第270話 え、パパが勇者!? ドワーフの伝統をデータ分析!? みゆの鑑定スイッチが大爆発!?
みゆ「この鉱石、もう少し詳しく調べさせていただいてもよろしいですか?」
ドワーフ「もちろんだ! 好きなだけ見てくれ」
みゆは作業台の上に無造作に置かれていた、青みがかった鉱石をそっと手に取った。
一見すると、どこにでもあるゴツゴツとした岩肌。
だが、その内部を覗き込むと、かすかに蒼い光を帯びた部分が見え隠れしている。
みゆ「……」
あんな「どう? みゆ。何か分かった?」
みゆ「間違いなく、魔力を帯びています」
亮「おお、やっぱり魔力鉱石なのか?」
みゆ「はい。ですが……少し変です」
亮「変?」
みゆ「ただ魔力を含んでいるだけではありません。性質が通常のそれとは異なっています」
みゆが鉱石へ向けて、自身の魔力をごく微量だけ流し込んだ。
すると直後、鉱石の内部にまるで稲妻のような淡い光がすっと走った。
ベアトリス「光りましたわ!」
ドワーフ「おいおい、なんだ!?」
その異変に気づき、周囲で作業していたドワーフの職人たちがざわめきながら集まってくる。
ドワーフ「今のは一体何が起きたんだ!?」
みゆ「私の魔力を内部へ吸収しました」
ドワーフ「吸収……!?」
みゆ「はい。外部からの魔力を取り込み、内部に蓄積しているようです」
亮「魔力を電池みたいに貯められるってことか?」
みゆ「概念としては、その認識で間違いありません」
集まったドワーフたちが、信じられないといった様子でお互いの顔を見合わせる。
ドワーフA「そんな性質があったのか……俺たちはただの固い石だと思ってたぞ」
ドワーフB「加工して道具や武器のパーツに使っていただけだ。魔力を貯めるなんて聞いたこともねぇ」
みゆ「具体的には、どのように使っているのですか?」
ドワーフA「強度が高いからな、衝撃を和らげる補助パーツとして組み込んでいたんだ」
みゆ「なるほど。魔力吸収の特性が、意図せず衝撃緩衝として機能していたわけですね」
納得がいったように頷くと、みゆは作業台の端にあった別の鉱石へと視線を移し、それを手にとった。
みゆ「こちらの個体も、同じ場所から採れたものですか?」
ドワーフB「ああ、それも同じ坑道の同じ壁面から掘り出したやつだ」
みゆ「……ですが、データの反応が少し違います」
亮「え、また違うのか?」
みゆ「こちらの個体は、魔力の保持量が極めて少ないです」
さらに、すぐ隣にあった大きめの鉱石へと手を伸ばす。
みゆ「そしてこちらは、逆に保持量が過剰なほど多いです」
ドワーフA「同じ場所から採れた石なのにか!?」
みゆ「内部に含まれている超微量な微粒子成分の比率が、微妙に異なるのでしょう」
亮「なるほどなぁ。つまり同じ魔力鉱石に見えても、実はいろんな種類があるってことか」
みゆ「まだサンプル数が足りないため断定はできませんが、その可能性は極めて高いです」
ドワーフA「俺たちは何百年もここで鉱石を掘り続けてきたんだぞ……」
ドワーフB「それでも、そんな性質があるなんて誰も知らなかった……」
あんな「長年掘ってるドワーフの人たちでも知らないことがあるんだね」
ドワーフA「鉱石のことなら、見れば一通りお見通しだと思っていたんだがなぁ」
みゆ「どれほど優れた長年の経験や勘であっても、数値データ化しなければ見抜けない微細な性質が存在するということですね」
亮「これはもう、みゆにとっては宝の山だな!」
みゆ「はい」
みゆは迷いなく即答した。
あんな「あはは、やっぱり」
ベアトリス「目がキラキラと輝いていますわ!」
研究者としての探究心に火がついたみゆは、次々と周囲の鉱石へ手を伸ばしていく。
みゆ「こちらは……魔力の伝導パターンが少し違います」
亮「また新しいタイプか?」
みゆ「はい。波動の波形が一定ではありません」
ドワーフA「あぁ、それは一番奥にある、かなり古い採掘現場から出た鉱石だな」
みゆ「古い採掘現場?」
ドワーフA「ああ。今メインで掘っている場所より、ずっと昔に掘られて放置されていた旧坑道だ」
みゆ「……」
みゆは手に持った鉱石を一度じっと見つめると、ゆっくりと周囲の気配を探るように見回した。
みゆ「……少し待ってください」
亮「どうした、みゆ?」
みゆ「今、別の反応を感じ取りました」
あんな「それも新しい鉱石の反応?」
みゆ「分かりません。質感が異なります」
みゆは静かに瞼を閉じ、広域の魔力波長を丹念にトレースしていく。
みゆ「……」
あんな「どちらから感じるの?」
みゆ「……下です」
亮「下?」
みゆ「はい。足元の岩盤を越えた、かなり深い場所です」
ドワーフA「この下に……!? だが、このあたりの地下深くにそんな場所があるなんて話は聞いたことがないぞ」
みゆ「私にも、それが何であるかまでは解析できません」
亮「特別な鉱石の反応じゃないのか?」
みゆ「その可能性もありますが、非生物的な鉱物反応とは波長が異なります」
あんな「えっ……じゃあ、一体何なの?」
みゆ「まだ特定に至りません」
みゆはもう一度集中し、地下深層からの波長を深く掘り下げて探る。
みゆ「……」
その澄んだ表情が、わずかに緊張を帯びたものへと変化した。
亮「みゆ?」
みゆ「反応が……動いています」
ドワーフA「動くだと!?」
みゆ「正確には、波長そのものが脈打つように変化し、位置情報を変えています」
亮「それって……生き物か何かか?」
みゆ「地下深部から、断続的かつ確実に波長が伝わってきています」
ベアトリス「先ほどの鉱石の魔力とは、まったく異質なものですのね」
みゆ「はい」
広大な坑道の奥。
そして、その遥か下層。
誰一人として知らなかった未知の地下深部から、不気味で奇妙な反応が刻一刻と届いていた。
みゆ「……非常に興味深い反応です」
亮「みゆがそこまで言うなら、かなり怪しいな……」
ドワーフA「地下深くに、一体何があるってんだ……?」
誰もその問いに答えを出すことができない。
ただ、ひとつだけハッキリしていること。
それは、この歴史ある大鉱山には、当のドワーフたちですらあずかり知らぬ「何か」が、静かに蠢いているということだった。
――ガァン! ガァン! ガァン!
その直後、鉱山全体の岩壁を激しく揺らすような重厚な警報音が、突然大音量で響き渡った。
――ガァン! ガァン! ガァン!
一度ではない。
けたたましい警戒の鐘の音が、旧坑道を含む巨大な空間の隅々にまで幾重にも反響する。
作業をしていたドワーフたちの手が、一斉に止まった。
こうして――
未知の反応の謎を解き明かす隙もなく、大鉱山は一瞬にしてけたたましい緊張感に包まれていくのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)に
突然の鐘の音が予想外の展開になっていく。
大警報が響き渡り、意気揚々と助けに駆けつけた神崎家!
しかし、眼前に広がっていたのは、ロックベアの群れを力押しで粉砕するドワーフたちの超絶無双。
加勢する隙すら与えられず、完全放置で「ただの観客」と化した勇者パパの運命は?
次回、第271話 え、パパが勇者!? 助けに向かったら完全放置!? ドワーフの戦闘力が凄すぎる!?




