第277話 え、パパが勇者!? 勝手に地下へ行ったら怒られる!? その結果は!?
暗く狭い坑道を抜けた神崎家の一行は、視界が一気にひらけた大空間へと足を踏み入れた。
高く聳え立つ岩壁に囲まれたその広大な空間。
その奥。
薄暗い闇の向こう側に、何か巨大な建造物が静かに佇んでいた。
あんな「……何あれ。すごく大きい……」
亮「門……いや、扉か?」
近づいて確認すると、それは岩山そのものをくり抜いて作られたかのような、重厚極まりない古代ドワーフの『封印の扉』だった。
表面には見たこともない幾何学模様の意匠と、古びた文字がびっしりと刻み込まれている。
ズン……。
今までで最も強い重低音が足元を揺らした。
その振動と不気味な鼓動は、間違いなくこの巨大な扉の『向こう側』から伝わってきている。
みゆ「内部の構造と振動周期の分析を完了。この先は単なる迷子や探検の域を超えています。奥から伝わるエネルギーの規模は推測不能……危険度、判定不能です」
みゆが珍しく真剣な眼差しで、腕を組みながら静かに告げた。
ベアトリス「扉の表面に刻まれているのは、古代の封印結界のように見えますわ……! 何かを閉じ込めるために作られたものに違いありませんわ!」
あんな「こんなの、絶対にヤバいヤツじゃん……」
亮「そうなのか? ちょっと開けてみても……」
あんな「ちょっと待ったパパ!」
あんなの鋭い大声が空間に響き渡った。
みゆ「触れても開けれるとは思いませんが、何が起きるかは不明です」
亮「開けるなと言われると開けてみたくなるのが心情というものだぞ」
あんな「最悪、生き埋めになるかもしれないのだよ」
みゆ「否定できません。この巨大構造物が崩壊した場合、生存率は大幅に低下します」
亮「うっ……生きて帰れないのは困るな……」
あんな「でしょ!? これ以上勝手なことしたら、王様に怒られるレベルではないよ。自分たちの命もないからね! 一度戻って報告するの!」
亮「そ、そうだな……そうしよう。一回報告だな」
みゆ「妥当な判断です。現状の装備と情報量でこの扉に触れるのはリスクが高すぎます」
ベアトリス「仕方ありませんわ! 戻りますわ!」
皆が来た道を歩きだす。
だが亮だけ一人、名残惜しそうに『封印の扉』をじっと見つめたまま立ち尽くしていた。
亮「でもな……」
あんな「パパー」
あんなが振り返り、腕を組みながら冷ややかな視線で圧をかけてくる。
もっふる「ピィー!」
亮「はい……すみません。一回戻って報告します……」
あんな「分かればよろしい! ほら、遅れると置いてくよ!」
神崎家は余計な手を出すのをぐっと踏みとどまり、来た道を慎重に引き返して地上へと戻ることにした。
ドワーフ国の王城・謁見の間。
地上へ戻った神崎家は、すぐさまドワーフ王のもとへと向かい、地下での出来事を報告した。
王「なに……? 廃坑道の奥に、古代の『封印の扉』があっただと……!?」
報告を聞いた瞬間、ドワーフ王の重厚な顔つきが一変した。
みゆ「はい。扉の向こう側から、周期的な重低音と鼓動のような振動が確認されました。ドワーフ国全体を揺らしている異変の発生源は、あの扉の奥である可能性が極めて高いです」
亮「……あの、王様。勝手に立ち入り禁止の古い坑道に入っちゃって、すみませんでした」
亮が申し訳なさそうに頭を下げると、ドワーフ王はハッと我に返ったように亮を見た。
王「何を言っておる! 地下の異変調査を頼んだのはこちらだ! おかげで長年誰も気づかなかった異変の元凶を特定できたのだぞ!」
あんな「怒られないで済んだ……よかったぁ」
亮「あはは、怒られないなら良かった! それで、あの扉の奥には一体何があるんですか?」
王「うむ……古い伝承によれば、あの扉はドワーフの祖先が『決して開けてはならぬもの』として封印した場所。中に何が眠っているのかは、王である私にも定かではない」
みゆ「それほど重大な封印なのですね」
王「だが! 重大な手掛かりを得られたのは間違いなく神崎家のおかげだ!」
ドワーフ王はガハハと豪快に笑い飛ばすと、勢いよく立ち上がった。
王「よし! 危険な調査からの無事の生還と、大発見を祝って――宴会だーッ!」
亮「……え?」
王「おい者共! 宴の準備をしろ! 酒と肉をありったけ持ってこい!」
ドワーフ達「おおおおおーッ!!」
あんな「ええっ!? ちょっと、急すぎるでしょ!?」
みゆ「……予想通りの展開です。ドワーフの文化パターンにおいて、解決や進展の節目はすべて宴会になります」
ベアトリス「また宴会ですわー! ドワーフ様方のお酒は美味しいですから楽しみですわ!」
もっふる「ピィー♪」
あっという間に広間に長いテーブルが運び込まれ、山盛りの木樽と香ばしい肉料理が次々と並べられていく。
ドワーフA「亮殿! 素晴らしい調査だったぞー!」
ドワーフB「飲むぞーッ! 今夜は朝まで宴だー!」
亮「勝手に地下へ行って、厳しくお説教されるかと思ったら……また宴会になっちゃったな」
あんな「本当にね……まあ、パパが無茶して怪我しないで戻ってきたから良しとするけどさ」
亮「よーし、それじゃあ遠慮なくいただくとするか! おー!」
あんな「あーっ! パパ、調子に乗ってまた飲みすぎないでよ!? 明日動けなくなっても知らないんだからね!」
もっふる「ピィー♪」
地下深くの『封印の扉』と、その奥から響く不気味な鼓動の謎は残されたまま。
しかし、その手がかりを掴んだ夜、ドワーフ国の広間は再び温かな熱気と賑やかな歓声に包まれるのだった。
こうして――
勝手な調査の末に重大な謎に行き着かせた神崎家は、相変わらずの宴会騒ぎの中へと巻き込まれていくのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
騒がしい宴の裏で動き始めた、新たな謎へと近づいていくのだった。
――そして、
その空のさらに深く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの勇者たち、今日も楽しそうですね。
山を丸ごとくり抜いた雄大なドワーフ国を訪れても、変わらずマイペースなあの家族。
スローライフを宣言した矢先に地下都市で迷子になり、助けに向かえばドワーフたちの圧倒的な頼もしさにすっかり「観客」になってしまう……。
さらには魔物撃退の口実に乗っかって、誰よりもノリノリで大騒ぎし、酒樽を抱えて歌い出す始末。
まったく、あの勇者にかかれば、職人たちが誇る大鉱山も賑やかな宴会場へと早変わりしてしまうのですね。
本当に……予想を超えてくれますね。
けれど……彼らの歩む道には、いつも温かな光が寄り添っています。
娘たちの鋭い探究心と絆が、長年見過ごされてきた大切な真実を照らし出し、誰一人として気づかなかった未知の危険へとたどり着く。
使命感ではなく、純粋な気持ちで……ただ幸せを分かち合い歩む彼らの姿。
自分たちのペースを崩さず、どんな異変をも笑顔と賑やかさで受け止めていくその姿こそが、知らぬ間に世界の平和を導き、周りの心を解きほぐしていくのでしょう。
最強の力を持ちながら、最弱の称号を何よりも喜んで受け入れ、大事な場面ではしっかりと家族の手を取り合う。
その純粋な想いこそが、世界で最も強く、そして優しい魔法なのかもしれません。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
固く閉ざされた古代の扉の向こう側で、あの家族はまた一つ、奇跡を日常に変えてしまうのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと深層の闇を払う。
その微笑みは、静かでどこまでも優しかった。
【第三十二章「鉱山編〜散歩気分で迷い込んだパパ、ドワーフ国を揺るがす大騒動を引き起こす?〜」を終えて】
「スローライフ宣言」も束の間、山を丸ごとくり抜いた地下都市で迷子になり、大鉱山ではみゆの鑑定スイッチが大爆発!
宴会で大騒ぎしたと思えば、勝手に潜り込んだ禁断の廃坑道で古代の『封印の扉』を発見してしまいました。
ドワーフ国を揺らす不気味な鼓動の正体とは一体……?
亮「『封印の扉』かぁ……男のロマンが詰まってるよな! 読者のみなさんが★で応援してくれるたびに、俺の勇者ポイントがグングン溜まって扉を開けるパワーになりそうなんだ!」
あんな「ちょっとパパ! 勝手に開けようとしないでよ! みなさん、いつも応援ありがとうございます。パパのやらかしは止まりませんが、これからも神崎家と一緒に歩んでくれたら嬉しいです。ぜひブックマーク登録もよろしくお願いしますね」
みゆ「観測データによると、皆様からの★評価やブックマークは、パパの暴走フラグを未然に防ぐ『やらか行予防シールド』として極めて有効に機能します。データ維持のため、ぜひ評価をお願いします」
ベアトリス「ドワーフ様方のお酒もご飯もとっても美味しかったですわ! わたくしたち三姉妹とパパの活躍を、これからも見守ってくださると嬉しいですわ!」
もっふる「ピィー♪」




