス「なにせ、古の封印扉の奥に隠されていた回廊ですもの! 普通の場所であるはずがありませんわ!」
亮「まあ、確かに言えてるなぁ」
神崎家とドワーフたちは、暗闇の先を目指してさらに奥へと足を進めていく。
壁面の石組みは気が遠くなるほど古く、足元の石畳にも長い年月の重みが刻み込まれている。
それにもかかわらず、大きな崩落を起こすこともなく、一本の直線となって深く深く伸びていた。
みゆ「依然として、周囲に異常な魔力はありません」
ノルク「こちらも魔導感知に変化はありませんね」
グルム「魔物の気配は?」
ノルク「今のところ、全く感じられません」
亮「なんだぁ。じゃあ、このまま何事もなくスーッと終わってくれれば万々歳だな!」
あんな「ちょっとパパ! それ完全にフラグだからやめてよ!」
亮「ええーっ!? なんでだよ、無事を祈っただけじゃないか!」
ベアトリス「確かに、そのようなことを言った直後に何か起こることは多いですわ!」
亮「俺のせいなの?」
みゆ「はい。分析によりますと、今回はパパの『フラグ建築スキル』と『トラブルホイホイ』による相乗効果が期待されます」
亮「相乗効果!?それに、フラグ建築スキルって、新しいのが増えているのだけど」
みゆ「はい。新スキルを取得しました。したがって、99.7%の確率で何らかの理不尽なトラブルに巻き込まれます」
亮「ほぼ100%じゃん!それにそんなスキル取得してないからねー」
あんな「まあ、いつもの事だから今更驚かないけど」
みゆ「完全に想定内です」
もっふる「ピィー♪」
グルム「ハハハ! お前たちは毎回楽しそうだ」
ボルグ「本当にな。頼もしい限りだ」
笑い声が響き渡り、和やかな空気のまま静かな通路を進んでいく。
コツ。 コツ。 コツ。
静寂の中、全員の靴音だけが重なり合って遠くまで響いていた。
何が起こるわけでもなく、一行は順調に回廊の深部へと足を踏み入れていく。
しばらく歩いたところで、グルムがふと足を止めた。
グルム「……」
ボルグ「どうした、グルム?」
グルム「……いや、気のせいか。何でもない」
ボルグ「そうか」
グルムが前方の暗闇を確認する。
仕掛けらしきものも、怪しい影もない。
ただ、真っ直ぐな通路が果てしなく続いているだけだ。
ノルク「まだまだ先が長そうですね」
みゆ「ええ。ですが止まっているわけにもいきません」
あんな「よし、気を取り直して行こう!」
亮「おうっ!」
もっふる「ピィー♪」
再び歩みを進める一行。
一歩。
また一歩。
神崎家と調査隊が、さらに奥へ進んでいく。
その瞬間。
―――――――――ッ!!!!
ドォォォォォォォォォンッ!!!!!
閃光。
鼓膜を打ち破る爆音とともに、足元の地面が一瞬で跳ね上がった。
黒煙と紅蓮の熱風が津波となって押し寄せ、頭上の天井を叩き割る。
砕けた巨岩が嵐のように降り注ぎ、視界の全てを塗りつぶした。
あんな「キャァァァァァッ!?」
みゆ「この爆……っ!」
ベアトリス「皆さまー」
亮「みんなーーーっ!?」
叫び声すら強烈な衝撃波に呑み込まれ、爆炎の渦の中へと掻き消えていった。
こうして――
前触れもなく牙を剥いた圧倒的な大爆破。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
激しい衝撃と黒煙の底へと一瞬にして呑み込まれてしまった。
前触れなしの大爆発で回廊が完全崩落?
逃げ場なしの絶体絶命の危機を奇跡的に無傷で乗り切るも、暗闇の奥に浮かび上がる怪しい影の存在。
退路を断たれた神崎家は、暗闇の果てに揺れる謎の光を目指して突き進む。
次回、第288話 え、パパが勇者!? 前触れなしの大爆発!? 家族の絆で暗闇の先の光を目指せ!?




