第269話 え、パパが勇者!? ドワーフ国の大鉱山へ! みゆの研究スイッチ発動!?
亮「いやぁ……地下都市、すごいよな」
串焼きを綺麗に平らげ、満足そうにお腹をさすりながら亮が言った。
あんな「はいはい、満足したのはいいけど、パパはもう絶対に迷子にならないでよ」
亮「大丈夫だよー」
みゆ「先ほども全く同じセリフを言っていました。信頼度はゼロに等しいです」
ベアトリス「串焼き、とっても美味しかったですわ!」
もっふる「ピィー!」
亮「鉱山も見ていくか?」
あんな「ドワーフの鉱山かぁ。本場のはちょっと見てみたいよね」
みゆ「建築構造、および地質データの収集という観点からも、大変興味があります」
亮「この先を行けばいけると言っていたな。よーし、今度は鉱山だー」
しばらく道なりに進んでいくと、岩山を力強くくり抜いたような、巨大な入口が突如として眼前に現れた。
亮「……これが?」
みゆ「鉱山への入口です」
亮「でかっ!」
思わず見上げて声を漏らしてしまう。
入口だけでも馬車が何台も並んで通れそうなほど大きく、その奥からは地鳴りのような低い音が規則的に響いていた。
ゴォン……。
ゴォン……。
あんな「何の音?足元から地面が少し揺れているみたい」
みゆ「採掘している音です。岩盤を砕く振動が空気と岩を伝って響いています」
亮「この奥で、今も大勢で掘ってるのか。迫力が違うな」
亮たちは吸い込まれるように、鉱山へ続く坑道へと足を踏み入れた。
中は想像していたよりも遥かに明るかった。
壁には一定の間隔で魔導の明かりが設置され、坑道の奥まで一直線に伸びている。
足元には鉱石を運ぶための専用レールまで綺麗に整備されていた。
亮「これ、本当にただの鉱山か? まるで地下の幹線道路だな」
みゆ「かなり整備されていますね。物流の効率化が完璧に計算されています」
ベアトリス「ただ土や岩を掘っているだけではありませんわ!」
あんな「街と同じように、ちゃんと道があるんだね……すごいや」
ドワーフ「おう、兄ちゃんたち、見学か?」
通りかかった立派な髭を蓄えたドワーフの作業員が、気さくに声をかけてきた。
亮「はい。すごい鉱山があると聞いたので、見せていただこうかと」
ドワーフ「そうか。まあ、素人が見て面白いものがあるかは分からんが、足元には気をつけろよ」
亮「ありがとうございます、気をつけます」
みゆ「いえ、すでに大変興味深いです。この大規模な坑道を維持する構造計算には計り知れない価値があります」
ドワーフ「おおーそうか! 頼もしいお嬢ちゃんだな。それならもっと奥へ行ってみな。さらに大きな坑道があるぞ」
みゆ「まだ大きいのがあるのですか?」
ドワーフ「見てみるか?」
みゆ「もちろんです。ぜひお願いします」
ドワーフの案内で、さらに奥へと進む。
しばらく暗がりと灯りの連続する道を歩いていくと、突如として視界が大きく開けた。
亮「……うわぁ」
そこに広がっていたのは、地上の概念を覆すような巨大な空間だった。
天井は遥かに高く、左右の岩壁は果てしなく続いている。
巨大な坑道が、まるで地底に造られたメインストリートのように、どこまでも伸びていた。
あんな「すご……何これ、山の中とは思えない……!」
みゆ「想像以上です。土木技術の観点から言っても完全な規格外です」
ベアトリス「これほどの規模の坑道を、ドワーフの方々の技術、素晴らしいですわ!」
ドワーフ「ガハハ! 俺たちの先祖が何百年もかけて、代々掘り続けてきたからな」
亮「何百年……気の遠くなるような歴史だな」
亮は改めて周囲を見回した。
広大な坑道の中では、無数のドワーフたちが活気あふれる声とともに作業に没頭している。
巨大なピックで岩壁を削る者。
掘り出した鉱石を頑丈な台車で運ぶ者。
採れた鉱石の手触りや音で質を選別する者。
そのすべてが、一切の無駄がない洗練された手つきで進められていた。
亮「本当にすごいな……みんな職人なんだ」
ドワーフ「ここで採れた鉱石が、俺たちドワーフ国全体の暮らしを支えているからな」
あんな「街にあったあのかわいい家たちの材料にもなってるの?」
ドワーフ「ああ。道具も武器も建物も、この山から採れる鉱石がなければ作れねぇ」
みゆ「鉱山がドワーフ国の生活そのものを支えているのです」
ドワーフ「そういうことだ。だから俺たちは誇りを持って掘ってる」
亮「だから街と鉱山が目と鼻の先で一体になってるのか。生活のすぐ隣にあるんだな」
ドワーフ「地上に出て遠くまで運ぶ必要がないからな。掘ってすぐに加工場へ回せる」
亮「なるほどなぁ……実に合理的だ」
そのとき、すぐ近くの岩壁から地響きと共に大きな音が響いた。
ゴォン!
あんな「きゃっ! わっ、びっくりした!」
ベアトリス「お、驚きましたわ! 岩が崩れたのかと……!」
もっふる「ピィッ!?」
削り取られた岩壁から、大きな鉱石の塊が豪快に崩れ落ちた。
作業していたドワーフたちが手際よく集まり、それをテキパキと運び出していく。
亮「これが掘り出されたばかりの鉱石かぁ」
みゆ「……パパ、普通の鉱石だけではなさそうです」
亮「え?」
みゆ「あの鉱石から、微かな魔力の波長を感じます」
ドワーフ「……! お前さん……あの鉱石の性質が目で見ずに分かるのか?」
みゆ「はい。波動データの分析が可能です」
一瞬、周囲で作業していたドワーフたちの動きがピタリと止まった。
亮「どうしたんだ?」
ドワーフ「この鉱山にはな、めったに採れない魔力を帯びた特別な鉱石もあるんだ。素人には見分けがつかん代物なんだがな」
亮「へえ……みゆは相変わらず観察力がすごいな」
みゆ「極めて興味深いデータです」
みゆの眼差しが、研究者特有の熱を帯びて鉱石へと向けられる。
亮「あ……みゆ、またスイッチが入ったな」
あんな「……パパ、みゆがこうなったら当分止まらないよ」
ベアトリス「王国でも魔力鉱石は貴重でしたわ!」
もっふる「ピィー♪」
みゆは一歩前へ出ると、ドワーフの職人にまっすぐ視線を向けた。
みゆ「この鉱石、もう少し詳しく調べてもいいですか?」
ドワーフ「がはは! 構わないぞ! おもしろい嬢ちゃんだな!」
みゆ「ありがとうございます。では、さっそく組成の特定から始めます」
巨大な坑道。
無数の鉱石。
そして、魔力を帯びた不思議な鉱石。
ドワーフたちの暮らしを支える大鉱山には、まだ神崎家の知らない未知の可能性がひっそりと眠っていた。
こうして――
ドワーフたちの誇る巨大坑道でみゆの研究心が大爆発し、作業員たちを呆然とさせる展開になりつつも。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は
鉱山の奥に眠る未知へと歩み始めるのだった。
熟練のドワーフ職人たちすら知らない、鉱石の隠された真実を次々と暴く次女の超分析。
長年の経験を超越する圧倒的な数値データに、何百年もの歴史を誇る職人たちが開いた口が塞がらない?
だが、解析を進めるみゆの探知が捉えたのは、未知の鉱石ではなく、地下深層から届く動く波長!?
その直後、鉱山全体を狂乱の渦へと突き落とす、けたたましい警報音が鳴り響く。
次回、第270話 え、パパが勇者!? ドワーフの伝統をデータ分析!? みゆの鑑定スイッチが大爆発!?




