第271話 え、パパが勇者!? 助けに向かったら完全放置!? ドワーフの戦闘力が凄すぎる!?
――ガァン! ガァン! ガァン!
鉱山全体に、けたたましい警報が響き渡った。
亮「なんだ!?」
あんな「何の騒ぎ!?」
ベアトリス「警報ですわ!」
みゆ「何かあったようです」
もっふる「ピィー!」
周囲で作業していたドワーフたちは手を止めたが、慌てる様子はない。
ドワーフA「魔物が出たみたいだぞ」
亮「魔物!?」
あんな「避難は!?」
ドワーフA「大丈夫だ。地上の連中が対応する」
亮「でも、魔物なんだろ? 退治しないと!」
ドワーフA「任せておけばいい」
ドワーフB「すぐに終わるさ」
亮「……」
そう言われても、神崎家としてはどうにも納得がいかない。
目の前で危機が起きているかもしれないのに、黙って見過ごすことなどできなかった。
みゆ「様子を見に地上へ行ってみましょう」
あんな「そうだね。何か手伝えることがあるかもしれないし」
ベアトリス「わたくしたちも行きますわ」
亮「よし! 助けに行くぞ!」
もっふる「ピィー!」
意気揚々と神崎家は急いで地上へ駆け上がった。
地上へ出た神崎家は、すぐさま構えを取った。
亮「どこだ?」
山奥から、大地を揺らす激しい地響きと地鳴りが猛烈な勢いで近づいてくる。
ドドドドドッ!
岩のようなロックベアーの群れが姿を現した。
ドワーフ戦士A「来たぞ!」
ドワーフ戦士B「ロックベアーだ!」
ドワーフ戦士C「任せておけ!」
亮「みんな、加勢するぞ――」
亮が前に出ようとした、その時だった。
ドワーフ戦士A「迎え撃て!」
亮たちの前で、ドワーフの戦士たちが一斉に動き出した。
斧を持つ者が正面から突進を受け止める。
槌を持つ者が横から豪快に叩き込む。
剣を持つ者が、仲間の隙を狙うロックベアーを切り伏せる。
ガキィン!
ドガンッ!
ズドォン!
激しい衝撃音とともに、ロックベアーの爪と斧が交錯する。
ドワーフ戦士A「こっちは俺に任せろ!」
迫り来るロックベアーが振るった丸太のような腕を、ドワーフは避ける素振りすら見せない。正面から大斧を横一文字にフルスイングした。
――ギャリリリッ!
凄まじい火花とともに、岩より硬いロックベアーの太い腕が、根元から丸ごと空へ吹き飛ばされた。
ロックベアー「ギャアアアッ!?」
ドワーフ戦士A「よし!次!」
あんな「……嘘でしょ、腕が一発で……」
さらに左右から同時に躍り出た二頭のロックベアーに対し、別のドワーフ戦士が巨大な角材のような大槌を背負って立ちはだかる。
左右から迫る巨大な爪を、左右の手でそれぞれ受け止め、なんと力任せに二頭まとめて押し戻した。
ドワーフ戦士B「ぬあああっ! 一度に二頭は重ぇな!」
ドワーフ戦士C「なら、二人でいくぞ!」
二人のドワーフ戦士が左右から挟み込む。
ドガァン!
ロックベアーの巨体が地面に崩れ落ちた。
亮「おお……。すごい連携だな」
手出しする隙を探す亮の目の前で、さらに三頭が一斉に襲いかかる。
ドワーフ戦士A「来い!まとめて面倒見てやる」
ドワーフ戦士B「後ろは任せろ!」
ドワーフ戦士C「おう!行くぞ!」
一人が正面で受け止め、二人が左右から畳みかける。
一切の迷いがない完璧な連携に、神崎家は見とれていた。
あんな「……強い。強すぎるよ、あのドワーフたち……」
みゆ「Bランクの魔物の群れを、あれほど簡単に力押しで無力化するとは予想以上の戦闘力です」
ベアトリス「しかも、前衛同士の連携に一切の迷いがありませんわ!」
亮「本当に助けはいらなかったみたいだな……」
ロックベアーが次々と倒されていく。
ドワーフ戦士A「まだいるぞ!」
ドワーフ戦士B「全部まとめて片付けるぞ!」
ドワーフ戦士C「おう!任せろ!」
ドワーフ戦士たちは一歩も退かない。
唸りを上げる大斧、疾風のごとく振り下ろされる大槌。
ドガンッ!
ズドンッ!
ガキィン!
群れで襲いかかったロックベアーは、一丸となったドワーフたちの前で次々と打ち倒されていった。
ついに最後の一頭が、大きく天を仰いで咆哮する。
ドワーフ戦士A「これで終わりだ!」
渾身の大斧が綺麗に振り抜かれた。
――ドォン!
最後のロックベアーが力尽きて倒れる。
ドワーフ戦士A「終わったぞ!」
ドワーフ戦士B「怪我人は?」
ドワーフ戦士C「いない!」
ドワーフ戦士D「なら戻るぞ!」
神崎家が加勢に入る余裕など一瞬すら与えられず、戦闘は圧倒的な連携のもとで幕を閉じた。
助けに行く気満々で武器を構えた体勢のまま固まっていた亮たちは、ゆっくりと武器を下ろした。
亮「……見事なまでに出番がなかったな」
あんな「そうだね」
みゆ「慌てて来なくても良かったです」
亮「まあ、怪我人の出なかったことだし良しとしよう」
みゆ「そうですね。怪我がないこと、それが一番です」
ベアトリス「わたくしも少しくらい出番が欲しかったですわ!」
亮「まあ次の機会だな……」
もっふる「ピィー♪」
急いで駆けつけたものの、見事なまでに完全な『ただの観客』になってしまい、神崎家は熱戦の余韻に置いてけぼりにされていた。
地下で作業していたドワーフたちが全く慌てていなかった理由が、ようやく分かった。
ドワーフたちは倒れたロックベアーを片付けながら、何やら慌ただしく動き始めていた。
ドワーフA「よーし、魔物退治も済んだ。今からが本番だー!」
ドワーフB「よっしゃー!」
ドワーフC「さっさと準備しろよー!」
あちこちからドワーフたちの威勢のいい叫び声が響き渡る。
亮「急に慌ただしくなったぞ……」
あんな「何?何が始まるの……」
こうして――
意気揚々と駆けつけたものの、見事なまでに何一つ出番がなかった神崎家の、少し拍子抜けな時間が過ぎていく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)の
まだ誰も知らないドワーフ流の『本番』へと突入していくのだった。
魔物を撃退した直後、なぜか事態は予期せぬ方向へ大爆走?
ノリに秒で乗っかり、完全に調子に乗りまくるパパを娘たちが猛冷ややかに見つめる!?
次回、第272話 え、パパが勇者!? 誰よりも大騒ぎで一番ノリノリ!? あきれる娘たちを置いて大爆走!?




