第284話 え、パパが勇者!? おとなしい魔物が連続強襲!? 娘の鋭い考察で見えない黒幕発覚!?
魔物の群れを撃退した一行は、再び不気味なまでに真っ直ぐな通路の奥へと進んでいった。
ボルグ「……この魔物たちについても、戻ったら王へ報告した方がいいな」
ノルク「はい。封印の先に魔物がいたことも伝える必要があります」
あんな「さっきの魔物、突進力は凄かったよね」
みゆ「あの巨大な鋭い爪による攻撃も侮れません」
ベアトリス「今回は数が少なくて助かりましたわ!」
グルム「油断は禁物だぞ。この通路はまだ分からないことが多すぎる」
亮「そうだな。何が出てくるか分からないし、気を引き締めていこう」
一行は警戒を維持しながら、真っ直ぐな回廊を進んでいく。
先頭に立つのは神崎家の面々。
そのすぐ後ろを、ドワーフの三人が慎重な足取りで追う。
壁も床も古い石造りだが、崩落している場所は一つとしてない。
亮「それにしても、本当に長いなー」
あんな「うん。どこまで続いてるんだろうね」
ベアトリス「一向に先が見えませんわ!」
みゆ「一本道ですから、ひたすら前進するしか選択肢はありません」
亮「一直線っていうのも、なんだか退屈になってくるな」
グルム「ハハ、まあそう言うな」
もっふる「ピィー♪」
もっふるののどかな鳴き声に、張り詰めていた緊張がほんの少しだけ和らぐ。
みゆ「……待ってください」
みゆが小さな声で静止を促し、足を止めた。
亮「どうかしたか?」
グルム「……」
みゆは無言のまま、薄暗い通路の先を見据えている。
ボルグ「何かあったか?」
みゆ「気配がします。奥から……」
あんな「また魔物……!?」
みゆ「可能性は極めて高いです」
全員が前方の暗闇へ集中する。
だが、何も見えない。
石畳の奥深くから、確かに何かが迫ってくる気配があった。
カツ……。
カツ……。
固い爪が石畳を引っ掻くような、小さな音が不気味に響き始める。
亮「……何か聞こえてきたな」
みゆ「はい」
ベアトリス「確実にこちらへ近づいてきていますわ!」
あんな「みんな、行くよ!」
あんなが速やかに剣を抜き、みゆが杖を構える。
ベアトリスも構えを取った。
グルム「俺たちは邪魔にならないように後ろに下がっていよう」
ボルグ「分かった」
ノルク「任せました!」
足音が次第に大きくなっていく。
カツ……!
カツ……!
そして薄暗い闇を切り裂き、再び一匹の魔物がその巨体を現した。
あんな「また来た!」
ベアトリス「来ますわ!」
魔物が激しい咆哮とともに一気に地面を蹴った。
あんな「任せて!」
あんなが前へ躍り出る。
真っ直ぐ突っ込んでくる相手の攻撃を間一髪で受け流し、そのまま素早く側面へ回り込んだ。
みゆ「今です! ファイア!」
みゆの杖から放たれた炎が一直線に飛ぶ。
だが、魔物は巨体に似合わぬ身軽さで身体をひねり、火球をかわした。
ベアトリス「こちらですわ! 火炎剣!」
反対側から迫るベアトリスの炎の刃に対し、魔物は後方へ大きく跳び退く。
あんな「逃がさない!」
あんながすかさず追撃の踏み込みを見せ、上段から剣を振り下ろした。
ガキン!
硬い爪で刃を受け止めた魔物が、そのまま激しく押し返してくる。
あんな「くっ……力が強い!」
亮「あんな!」
あんな「大丈夫!」
あんながぐっと足を踏みしめ、押し切られるのを耐え抜く。
魔物は低く唸りながら、再び距離を詰めてきた。
みゆ「正面から来ます!」
あんな「分かった!」
突進してくる相手を前に、あんなの脳裏を一瞬だけ先ほどの感覚がかすめた。
――大地斬。
あんな「……っ!」
だが、あんなは今回、その技を発動させられなかった。
まだ感覚を完全に掴みきれていない。
あんな「まだ……焦っちゃダメ……!」
みゆ「お姉ちゃん!」
あんな「任せて!」
すれ違いざまに相手の突進を横へかわす。
その隙を見逃さず、ベアトリスが前へ躍り出た。
ベアトリス「全力ですわ!」
みゆ「ファイア!」
ベアトリス「火炎剣!」
左右から挟み込むように放たれた二つの炎が、魔物の動きを完全に止めた。
あんな「そこっ!」
あんなが飛び込み、渾身の力で刃を叩き込む。
深く刃が入り、魔物が大きくよろめいた。
グルム「……いや、まだだ!」
倒れるかと思われた魔物が、荒い息を吐きながら無理やり体勢を立て直す。
ボルグ「何だと!? まだ動くのか!」
亮「なかなかしぶとい奴だな」
みゆ「……おかしいです」
亮「何がだ、みゆ?」
みゆは荒ぶる敵を凝視していた。
みゆ「このホールモールという種族は、本来Cランクの比較的おとなしい魔物です。こちらから積極的に攻撃や刺激を与えない限り、このように執拗に人を襲う習性はありません」
ボルグ「おとなしいだと……? この猛攻がか?」
ノルク「では、なぜこれほど過剰に攻撃的なのですか……?」
みゆ「原因は不明です」
魔物が血走った目をギラつかせ、再び鋭い爪を構えた。
あんな「また来るよ!」
みゆ「気をつけてください!」
大きく踏み込み、弾丸のような速度で距離を詰めてくる。
あんな「何度来ても跳ね返すだけ!」
ベアトリス「右ですわ!」
あんな「分かった!」
間一髪で攻撃をかわす。
だが、魔物は威力を殺さぬまま反転し、再び牙を剥いて襲いかかってきた。
亮「なんだってこんなに必死なんだ……?」
みゆ「やはり異常です……!」
通路に魔物の金切り声のような咆哮が不気味に響き渡る。
ノルク「こんなにも執拗に……まるで何かに怯えているかのような……」
グルム「何かに追われて逃げてきているのか……?」
ボルグ「だとしたら、俺たちに牙をむく理由が通らんぞ!」
みゆ「……」
みゆは激しく暴れる目の前の敵と、その奥へ果てしなく続く暗闇の通路を交互に見つめた。
みゆ「もしかすると……この魔物自体が、何者かによって『誘導』されている……?」
亮「誘導……?」
みゆ「いえ、まだ確証はありません」
魔物が三度、怒涛の勢いで襲いかかってくる。
あんな「考えるのは倒してから!」
みゆ「了解です!」
ベアトリス「迎え撃ちますわ!」
三人が同時に武器を構え、迫り来る影へと踏み込んだ。
こうして――
本来はおとなしいはずの魔物が見せる異常な執着。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)に、
暗闇の奥から発せられる“見えない意思”の存在が静かにまとわりつき始めていた。
本来はおとなしいはずの魔物が、まさかの狂暴化?
暗闇の底から響き渡る重なり合った無数の足音……。
押し寄せる魔物の大群に神崎家が大ピンチ!?
次回、第285話 え、パパが勇者!? 暗闇から無数の足音!? 狂暴化した魔物の群れが押し寄せて大ピンチ!?




