第262話 え、パパが勇者!? ドワーフの鍛冶場を見学!? 娘たちの目が輝き始める!?
食堂の丸椅子に深く腰掛け、神崎家全員で放心状態になっていた。
先ほどまで隣のテーブルで豪快に料理を平らげていたドワーフが、入口から顔を出して手招きしている。
ドワーフ「おう、にいちゃんたち!行くぞ!」
ドワーフ「見学に来るのだろ!」
亮「ちょっと待って。お腹がいっぱいで動けないです」
あんな「ちょっと食べすぎた……苦しい…… 」
みゆ「腹十二分目といったところです」
ベアトリス「限界ですわ!動いたら何かが漏れ出てしまいそうですわ!」
もっふる「ピィー♪」
ドワーフ「なーんだ、あれくらいでしょうがねぇなー」
亮「5分待って、いや3分でいいから」
ドワーフ「ハハハ! この店を出て右に行った先にある鍛冶場だ。後から来いよ!」
亮「行きます」
あんな「絶対に行きます」
みゆ「後学の為、是非見学に伺います」
ベアトリス「その前に休憩ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
ドワーフ「おうよ! 待ってるからよ」
豪快に笑いながら出ていくドワーフを見送り、しばらくして神崎家は、重い腰を上げて食堂を後にした。
街の奥へ進んでいく。
やがて、ひと際大きな石造りの建物が見えてきた。
入口に近づいた瞬間。
むわっと熱気が押し寄せてくる。
亮「……暑い!」
あんな「わあ……すごい熱気……」
中から、大きな音が響いていた。
ドン! ドン! ドン!
ドワーフ「お!やっと来たか!」
あんな「鍛冶場、見せてもらえるのですよね?」
ドワーフ「おうよ!歓迎するぜ!」
みゆ「楽しみです」
ベアトリス「楽しみですわ!」
もっふる「ピィー♪」
神崎家が中へ入ると広大な工房の中では二十人ほどのドワーフたちが汗を流して働いていた。
そこには巨大な炉。
積み上げられた金属。
壁一面に並べられた工具。
そして、赤く輝く鉄を一心不乱に叩き続けるドワーフたち。
ドン!
ハンマーが叩きつけられるたび、綺麗な火花がパッと周囲に飛び散る。
あんな「すごい……!」
亮「これが……鍛冶場か。迫力が違うな 」
あんなは、目の前の光景から目が離せない様子だった。
ドン! ドン! ドン!
巨大なハンマーが振り下ろされる。
そのたびに、赤熱した金属から火花が飛び散る。
あんな「すごい……」
ドワーフ「どうだ!」
亮「すごいです!圧倒されますね! 」
ドワーフ「だろ!」
ドワーフは嬉しそうに笑う。
ドワーフB「おい、そこ持ってくれ!」
ドワーフC「任せろ!」
真っ赤になった金属が炉から取り出される。
ドワーフB「いくぞ!」
ドン! ドン! ドン!
あんな「……」
ベアトリス「あんなお姉さま。随分と楽しそうですわ」
あんな「うん!だって、こんなの初めて見るんだもん!」
ドワーフ「嬢ちゃん、鍛冶場を見るの初めてなのか?」
あんな「そうなんです。ちょっとドキドキしています」
ドワーフ「ほう。なら、こっちへ来な!」
ドワーフが壁際へ歩いていく。
そこには何本もの剣が並んでいた。
あんな「わあ……!」
ベアトリス「まあ……」
あんな「こんなにいっぱい!」
ドワーフ「全部、俺たちが魂込めて作った剣だ」
あんな「すごい……」
ベアトリス「一本一本、形も刃の厚みも違いますわ!」
ドワーフ「おうよ」
ドワーフが一本の剣を手に取る。
ドワーフ「こいつは軽さと扱いやすさを重視した剣だ」
あんな「軽いの?」
ドワーフ「持ってみるか?」
あんな「いいの?」
ベアトリス「わたくしも持ってみたいですわ!」
ドワーフ「おう、怪我すんじゃねえぞ」
あんなとベアトリスがそれぞれ剣を受け取る。
あんな「……軽い!それに見た目よりずっと手に馴染むよ! 」
ベアトリス「本当ですわ!重さを感じさせない素晴らしいバランスですわ!」
あんな「でしょ!」
ドワーフ「だが、軽いだけじゃねえ。こっちは真逆だ」
ドワーフが別の重量級の大剣を取り出す。
あんな「うわ……見るからに重そう……」
ドワーフ「持ってみな」
あんな「うん!」
あんなが持ち上げる。
あんな「……重い!」
ドワーフ「ははは!」
ベアトリス「わたくしも持ってみたいですわ!」
ベアトリスは自信満々に大剣を受け取った。
ベアトリス「この重量感、素晴らしい手応えですわ! 騎士たるもの、いかなる大剣であっても優雅に扱ってみせますわ!」
あんな「ベアトリス、ちょっと顔がマジになってるよ」
ベアトリス「ハァーッ! 見ていてくださいですわ!これぞ騎士の舞ですわ!」
亮「ちょっとベアトリス!? 狭い室内で振り回すなーーっ!?」
気合一発、ベアトリスがそのまま大剣を全力でぶん回した。
鋭い風切り音とともに、大剣の重みで身体が持っていかれる。
ぶんっ!!
ドワーフ「ぬおっ!? 避けろーっ! 嬢ちゃん本気で振り回してやがる!?」
あんな「きゃーっ! 壁の棚が切れる切れるーっ!」
みゆ「推定運動エネルギー過大。回避行動を取ってください」
もっふる「ピィーーーーッ♪」
慌てて身をかがめるドワーフたち。
豪快な一撃は大気と床を激しく削り、凄まじい勢いで壁の工具棚を豪快に吹っ飛ばした。
ガシャーン!!
けたたましい破壊音が響き渡り、大量のハンマーや工具が飛び散る。
ベアトリス「……剣の遠心力に少々振り回されてしまいましたわ!」
亮「『少々』じゃないから! 棚は粉々だから」
あんな「もう、ベアトリスはすぐ加減を忘れて暴走するんだから!」
みゆ「ベアトリスの剣技は、常に過剰気味の傾向があります」
ドワーフA「ひぇ〜……冷や汗が出たぞ。だが、あの華奢な腕であの大剣を力任せにぶん回すとは、恐ろしいパワーのお嬢ちゃんだ……」
ドワーフB「おう、恐れ入ったぞ。うちの職人でもあの勢いで振り回せる奴はそういねえぞ」
ベアトリス「お任せくださいですわ!騎士の力、お見せいたしますわ!」
あんな「褒めてないからね」
亮「本当すみません……うちのベアトリスが……」
頭を下げて謝る亮の姿に、ドワーフたちは「威勢がよくていいじゃねえか!」と笑い飛ばしてくれたものの、あんなとみゆはハァと息をついた。
豪快なドワーフ国での生活は、まだ始まったばかりである。
こうして――
見学早々、ベアトリスの剣の暴走によって鍛冶場に激震が走るのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
また騒がしく幕を開けるのだった。
ベアトリスの規格外な火力が激突し、鍛冶場の炉がまさかの爆発寸前。
危機一髪の中、みゆの精密すぎる分析が合わさった時、誰も見たことのない奇跡の光景が訪れる。
次回、第263話 え、パパが勇者!? ベアトリスの炎が鍛冶場を変える!? みゆの頭脳がドワーフを驚かせる!?




