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パパ、またやらかしてる! 〜50歳天然パパ、最強の娘たちともっふるで挑むFランク家族の無自覚無双スローライフ〜  作者: Kou
第二十九章 獣人国編〜言葉なき少女と紡ぐ、絆と波乱の異国生活⁉〜

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第238話 え、パパが勇者!? 言葉が通じない国でひとりぼっち!? ポポちゃんの大号泣で獣人国が大混乱!?

高い木々に囲まれた街の中を、様々な獣人たちが行き交っていた。

犬耳を持つ犬人。

猫耳を持つ猫人。

大きな羽を持った鳥人。

少し長い耳をした兎人。


人間の街とは何もかもが違い、通りのあちこちから獣人たちの活気ある賑やかな声が聞こえてくる。

その中をポポは、虎人に手を引かれて歩いていた。


周りを見ても、知っている顔はない。

聞こえてくる言葉も、全く理解できなかった。


案内された一軒の家の中で、大柄な獣人たちが優しく声をかけてくる。


虎人「大丈夫だ」


熊人「もう心配しなくていい。ここで今日は休んでくれ」


温かな響きではあるけれど、ポポにはその意味が分からない。

獣人が気遣うように笑いかけると、ポポも引きつったような笑顔をなんとなく返す。

けれど、胸の中を占めているのは別の思いだった。


ポポ「……もっふる……お姉ちゃん。たすけてよ」


そこに、神崎家の姿はない。

かつて経験した、あの小さな部屋に一人で閉じ込められていた頃の恐怖が蘇る。

知らない場所で、たった一人で孤独に包まれ、言葉すら通じなかったあの時間が、脳裏を過ぎっていく。


ポポ「……もういやだよ……」


ポポ「……一人になるのは嫌だよ」


部屋の隅で小さく丸くなり、ぽろぽろと涙が溢れ出す。

不安で押しつぶされそうだった。


虎人「この子は猫人だ。私たちでは怖いのかも知れない。猫人や犬人のほうが良いかもしれん」


熊人「そうかもな。よし、呼んでくる、少し待っていろ」


しばらくして、犬人、猫人、兎人がやってきた。


猫人「もう大丈夫だよ」


だが、何を言っているのかは分からない。

ポポは不安そうに獣人たちの顔を見上げた。

そして、大切な誰かをぎゅっと抱きしめるように両手を広げる。


ポポ「もっふる……」


獣人たちが顔を見合わせる中、ポポは来た道を指差した。


ポポ「パパ……」


その小さな声が、静寂の中に響く。


ポポ「パパ……!」


今度は、亮たちが連れて行かれた方向を強く指差した。


猫人「……?」


ポポ「パパ!」


もう一度、今度は両手を大きく振って全身で訴える。


ポポ「パパ! おねえちゃん! もっふる!」


虎人「さっきからずっとこの調子なんだ」


猫人「何かを訴えていないか?」


言葉は聞こえても、意味までは届かない。


ポポ「……!」


ポポは自分の胸を強く叩いた。


ポポ「ポポ!」


感情があふれ、倒れるようにしゃがみ込む。

誰かに手を取ってもらうように身振りで助けを求め、それから勢いよく立ち上がった。


ポポ「パパ!」


神崎家がいる方向を、まっすぐに指さす。


猫人「……人間のことか?」


伝わらないもどかしさに、ポポの目に大粒の涙が溜まっていく。

違う、そうじゃないの。パパたちは悪い人なんかじゃない。


ポポ「わるくない! パパ、わるくない!」


猫人「落ち着け」


ポポ「わるくない!」


ポポはぶんぶんと首を振る。

涙が頬を伝って溢れ落ちるけれど、止めるつもりなんてない。


ポポ「たすけてくれた! ポポ、たすけてもらった! パパ……たすけてくれた!」


言葉が通じなくても、言うしかない。

伝わるまで、何度も何度も。

ポポは涙を拭うこともせず、連れて行かれた方向を必死に指差し続けた。


ポポ「パパ……! おねえちゃん、もっふる」


何度目になるか分からない叫び。

ポポは涙で頬を濡らしながら、それでも希望を捨てずに訴え続ける。


ポポ「ポポの家族……!」


獣人たちは、そんなポポの姿を固唾をのんで見つめていた。


最初はただ誘拐されて怯えているのだと思っていた。

恐ろしい思いをしたからこそ、あの人間たちを思い出して怖がっているのだと。

ポポの瞳にあるのは恐怖ではない。

離れ離れになった大切な人たちを想い、身を挺して何かを訴えようとする強い意志だった。


虎人「……あの人間たちの事を何か言いたいのか?」


熊人「お前を連れて行った人間だぞ?」


ポポ「……パパ!」


ポポは胸を張り、自分の頬に手を当ててみせる。

みんなで美味しいごはんを食べて笑い合ったこと。

怖いときに優しく寄り添ってくれたこと。

一緒に歩んだ旅の道中。

一つ一つを、必死な身振り手振りで表現していく。


ポポ「やさしい……家族」


獣人たちには言葉そのものは理解できない。

けれど、ポポの表情から溢れ出る温かな感情だけは痛いほど伝わっていた。

この子は、あの人間たちを恐れても嫌ってもいない。

命よりも大切に思っているのだと。


熊人「……どういうことだ?」


猫人「分からない……」


ポポは獣人たちの顔を見回すと、最後にギュッと小さな手を握りしめた。


ポポ「パパ……おねえちゃん、もっふる」


その声は、これまでで一番まっすぐで、はっきりとしていた。


猫人「あの人間のことを言っているのだな」


熊人「そうだろうが、何を言っているかは分からない」


虎人「だけど今はこの子をゆっくりと休ませるべきでは?」


熊人「そうだな。今日はもう遅い。明日にでも族長に報告しよう」


部屋の中に静寂が戻り、獣人たちは扉へと向かう。

ポポは差し込む月明かりの中、静かに膝を抱え込んだ。

その視線は握りしめた自分の小さな両手から、一度も逸らされることはない。

言葉の通じない国で、ただひとつ胸に残るあたたかな温もりを、忘れないように確かめるみたいに。


こうして――

言葉の壁を超えて放たれた幼い少女の叫びが、獣人国に静かな波紋を広げていく。

ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が

明かされぬ真実を抱えたまま、静かに更けていく夜とともに次なる展開へと続いていく。

捕虜扱いから一転、まるまる獣魔もっふるの正体がまさかの……!?

神崎家を「誘拐犯」と決めつけていた獣人国に、前代未聞の大激震が走る。


次回、第239話 え、パパが勇者!? まるまる獣魔の正体は聖獣様!? ポポちゃんが呼んだ奇跡の再会!?


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