第240話 え、パパが勇者!? 誘拐犯から一転、六族長が土下座大謝罪で事態急変!?
亮「今度はなんだ」
あんな「ポポちゃんともっふるをどこに連れて行ったの!」
みゆ「速やかに状況を説明してください」
ベアトリス「わたくし、我慢の限界ですわ!」
重々しい音を立てて牢屋の扉が開いた。
入ってきた虎人と熊人が、神崎家一同に向かって丁寧に向き直り、深々と頭を下げる。
虎人「族長がお呼びです。こちらにどうぞ」
急に態度が一変した理由も分からぬ神崎家だったが、恐縮しきった様子の獣人たちに 案内されて立派な部屋へと移動した。
中央には大きな円卓が置かれ、その向こう側に堂々とした威厳を放つ六人の族長が居並んでいた。
彼らは重厚な口調で、順に名を名乗っていく。
獅子人族長ザルガード。
虎人族長ヴァルド。
熊人族長グラウス。
犬人族長ロウガ。
猫人族長ニャルミア。
鳥人族長アルフェン。
一歩前に出たザルガードが、真剣な眼差しで切り出した。
ザルガード「貴方たちのお名前をお教え願いたい」
急に態度が変わったことに戸惑いつつも、亮は誇らしげに胸を張った。
亮「三人は娘のあんな、みゆ、ベアトリス。世界一の美人三姉妹だ。そして俺は神崎亮だ!」
あんな「また、その親バカな紹介の仕方して」
みゆ「分析するまでもなく、恥ずかしい自己紹介です 」
ベアトリス「美人三姉妹ですわ!」
ザルガード「……感謝する。神崎様、まずは……あの小さきお方が、聖獣様であるとお間違いございませんか?」
亮「え? もっふるのことか? 聖獣かどうかはよく分からないけど、我が家の大切な家族だぞ」
あんな「ほらパパ、王都で大騒ぎになったことがあったでしょ」
亮「そう言えばそんなこともあったなー」
その言葉に、六族長は顔を見合わせ息をのんだ。
ザルガード「……やはりそうだ。我々が牢をお開けしたのは他でもない。あのお方が連れられていたお方こそ、我ら獣人国が古より崇める『聖獣様』そのお姿だったからです」
ベアトリス「ただ可愛いもふもふではなかったのですわ!」
ザルガード「聖獣様を伴っておられる以上、あなた方が悪人であるはずがない。そして……まずはポポのことを詳しく聞かせてもらいたいのだ」
あんな「分かりました」
あんなは小さく頷き、まっすぐに族長たちを見据えて口を開く。
あんな「私たちがポポちゃんと出会ったのは――」
ポポを保護した時のこと。
ポポが泣きそうな声で「ママ」と呟いたこと。
小さな手で空を指差し「おうち」と必死に訴えたこと。
そして神崎家がポポを家族の元へ無事に届けるため、こうして獣人国を目指して旅をしてきたこと。
その一つひとつを丁寧に言葉にして伝えていく。
みゆ「ポポちゃんは最初から一貫して、ただ自分の家に帰りたいという一心でした」
六族長は腕を組み、静かにその言葉に耳を傾けていた。
ザルガード「……なるほど」
ヴァルド「最初から、こちらの誤解だったのですね」
ニャルミア「あの子は、この人たちに連れ去られたのではないのね」
グラウス「助けてもらっていた……ということか」
ザルガードは静かに立ち上がると、そのまま深々と腰を折って頭を下げる。
ザルガード「……申し訳なかった」
その姿に続くように、ヴァルド、グラウス、ロウガ、ニャルミア、アルフェンも一斉に頭を下げた。
亮「え、ちょっと……!?」
ザルガード「我々は、あなた方をポポの誘拐犯だと思い込んでいたのだ」
ヴァルド「命がけでポポを守ってくれた恩人たちを、事もあろうに牢へ入れてしまうとは……」
グラウス「本当に、すまなかった!」
深々と頭を下げ続ける獣人たちを前に、亮は慌てて両手を振る。
亮「いやいや! もう頭を上げてください」
あんな「そうです! ポポちゃんが無事なら、それで十分ですから!」
ニャルミア「……それでも、ポポをここまで無事に連れてきてくれた」
ニャルミアは、目元を和ませながら再び頭を下げた。
ニャルミア「本当に、ありがとう」
温かな感謝の言葉に、あんなは柔らかく微笑む。
あんな「どういたしまして!」
亮「ただ一言だけ言わせてください」
亮のいつもとは違う真剣な表情に、場の空気が締まる。
亮「私たちにではなくポポちゃんに謝ってください。今回の件で一番悲しい思いをしたのはポポちゃんですから」
亮の言葉で族長たちは言葉を失う。
しばらくの沈黙ののち重苦しい口を開いた。
ザルガード「亮殿の言う通りだ……」
その時、バタンと大きな音を立てて扉が開いた。
ポポ「パパー!」
小さな影が、弾丸のような勢いで飛び込んでくる。
亮「ポポ!」
ポポはまっすぐに亮の胸へと飛び込んだ。
亮「よかった……! 無事だったかい?」
ポポ「パパ……!」
ぎゅっとしがみついてくる小さな身体を、亮は優しく抱きしめる。
あんな「ポポちゃん!」
みゆ「無事でよかったです」
ベアトリス「心配しましたわ!」
もっふる「ピィー♪」
神崎家のみんなの顔を見回し、ポポはパッと弾けるような笑顔を見せた。
その時、ザルガードをはじめ、獣人の族長たちが一斉に膝をつき、ポポと同じ目線まで下りて頭を下げる。
ザルガード「……ポポちゃん、今回の件申し訳なかった」
ポポ「……」
亮「族長たちがごめんなさいって言っているよ」
ポポ「……うん」
亮「ポポちゃんが、許してくれたみたいだよ」
ザルガード「……ありがとう」
みゆは、亮の足元で誇らしげに胸を張っている存在に視線を向けた。
みゆ「今回、もっふるもお手柄です」
もっふる「ピィー♪」
ザルガード「聖獣様をこうして安全にお連れいただいたことにも、深く感謝申し上げねばなりません」
亮「いやあ、感謝と言われても……もっふるは我が家の大切な家族ですからね」
もっふる「ピィー♪」
亮の言葉に満足そうに鳴くもっふるの姿に、六族長たちの険しかった表情がふっと柔らかくなった。
つい先ほどまで冷たく張り詰めていた部屋の空気は、心地よい温もりへと変わっていく。
もう誰も、神崎家を怪しい者として見る者はいなかった。
こうして――
災難から始まった異国での騒動は、聖獣様の存在と神崎家の温かな対応によって、平和な第一歩を踏み出したのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が
未知なる国での新たな出会いとともに賑やかに続いていく。
言葉の壁なんて一瞬で吹き飛ぶ、子供たちの笑顔と友情の力。
ポポちゃんの獣人語お勉強タイムに、気合十分のベアトリスも参戦で大盛り上がり!?
かけがえのない友達と温かな家族に見守られ、ポポちゃんの新しい一歩が今始まる。
次回、第241話 え、パパが勇者!? ポポちゃん、獣人語のお勉強!? 一緒に覚えれば怖くない!?




