第276話 え、パパが勇者!? 誰も入らない禁断の坑道で謎の重低音!? 地底から伝わる不気味な鼓動に踏み込む!?
ズン……。
足元から、再び重く低い振動が伝わってきた。
亮「……まただ」
みゆ「はい。回数が増えています」
今度の振動は、これまで以上に靴底を通してはっきりと体に響いていた。
足元から伝わる不気味な揺れに警戒しつつも、亮はふと背後を振り返る。
亮「……とりあえず、コウモリのほうはもう大丈夫だよな」
あんな「うん、大丈夫。コウモリは来てないみたい」
亮「助かった……」
コウモリの群れをなんとか振り切った神崎家は、古びた坑道の壁際で一度足を止めた。
亮「ちょっと休もう」
あんな「うん」
みゆ「賛成です」
ベアトリス「さすがに、あれだけの数は疲れますわ!」
亮「D級って聞いたから、もっと楽に倒せるかと思ったのに……」
みゆ「強さと厄介さは別です。個体の戦闘力が低くとも、集団による特殊な状態異常攻撃は十分に脅威となり得ます」
亮「それは今回、身をもって分かった……」
あんな「なぜかパパが一番ダメージを受けていたよね」
みゆ「パパが新スキル、ダメージホイホイを習得したと思われます」
亮「そんなスキル、存在してないから。それに、みゆもダメージ受けていたぞ」
みゆ「そのような事実はありません」
もっふる「ピィー♪」
亮「えーー」
坑道を亮の叫び声が木霊する。
あんな「まあまあみんな無事だったし、コウモリも私たちを追いかけてこなかったから良かったよね」
亮「そういえば、途中から一気に奥へ引き返していったよな」
みゆ「あそこがちょうどコウモリの縄張りだったと思われます」
あんな「こっちが勝手に縄張りに入ったという事?」
みゆ「そういう事です。知らないとはいえ、私たちが入った事で襲ってきたと考えられます」
ベアトリス「それは当然ですわ!」
亮「コウモリさんたち、ごめんな」
もっふる「ピィー♪」
もっふるが同意するように、亮の肩の上で翼を小さく羽ばたかせた。
その時。
ズン……。
かすかな振動が、足元の岩盤から伝わってきた。
息を呑み、全員がその場に黙り込む。
亮「……今の?」
みゆ「またです」
あんな「気になるよねこの振動。地震とも違うし」
みゆ「はい」
亮「振動というか鼓動というか……」
あんな「不気味な感じがするよ」
みゆ「現段階ではデータが少なすぎるため何とも言えません」
亮「さて……どうする?」
あんな「戻る?」
亮は、薄暗く不気味に続く坑道の奥を見つめた。
暗闇の向こうから、冷ややかな風が吹き抜けてくる。
ズン……。
亮「……やっぱり、あっちだよな」
みゆ「はい」
ベアトリス「進むしかありませんわ!わたくしもお供いたしますわ!」
あんな「無理はしないでね」
亮「よし。行ってみよう」
十分に休息を取った神崎家は再び歩みを進めた。
しばらく進むと、坑道の様子が明らかに変わってきた。
岩壁は荒れ、ところどころ崩れた岩石が転がっている。
頭上を支える木製の支柱もすっかり朽ち果てて古びていた。
みゆ「かなり年代物です。ドワーフの方々も、普段は入らない場所だと思われます」
あんな「こんなところまで続いてたんだ……本当に広いね、この地下世界」
亮「昔はここでも採掘してたのだよな」
ズン……。
またしても振動が伝わってきた。
今度は、さっきよりも一回り強く足元を揺らす。
亮「……やっぱり奥からだ」
みゆ「はい。振動の伝播経路から見て、間違いありません」
亮「これ……音なのか?」
みゆ「音として聞こえているような気もします。ですが、振動としても感じます」
ベアトリス「空気が揺れているようですわ…… 何とも不気味ですわ……」
ズン……。
今度は先ほどよりも弱い揺れが波打つ。
亮「強くなったり、弱くなったりしてるな」
みゆ「はい。周期的な強弱が観察されます」
あんな「何なんだろう……」
闇の残響に耳を澄ませながら、さらに慎重に奥へ進む。
ズン……。
規則正しく繰り返されるその振動は、まるで何かが静かに呼吸しているようだった。
亮「……生きてるみたいだな」
みゆ「……私も、そう感じます」
あんな「こんな地下深くにいる魔物って……」
みゆ「分かりません。既存のデータには該当する魔物は存在しません」
みゆが慎重に奥の状況を確認する。
みゆ「反応は、さらに奥です」
亮「じゃあ、ゆっくり行こう」
あんな「うん」
ベアトリス「警戒して進みますわ!」
息を潜めるようにして慎重に坑道を進んでいく。
その先。
暗く狭い坑道の向こう側に、わずかな開けた空間が見え始めていた。
あんな「……あそこ、広くない?」
亮「本当だ」
みゆ「坑道の先に、大きな空間があります」
さらに一歩、踏み出す。
ズン……。
今までで最も大きな振動が、足元から全身へと直撃するように伝わってきた。
あんな「何か嫌な予感がするよ……」
暗闇に包まれたその空間の先に、一体何が潜んでいるのか。
まだ、神崎家には見えていなかった。
こうして――
ドワーフ国の誰も足を踏み入れない禁断の坑道で、神崎家は不気味な鼓動の源へと刻一刻と迫っていくのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)の
暗闇に佇む大空間の向こうで、静かな異変が彼らを待ち受けていた。
地下深くで発見されたのは、決して触れてはならない古代の封印の扉。
次回、第277話 え、パパが勇者!? 勝手に地下へ行ったら怒られる!? その結果は!?




