第250話 え、パパが勇者!? ポポちゃんの笑顔を守るため獣人国に永住決定!?
獣人国にやってきてから、すでに三ヶ月ほどの月日が流れていた。
すっかりこの国での暮らしにも馴染み、神崎家は族長ザルガードと温かいお茶を囲みながら穏やかな時間を過ごしていた。
亮「これからどうするかなー」
獅子人族長ザルガード「どうする、とは?」
亮「俺たち、もう三ヶ月もここに滞在させてもらってるだろ? そろそろ邪魔になってないかなって」
族長たちが顔を見合わせ、豪快に笑った。
あんな「王都に戻ることもできるけど……ポポちゃんは……」
亮「そうなんだよな」
亮は、少し離れた広場でルナやドナと楽しそうに遊んでいるポポへ温かい眼差しを向けた。
この三ヶ月でポポは獣人語をすっかり覚え、ここの生活にも慣れてきた。
ポポ「ルナ、待ってー!」
ルナ「ポポ、こっち!」
ドナ「早く早く!」
三人の弾んだ笑い声が、風に乗って聞こえてくる。
亮「ポポにとって、ここは本来の故郷に近い場所なんだよな。この三ヶ月で言葉も覚えて、すっかりみんなと打ち解けてるし」
みゆ「はい。精神的な安定と環境順応の観点からも、非常に望ましい状態が維持されています」
亮「だったら……もう少し、ここにいた方がいいんじゃないかな」
あんな「私も大賛成! ご飯も美味しいしね」
みゆ「私も異論ありません」
ベアトリス「わたくしもポポちゃんたちとのお勉強がとっても楽しいですわ!」
もっふる「ピィ〜♪」
ザルガード「ハハハ! 我々としても大歓迎だ。好きなだけいてくれて構わんぞ」
亮「よし、じゃあ決まりだな!」
神崎家は、引き続き獣人国に滞在することになった。
そのとき。
グラッ……。
亮「……ん?」
足元の床が、かすかに揺れた。
あんな「え?」
みゆ「……!」
ベアトリス「まあ……!」
グラグラグラッ!
建物全体がミシッと音を立てて大きく揺れ、テーブルの上の食器がカタカタと音を立てる。
亮「また地震か」
みゆ「震度三程度と推定されます。建物構造への影響は限定的であり、大きな被害はありません」
亮「……ふぅ。ここへ来てから、地震が結構あるよな」
あんな「うん、……最近、本当に多いよね」
みゆ「はい。この三ヶ月間のデータでも、発生頻度が明らかに上昇傾向にあります」
もっふる「ピィ……」
胸を撫で下ろしながら亮が外を見やると、広場にいる獣人たちは特に取り乱す様子もなく、平然と作業を続けていた。
亮「……みんな、すごく落ち着いてるな」
ザルガード「まあな。この程度なら、いつものことだ」
亮「いつものこと……って言っても、やっぱりちょっと回数が多すぎないか?」
族長たちが静かに顔を見合わせる。
ザルガード「ここ最近、地震が増えていてな」
亮「やっぱり、前はこんなに揺れなかったんだな」
ザルガード「ああ」
虎人族長ヴァルド「以前は、これほど頻繁に揺れることはなかったのだがな」
熊人族長グラウス「ここ最近は、数日に一度は地震があるな」
鳥人族長アルフェン「我々も少し気になっているところなのだ」
あんな「そんなに頻繁に? 大丈夫なんですか?」
ザルガード「まあ、今のところこの集落に大きな被害はない。だが……獣人国だけではないらしい」
みゆ「他の国や地域でも、同様の地震が観測されているということですか?」
ザルガード「ああ。特に――」
亮「特に?」
ザルガード「ドワーフ国だ」
みゆ「ドワーフ国……隣国ですね」
ザルガード「向こうでは、こちらよりも遥かに深刻な状態になっているらしい」
亮「地震が、もっと酷いってことか?」
ザルガード「そうだ」
和やかだった部屋の中に、どこか冷やりとした静かな空気が流れる。
亮「……俺たちもここで何度も揺れを体験してきたけど、向こうはそれ以上なのか」
みゆ「地殻変動の範囲が広大すぎますね。広域的な異常事態と考えられます」
何度も肌で感じてきた揺れだけに、神崎家の表情も引き締まったものに変わっていく。
あんな「ドワーフ国では、具体的にどんな状態なんですか?」
ザルガード「詳しいことまでは分からない」
ヴァルド「ただ、地震の回数も揺れの強さも、こちらとは比べものにならないそうだ」
グラウス「崩落事故を防ぐため、鉱山の一部が閉鎖されたとも聞いている」
亮「そんなに酷いのか……」
みゆ「ここで私たちが何度も体験している揺れと、ドワーフ国での深刻化……単なる偶然とは言い切れないかもしれません」
あんな「何か、地下で恐ろしいことが起きているのでしょうか……?」
み
ゆ「現時点のデータのみでは特定できません」
亮「でも、何度も揺れてるのを見てると、ちょっと心配だな……」
族長たちも重い面持ちで頷く。
ふと外へ目をやると、ポポたちの楽しそうな笑い声が風に乗って聞こえてきた。
亮はその無邪気な声に優しい眼差しを向ける。
亮「……せっかく今、三ヶ月間、みんなでゆっくり穏やかに過ごせてたんだけどな」
あんな「大丈夫だよパパ! まだ何かが起きたって決まったわけじゃないんだから」
みゆ「はい。過度な杞憂は思考の効率を低下させます」
亮「そうだな。何度も揺れてるのは気になるけど、ドワーフ国の方も大したことなければいいんだけど……」
ザルガード「ああ。詳しい状況は分からんが、向こうの連中なら頑丈だからな。無事を祈るばかりだ」
神崎家は、静かに族長たちの話に耳を傾けていた。
三ヶ月間、何度も体験してきた不気味な揺れ。
そこに静かに忍び寄り始めている、大きな異変の影。
そしてその異変は、ドワーフ国ではすでに無視できない深刻な問題となりつつあった。
亮「……でもやっぱり、ちょっと気になるな」
楽しそうな子供たちの歓声の裏で、またしても足元から伝わってきたかすかな振動。
誰もまだ知らない。
自分たちが何度も感じてきたこの静かな地鳴りが、やがて世界を揺るがす大きな出来事の始まりであることを。
こうして――
三ヶ月の間に何度も揺れを体験しつつも、どこか不穏な地鳴りが余韻を残した一日。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)に
少しずつ変化の兆しが訪れるのでした。
不穏な地鳴りの真相を突き止めるため、愛するポポに涙の留守番を託し、未知なるドワーフ国へ旅立つ神崎家。
約束の荷車と無数の絆を胸に、世界の異変へ立ち向かうパパたちの決意とやらかし(?)が今試される?
次回、第251話 え、パパが勇者!? 涙の別れと絆の荷車!? ポポちゃんに捧ぐ再会の約束!?




