第273話 え、パパが勇者!? 地震はいつものこと!? ドワーフ国に広がる異変の影!?
翌朝。
宿屋「岩窟亭」
亮「昨日は楽しかったー!」
あんな「ほんと楽しかったね。ドワーフの人たち、みんな豪快で賑やかだったし」
みゆ「いかにもドワーフの伝統文化という感じでした」
ベアトリス「お祭り騒ぎのようで、わたくしもとっても楽しかったですわ!」
あんな「でもパパ、あれだけ飲んで大騒ぎしたのに、全然平気なんだね。二日酔いとかないの?」
亮「まだまだいけるぞー! 朝ごはんが待ち遠しいくらいだ!」
あんな「……パパの身体って、実はドワーフ並みにタフなんじゃない?」
みゆ「確かに、昨夜パパが摂取したアルコール量を考えれば、翌朝これだけ元気なのは驚異的です」
ベアトリス「昨夜は樽ごと抱えて飲んでいらっしゃいましたわ!」
亮「ハハハ、健康第一だからな!」
あんな「説得力が全然ないよ……」
みゆ「健康第一の意味を調べて欲しいです」
もっふる「ピィー♪」
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
あんな「え……?」
足元から、地鳴りのような重低音が響き、部屋の床がゆっくりと揺れ始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
次の瞬間、はっきりと分かるほど揺れが大きくなる。
壁の棚がガタガタと派手な音を立て、机の上の食器がぶつかり合った。
あんな「キャッ!? なに!?」
みゆ「地震です! 震度4、いえ、徐々に増幅しています!」
ベアトリス「地震ですわ!」
亮「ちょ、ちょっと待て! 落ち着けみんな!」
いくらドワーフ国の都市が地震に強いと言っても心配になる。
あんな「みんな大丈夫?」
亮「大丈夫だけど、結構でかいぞ! テーブルの下に避難だ」
みゆ「揺れが複雑です! 立っているのも危険です」
ベアトリス「お覚悟を……! わたくしがお守りしますわ!」
神崎家が大騒ぎで構える中。
廊下のすぐ外から、のんびりとしたドワーフの話し声が聞こえてきた。
ドワーフ「おーおー、揺れてるなー」
亮「……揺れてるなってレベルじゃないと思うんだが?」
ドワーフ「今日はちょっとデカめだな。まあ、いつものやつだ」
亮「最近、地震は多いのは分かっているけど、ここまで平然としていられるものなのか」
ドワーフ「気にしていたら身がもたねえぞ。そのうち収まるだろ」
亮「そんな軽い感じなの!?」
亮の叫びも虚しく、数分ほど経つと揺れは徐々に小さくなり、やがて地下街に元の静けさが戻ってきた。
あんな「……お、終わった?」
みゆ「はい。揺れは完全に収まりました」
ベアトリス「みなさん、まったく慌てていらっしゃいませんでしたわ!」
亮「うーむ、地震に慣れすぎてるのかな……」
戸惑う神崎家の前を通ろうとした先ほどのドワーフに、亮は声をかけた。
亮「なあ、この国って地震が多いから平気なのか」
ドワーフ「ああ、昔からだからな」
亮「やっぱりそうなんだ」
ドワーフ「ああ。何しろこの国で暮らしてるからな。岩盤が鳴ったり揺れたりすること自体は珍しくねえんだ」
みゆ「では、今回の揺れも以前から発生しているものと同じなのですか?」
ドワーフ「……いや」
みゆの問いに、ドワーフは顎をさすりながら少し首をひねった。
ドワーフ「最近は、ちょっと違うんだよな」
亮「違う?」
ドワーフ「ああ。前から揺れることはあったが、最近になってから揺れる頻度が明らかに増えているな」
みゆ「頻度が増えている……」
ドワーフ「それだけじゃねえ。なんとなくだが、揺れ方自体も前とは違う気がするんだ。うまく説明できねえんだがな、そう感じてる」
亮「つまり、ただ地震が増えただけじゃないってことか」
ドワーフ「そういうことだ。まあ、深く考えても仕方ねえがな!」
ドワーフはガハハと笑いながら、いつものように力強い足取りで立ち去っていった。
あんな「……あんなに大きな地震だったのに、平然としてたね」
ベアトリス「わたくしたちのほうが、よほど大騒ぎしてしまっていましたわ!」
亮「まあ、俺たちは地震に慣れてないしな……」
黙り込んでいるみゆの顔を、亮は覗き込んだ。
みゆ「……気になります」
亮「さっきドワーフが言ってた違和感か?」
みゆ「はい。昨日の鉱山地下深くで検知した、あの断続的なエネルギー反応。それに加えて、今日の揺れと頻度の増加……」
あんな「地下深部の反応と、この地震に関係があるということだね」
ベアトリス「大変興味深いですわ!」
みゆ「別々に考えるより、同じ原因によって引き起こされていると仮定する方が、データとして自然です。ドワーフの方々が慣れから見過ごしているだけで……地下深くで、何かが確実に起きています」
亮「地下深くで何かが起きていて、それがこの国全体を揺らしてる……か」
みゆ「……ドワーフ王から受けた合同調査依頼、その核心に近づいているかもしれません」
亮「なるほどな。宴会で盛り上がって忘れかけてたが、俺たちはその調査のためにここへ来たんだもんな」
あんな「ほんとだよ、パパが一番盛り上がっていたのだよ」
亮「よし、ドワーフ王の期待に応えるためにも、本格的に地下深部を調べてみるとするか!」
みゆ「それと足元から伝わる『波形』が、先ほどから微小に変化し続けています」
あんな「え……それって……」
みゆ「はい。調査が必要です」
亮「そうだな。ドワーフの人たちにお世話になったことだし、放置するわけにはいかないな。ちょっと調べてみるみるか」
もっふる「ピィー♪」
昨日までは、ただの楽しい異世界観光と鉱山見学のはずだった。
だが地下深部から伝わってきた謎の鼓動のような反応、増え続ける異質な地震。
そしてドワーフたちが皮膚感覚で感じ取っていた違和感。
無関係に見えた点と点が、静かに、そして確実に一つの巨大な異変へと繋がり始めていた。
みゆは静かに視線を落とし、微振動を刻み続ける石畳へと手をかざす。
その瞳には、これから立ち向かう不穏な影への確信が静かに宿っていた。
こうして――
昨日までの呑気な宴会気分から一転、神崎家はドワーフ国の地下に眠る、不気味な異変の気配を感じ取り始めるのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)の
平穏な日常の裏で、静かな不穏が足元から忍び寄っていた。
王様との約束もどこへやら、開始早々に安定の迷子に……。
偶然発見したボロボロの謎の廃坑道を前に、少年の心を取り戻したパパの暴走探検が幕を開ける!?
次回、第274話 え、パパが勇者!? 地震の原因を探れ!? パパの暴走⁉ 勝手に地下調査開始!?




