第255話 え、パパが勇者!? 街道が崩落で通行不能!? パパの提案即却下!?
街道を進む神崎家。
ドワーフ国を目指す旅は順調に続いていた、はずだった。
亮「……ん?」
先頭を歩いていた亮が、ふと足を止めた。
あんな「どうしたの、パパ?」
亮「道が……」
亮の視線の先。
街道が途中で無残に途切れていた。
大きな岩がいくつも転がり、崩れた大量の土砂が道を完全に塞いでいる。
あんな「うわぁ……派手に崩れてるね」
みゆ「地震による本格的な土砂崩落ですね」
亮「ここ、通れないな」
みゆ「はい。このまま直進するのは物理的に極めて困難だと思います」
亮は腕を組み、崩れた街道を神妙な顔で見つめた。
亮「……」
あんな「どうする?」
亮「どうするって言われてもなぁ」
亮は参ったように頭をかいた。
ドワーフ国へ向かうには、この街道をまっすぐ進む予定だった。
しかし目の前の道は、完全に塞がっている。
亮「これは……迂回するしかないな」
あんな「だよね」
みゆ「別の道を探しましょう」
亮「よし!」
もっふる「ピィー♪」
神崎家は一旦足を止めた。
ドワーフ国への旅はどうやら、そう簡単には進ませてもらえないようだった。
亮「ここだ! この斜面を登ればショートカットできるぞ! ほら、向こう側まで一直線だ!」
亮が街道脇の斜面を自信満々に指差した。
あんな「パパ、それただの崖だから!」
みゆ「パパ」
亮「ん?」
みゆ「角度六十五度。ロッククライミングは非推奨です」
亮「……」
亮は、もう一度じっくりとそこを見た。
確かに道ではない。
どころか、足を滑らせたら真っ逆さまのただの急斜面だった。
亮「……そうかな。なんとかなりそうだけど…」
ベアトリス「頑張って登りますわ!」
あんな「そこは頑張らなくてもいいよ」
ベアトリス「はいですわ!」
あんな「パパが変なこと言うから」
亮「いや。ちょっとしたアイデアの提案だよ」
みゆ「提案としても、滑落の危険性が高すぎます」
亮「ですよねー」
もっふる「ピィー♪」
笑い声が山々に響いた。
みゆが鑑定スキルを発動すると、地面に沿って淡い光がすっと走り、隠れていた地形の情報が一瞬で読み取られていく。
みゆ「少し戻ったところに、山側へ続く別の道があります」
亮「おっ、本当か!?」
みゆ「はい。そちらから迂回して進むことが可能です」
亮「じゃあ、そこから行こう!」
あんな「さすが、みゆだよね」
亮「……その言い方、なんか引っかかるぞ」
あんなは太陽のような笑顔で手を振ると、すぐさま話題を切り替えた。
あんな「気のせい気のせい! それよりパパ、見て! あそこに綺麗な花が咲いてるよ」
亮「え、あ、本当だ……じゃなくて!あんな、話を逸らしただろ!」
もっふる「ピィー♪」
崩れた街道を避けるため、神崎家は少しだけ来た道を戻り、山の中へと伸びる迂回路へと足を踏み入れた。
亮「しかし、地震で道がこんなになっちゃうんだな」
みゆ「山に近づくほど地盤の揺れが直撃し、影響も大きくなる可能性があります」
亮「それは困るな……」
あんな「でも、歩いて行ける道があるなら大丈夫でしょ」
ベアトリス「大丈夫ですわ!」
亮「そうだな!」
山間の険しい迂回路を進んでいく神崎家。
亮「お、こっちの道なら足元も悪くないし、ちゃんと通れそうだな」
ベアトリス「そうですわ! 空気も澄んでいて気持ちいいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「もっふる、相変わらず元気だね」
もっふる「ピィー♪」
みゆ「……待ってください」
みゆがふっと足を止めた。
亮「どうした、みゆ?」
みゆ「この先です」
みゆが指差す前方、細い迂回路の脇に、大きな岩がいくつも転がっていた。
さらにその奥には、根元からへし折れて倒れた大木。
地面にも、ところどころ痛々しい亀裂が走っている。
ベアトリス「ここも地震の影響でしょうか……?」
みゆ「はい。先ほどの本道の崩落地点より、むしろ被害が広範囲に及んでいます」
亮「……思ったよりひどいな」
あんな「木まで倒れてるなんて……」
もっふる「……ピィー」
ベアトリス「この先も、十分注意した方がよさそうですわ!」
亮「そうだな」
亮は前方を見つめた。
山に囲まれ、まだドワーフ国の姿は見えない。
けれど進むほどに、地震の生々しい痕跡が増えている。
亮「ドワーフ国、本当に大丈夫なのかな……」
その問いに、誰もすぐには答えられなかった。
神崎家は少しだけ警戒を強めながら、狭まる山道をさらに奥へと進んでいった。
亮「……迂回路とはいえ、道がどんどん狭くなってないか?」
あんな「仕方ないよ、本道が使えないんだから。パパ、弱音吐かないの!」
亮「いや、弱音っていうか……どこまで続いてるのかなって」
みゆ「地形を見る限り、このまま山嶺に沿って迂回路を進むことになります」
ベアトリス「ですが、こうして足を進められているだけでも良かったですわ!」
亮「まあ、そうだな」
亮は自分に言い聞かせるように頷いた。
その横を、もっふるがてくてくと歩いていく。
もっふる「ピィー♪」
亮「お、もっふるは相変わらず元気そうだな!」
あんな「もっふるは最初からずっと元気だよ」
亮「確かにな」
神崎家は、山の中の迂回路をそのまま進み続けた。
山道は少しずつ傾斜を増し、さらに山の奥深くへと。
その先に待ち受ける、いっそう険しい山道と新たな試練へ向かって――。
こうして――
本道を諦めて険しい迂回路を選んだ神崎家は、未知の山奥へ深く踏み込んでいった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
険しい山道へと挑んでいくのだった。
切り立った崖の迂回路で、パパの不用意なフラグがまさかの大爆発。
豪快な大地震で落石と崩落が同時勃発し、前後の逃げ場が完全に消滅……。
頼れる娘たちが岩盤を砕き落石を跳ね返すも、ついに足場ごと谷底へ崩れ落ちる絶体絶命の危機!?
次回、第256話 え、パパが勇者!? 頼れる娘たちが岩盤粉砕!? へっぴり腰のパパを全力ガード!?




