第258話 え、パパが勇者!? 圧倒的スケールの地下要塞都市に感動!? 目の前に現れたドワーフ国!?
崩落した山道を無事に抜け出たその瞬間、視界が、一気に大きく開けた。
亮「……うわぁ……」
亮は、思わず足を止めて感嘆の声を漏らした。
目の前には、空を突くほど圧倒的な存在感を放つ巨大な山脈がそびえ立っている。
そして、その壮大な山肌の至るところに、重厚な石造りの建築群が、まるで自然の造形の一部であるかのように精密に刻み込まれていた。
岩壁を大胆に掘り抜いて造られた巨大な城門状の入口。
山の内部深奥へと続いていく、果てしない暗闇を孕んだ幾つもの巨大な空洞。
さらにその周囲には、幾重にも網の目のように交差し重なり合う石組みの通路や幾何学的な建造物。
まるで、山そのものが、ひとつの巨大な要塞都市としてそびえ立っていた。
あんな「……すごーい。こんなの見たことない」
ベアトリス「これが……誇り高き職人の国なのですわ!」
みゆ「……ドワーフ王国です」
亮「……なぁ、これ、マジで全部山の中にあるのか?」
みゆ「はい。地上に露出しているこの広大な景観すら、都市全体のほんの一部に過ぎないと思われます」
亮「一部……?」
亮は目の前に広がる圧倒的な景色を見渡した。
地球の建築技術や観光地でも決してお目にかかれない、ファンタジーそのものの壮麗な光景。
巨大な山肌をダイナミックに掘り抜き、その内部を丸ごと巨大な都市として機能させているのだ。
亮「……本当にすごいな」
あんな「うん……スケールが違いすぎるよ」
誰もが、すぐには次の言葉を続けられなかった。
ただただ眼前にそびえ立つ、異世界の叡智と技術が凝縮された構造物を見上げていた。
亮「……こんな街、生まれて初めて見たよ」
あんな「山の中にこんな大きな街があるなんて、ドワーフの人たちって本当に器用なんだね」
みゆ「正確には、自然の山体構造と地盤強度を極限まで計算・利用して都市を建造しています」
ベアトリス「これほど途方もない事業を完成させるとは……さすがですわ」
亮「地下都市って聞いてたから暗い洞窟を想像してたけど……」
あんな「想像の何百倍も大きくてかっこいいね!」
みゆ「はい。この地下奥深くには、地上からは決して窺い知ることのできない多層階の巨大立体空間が広がっているはずです」
亮「これ……昔の人たち、どうやって掘って作ったんだ……?」
ベアトリス「ドワーフ族特有の魔法技術と、古代から伝わる鍛冶の知識の結晶なのですわ!」
亮「そりゃそうかぁ。ドワーフだもんな」
亮は、感心しきった様子でもう一度街全体を見渡した。
亮「……ん?」
はるか上方の険しい岩壁の上。
そこに黒く小さな影が、素早く動いたように見えたのだ。
亮「……」
亮は目を凝らしてじっと見つめる。
だが、そこには風に吹かれる荒々しい岩肌が広がっているばかりで、何も見えない。
亮「うーん、気のせいか……?」
あんな「どうしたの、パパ?」
亮「いや、なんでもない。ちょっと光の加減かなって」
みゆ「……」
みゆも鋭い視線で亮が見ていた岩壁へと視線を送る。
しかし、そこには静まり返った岩壁があるだけだった。
神崎家は、ゆっくりとドワーフ国へと続く石畳の街道を進み始めた。
近づけば近づくほど増していく、巨大都市の圧倒的な迫力。
山肌をくり抜いて作られた無数の窓やバルコニー。
どこを見渡しても、新鮮な驚きに満ち溢れていた。
亮「……本当に、山そのものがひとつの大きな街なんだなぁ」
あんな「地下にも、もっとお店とかお家があるんだよね? 探検してみたいな!」
ベアトリス「一体どれほどの規模と歴史が眠っているのでしょう。胸が高鳴りますわ!」
コト……。
風の音に混じって、背後の岩陰からごく小さな音が聞こえた。
亮「……?」
亮が急いで振り返る。
だが、そこには先ほど通り過ぎた頑丈な岩壁があるだけだった。
亮「ねえ、今何か『コト』って音しなかった?」
あんな「え? 全然聞こえなかったけど? パパの耳の錯覚じゃない?」
亮「そうかなぁ……」
みゆは無言で周囲の空間に気を配り、ぐるりと見渡した。
しかし、怪しい反応や魔力の揺らぎは検知されない。
みゆ「……」
すると突然。
微弱な揺れ。
足元が、ほんのわずかにカタカタと震えた。
亮「……うわっ、またか!?」
あんな「えっ、また地震!?」
みゆ「……ごく小規模な余震ですね」
揺れはほんの二、三秒で何事もなかったかのように収まった。
揺れが完全に収まり、亮は胸を撫でおろす。
亮「……今の、さっきの地震の余震だよな?」
みゆ「はい。震度としては極めて軽微です。都市構造への影響はありません」
あんな「ドワーフ国の人たちにとっては、これくらいの揺れは日常茶飯事なのかな?」
ベアトリス「山を削って暮らしているのですもの、地揺れ対策は万全のはずですわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮は、改めて目の前に大きく聳え立つ要塞都市の威容を見上げた。
巨大な山を掘り抜いて造られた奇跡のような街。
その重厚な門の奥には、地上からは想像もつかない巨大な地下空間と、ドワーフたちが待っているはずだ。
期待に胸を膨らませ、神崎家はドワーフ国の巨大な城門に向かって足を踏み出した。
しかし、神崎家の誰もまだ気づいていなかった。
崩落を切り抜けてやってきた異国の訪問者を、物陰からじっと見つめる謎の視線が存在していたことを。
そして、この山を掘り抜いた巨大な地下王国の奥深くで、神崎家を巻き込む新たな大騒動と物語が、静かにその幕を開けようとしていることを。
――そして、その空のさらに頂。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、どこまでも私たちの想像の枠に収まりきらないのですね。
険しい山道の崩落、そして高所にすくむ勇者の足取り。
けれど、恐れに震える父の背中を、娘たちが緻密な分析と揺るぎない絆でごく自然に支えていく。
そんなあの勇者の頼りなさすらも笑い合い、手を携えて前へ進む家族の温もりは、険しい災厄の道すらも愛おしい思い出へと変えてしまうのですね。
目の前に広がった、山を丸ごと削り出した誇り高き要塞都市。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
大地の奥深くに眠る波乱の予感さえも、あの家族ならきっと賑やかな笑顔で包み込んでしまうのでしょうね。
光が揺れ、風がそっと険しい山肌を通り抜ける。
その微笑みは、山々に抱かれた地下都市を優しく包み込むように深かった。
こうして――
絶体絶命の山崩れを乗り越えた神崎家は、ついに目的地のドワーフ国へと到着するのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
未知なる地下都市での新たな波乱へと続いていくのだった。
第三十章「山越編〜フラグ回収で大揺れの険しい山道⁉岩盤砕く超絶連携⁉〜」を終えて
ポポちゃんを無事に送り届けた神崎家が次に挑んだのは、ドワーフ王国へ続く険しい山道。
亮の立てたフラグ通りの大揺れと道路崩落、さらには高所恐怖症によるフリーズという最大の(?)危機を、娘たちの超絶的な連携と緻密な分析力で見事に突破!
命からがら辿り着いた先には、圧倒的スケールを誇る巨大な地下要塞都市が姿を現すのでした。
亮「いやー、一時はどうなるかと思ったけど無事に着いてよかった! 実は高いところは平気なんだ。高くて狭いところがダメなんだよねー」
あんな「そうだったの。道が広かったら大丈夫だったということ?」
みゆ「限局性恐怖症の可能性があります」
あんな「読者の皆様、いつもあたたかい応援やブックマークを本当にありがとうございます」
ベアトリス「パパの恐怖症も皆様の応援があれば乗り越えられますわ!地下要塞都市での冒険も楽しみですわ! 」
もっふる「ピィー♪」




