第254話 え、パパが勇者!? 遠く離れた王都からの信頼と娘たちの容赦ないデータ分析!?
王都。
朝の清々しい光が差し込む会議室には、すでにこの国の重鎮たちが勢揃いしていた。
第一皇女レオニアをはじめ、騎士団長のライオネル。
魔術師団長のマルティナ、記録院院長のコンラート。
王都騎士団長のアルベルト、ギルドマスターのガリオスら重鎮たちが顔を揃えていた。
ベーゼの件、王都近郊の森の異常、聖火山フェルナードの動向。
表面上の大きな進展はないものの、不気味な静けさの中で粛々と報告が交わされた。
表面上の大きな進展はない。
それでも、根本的な問題が消え去ったわけではない。
今はただ、それぞれの持ち場で警戒を行うしかなかった。
手元の資料を一度閉じたレオニアは、厳粛な空気の中で静かに続ける。
レオニア「では、次の報告へ移りましょう」
コンラートが手元の資料に目をやった。
コンラート「ドワーフ国についての報告になります」
レオニア「ドワーフ国?」
コンラート「はい。ここ数日、ドワーフ国およびその周辺地域から、地震に関する報告が複数舞い込んできております」
レオニア「複数……単発の地震ではないのですね」
コンラート「はい。一度きりではありません。中には局所的に規模の大きな揺れも確認されているようです」
マルティナ「被害の状況は掴めていますか?」
コンラート「街道や山間部の一部で崩落が発生しているとの報告があります。ただ、ドワーフ国は山中深くにあるため、向こうの詳しい状況までは確認できておりません」
レオニア「では我が国の状況は? 領内への被害や、魔物の流出などの兆候はありませんか?」
コンラート「はい。幸いにも我が国領内では軽微な揺れにとどまっており、直接の被害や魔物の動きは確認されておりません」
レオニア「……分かりました。国交がないとはいえ、隣接する山脈の異変を放置するわけにはいきません。引き続きドワーフ国の情報収集を徹底し、国境付近の警戒を強めてください」
ライオネル「はっ、ただちに哨戒班を増強いたします」
会議室に、再び重苦しい静けさが広がった。
地震そのものは、この広大な世界において決して珍しい現象ではない。
だが、短期間に何度も続いていること。
レオニア「……少し、胸騒ぎがしますね。嫌な予感がします」
マルティナ「ええ、同感です」
コンラート「引き続き、全力を挙げて情報を集めます」
レオニア「ええ、お願いします」
レオニアは、もう一度資料へ目を向けた。
そのときだった。
ふと、報告書から別の存在が彼女の頭をよぎった。
レオニア「……そういえば」
レオニアが、ふっと顔を上げた。
レオニア「神崎家が向かったのは……どこでしたか?」
ライオネル「はい。獣人国でございます」
レオニア「そうでしたね」
レオニアは安堵の表情を見せた。
ドワーフ国の地震という不穏な報告を聞き、無意識にあの家族のことを思い出したのだ。
獣人国へ向けて旅立った神崎家。
あれから、王都には特に連絡も届いていない。
レオニア「何か報告は届いていますか?」
ライオネル「今のところ、何ひとつありませんな」
レオニア「何も?」
ライオネル「はい、便りがないのは無事な証拠かと」
レオニアは少し思案する。
神崎家が獣人国へ向かってから、かれこれ数か月が経っている。
どれだけ強力な力を持っていようと、親しい者が遠い異国で音沙汰なしというのは、少しばかり気がかりだった。
レオニア「そうですか……」
会議室に、どこか微笑ましくも静かな時間が流れる。
レオニア「獣人国側からも、何か公式な報告はありますか?」
コンラート「現在のところ、こちらには届いておりません」
ライオネル「ハハハ! レオニア様、神崎家なら何の心配もいりませんよ。あの亮さんと娘さんたちです、どこへ行っても大丈夫です!」
レオニア「そう……ですね」
マルティナ「どうせ今頃も、いつものように賑やかにやっていますよ」
ガリオス「まったくですな。神崎家ですからね。むしろ巻き込まれた周囲の方が大変でしょうな」
重苦しかった会議室の空気が一瞬で和み、レオニアも思わず笑みをこぼした。
レオニア「分かりました。神崎家から何か連絡が入り次第、すぐに報告してください」
ライオネル「はっ、承知いたしました!」
レオニア「ドワーフ国の地震の件も、引き続き注視して情報を集めましょう」
コンラート「はい」
マルティナ「承知いたしました」
レオニアは会議室にいる全員の顔を見渡した。
ベーゼの件。
王都近郊の森の異常。
聖火山フェルナード。
そして、ドワーフ国で巻き起こる連続地震。
何やら今までにない大波が、この世界に起ころうとしているのではないか。
そんな予感がレオニアの胸をかすめていた。
その頃。
王都での心配をよそに、遠く離れた山沿いの街道では――。
亮「ハックション! ……なんか誰かに噂されてる気がするなぁ」
あんな「……ねぇパパ、また何かしたの?」
亮「えっ? 俺? 何もしてないよ! ずっとみんなと一緒に歩いてただけじゃないか」
みゆ「過去のデータから照らし合わせても、パパが無自覚のまま影響を及ぼしている可能性は八十パーセントを超えています」
ベアトリス「わたくしが解決して見せますわ!」
亮「本当に何もしてなよー」
もっふる「ピィー♪」
神崎家が、相変わらずのマイペースさでドワーフ国へ向かって歩いていた。
こうして――
王都で不穏な兆候が議論される中、当の神崎家は呑気に未知の国を目指していた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
嵐の予感を吹き飛ばすのだった。
ドワーフ国へ続く街道がまさかの完全崩落で通行不能。
ドヤ顔で滑落必至の崖を指差す頼りなさすぎるパパの提案は、娘のクールなデータ分析で即却下。
次々と現れる地震の痕跡に嫌な予感が漂う中、一家はさらに険しい山奥の迂回路へ踏み込んでいく……。
次回、第255話 え、パパが勇者!? 街道が崩落で通行不能!? パパの提案即却下!?




