第281話 え、パパが勇者!? 破られた古代の封印と謎の侵入者!? パパの『トラブルホイホイ』が発動!?
巨大な封印の扉の前で、神崎家とドワーフ調査隊の一行は完全に言葉を失っていた。
昨日、亮たちが偶然足を踏み入れた際には、まるで山そのものが固く口を閉ざしているかのように、圧倒的な圧迫感をもって立ち塞がっていた重厚な扉。
だが、いま目の前にある扉は、大人が二人並んで悠々と通り抜けられるほどの隙間を開け、静まり返っている。
ノルクが震える手で術師用の短い杖をかざし、先端に灯した魔術の光を扉の隙間へと向けた。
ノルク「……そんな……。封印の術式が完全に無力化されています……!」
グルム「何だと……!? 一体どうやって……」
ボルグ「一大事だぞこれは! 直ちに王宮へ引き返し、王へ報告しなければ」
ノルク「そうですね。戻りましょう」
王から下された本来の命は、あくまで「封印に異常がないか」を確認することであった。
その封印が打ち破られ、扉が開けられている。
これ以上先に進むのは危険極まりない。
ボルグが青ざめた顔で引き返そうとする中、隊長のグルムだけは開いた扉の隙間を見つめたまま、微動だにしなかった。
あんな「グルムさん、どうしたんですか? 顔色がすごく悪いですよ……」
グルム「……一つ、どうしても気になることがあるのだ」
ボルグ「何が気になるというのだ! 一刻を争う事態だぞ!」
グルム「分かっている、が……」
亮「どうしたんです? 何か嫌な予感でもするのですか?」
グルム「この扉が、今開いているということは……何者かが中に侵入した可能性が高いということだ」
みゆ「確かに。開いたのはごく最近……おそらく数時間以内と推測されます」
ベアトリス「もしや、何者かがドワーフの国に害をなすため、禁忌の奥へ押し入ったのですわ! それを放置するなど、見過ごせませんわ!」
もっふる「ピィー!」
ボルグ「扉を開けた者を探す、ということか?」
グルム「ああ。危険なのは重々承知だが、何が起きたのか、可能な限り痕跡だけでも追いたいと思う。その上で王へ報告しようかと考えている。……神崎家の皆には急で申し訳ないが、護衛として同行を頼めるか?」
亮「もちろんです! 王様にも頼まれましたし、困っているなら放っておけませんからね! 任せてください!行きましょう!」
あんな「え、ちょっとパパ!また即答!」
みゆ「……想定内です。パパの特殊スキルが発動しました」
あんな「分かった!トラブルホイホイでしょ」
みゆ「正解です」
ボルグ「いつも賑やかでいいな」
グルム「ああ、こっちも楽しくなってくる」
亮「いやー、それほどでもないと思うけどな……」
もっふる「ピィー♪」
あんな「パパのスキル発動は心配だけど……気を引き締めて行きましょう」
ベアトリス「お任せくださいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
一行は武器や道具を握り直し、開いた扉の隙間へと足を踏み入れた。
亮「……あれ? ここ、外の坑道に比べてすごく綺麗だな?」
真っ先に隙間を潜り抜けた亮が、不思議そうに周囲を見回しながら声をあげた。
一行の目の前に続いていたのは、これまで通ってきたゴツゴツとした地下坑道とは明らかに異なる、不気味なほど整然とした空間だった。
左右の岩壁はまるで刃物で切り落としたかのように平滑に整えられ、足元には隙間なく石板が敷き詰められている。
ボルグ「……これは驚いた。採掘のために削られた坑道とは、根本的に造りの次元が違う」
みゆ「壁面の風化具合や石材の結晶構造から分析するに、建造されたのは数百年前……古代の技術です。ですが、構造強度にはまったく問題ありません。崩落の危険性はほぼゼロと言えます」
ただ鉱脈を掘り進めるために作られた道ではない。
何か巨大な構造物、あるいは重要な施設へと至るために、特別な意図をもって築かれた通路だ。
ノルク「この場所……古代の術師たちが、封印を護るためだけに建造した専用の回廊なのかもしれません」
あんな「こんなに立派な通路が地下の奥深くに隠されていたなんて……。でも、この先には一体何があるんだろう?」
みゆ「それに今まで誰も知らないとは不思議です」
グルム「そうだな。記録自体もないとなると……」
あんなが不安そうに腕を抱え込んだその時、先頭を歩いていたボルグが足元の異変に気づき、手を上げた。
ボルグ「……待て。全員、足を止めろ。……ここを見ろ」
地面の表面に、かすかに引きずられたような、真新しい擦れ痕が残されていた。
みゆ「表面の傷の状態から見て、ごく最近……間違いなく数時間以内についたものです。……誰かがここを通って奥へと進んだと思われます」
亮「やっぱり、俺たちの前に誰かが中に先に入ってるんだな」
あんな「何者か分からないから慎重にね。特にパパ」
亮「大丈夫だよー。任せておいてよー」
みゆ「不安しかありません」
もっふる「ピィー♪」
暗くどこまでも続く通路の先を見つめながら、亮の声が響き渡った。
こうして――
封印の先に広がる謎の回廊で、招かれざる侵入者の生々しい痕跡が浮かび上がる。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)の裏側で、
不穏な影が静かに蠢き始めていた。
絶対に迷いようがない真っ直ぐな一本道に潜む、あまりにも不気味すぎる静寂。
ノーテンキなパパの緊張感ゼロな会話を切り裂き、暗闇の奥から血塗られた殺気の群れが雪崩れ込む。
次回、第282話 え、パパが勇者!? 封印の先にある謎の静寂な通路!? その通路が一転する!?




