第237話 え、パパが勇者!? 理由なき罪人扱いに娘たちの怒りが爆発寸前の大ピンチ!?
第二十九章、スタートです!
ポポちゃんを故郷へ送り届けるため、ついに獣人国へと足を踏み入れた神崎家一行。
「今度こそ静かなスローライフを」と願うパパたちを待っていたのは、まさかの冷たく湿った牢屋の鉄格子!?
言葉が通じない中、ポポちゃん誘拐の疑いをかけられ絶体絶命……と思いきや、ポポちゃんの必死の訴えと「ある存在」のおかげで誤解が解け、一転して国の恩人に!?
獣人の少女たちとの出会いや、もふもふな日常と賑やかな宴。
ポポちゃんの笑顔と成長に癒やされる一方で、森の奥で蠢く不気味な魔物の影と、足元を揺らす不穏な地鳴りが静かに忍び寄ります。
日常の中に大きな波乱が巻き起こる、緊迫と絆の獣人国編が開幕します!
神崎家のドタバタ異世界スローライフ(?)、
新章もぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
長い旅を終え、ようやく辿り着いた約束の地。
しかし、神崎家を待っていたのは冷たく湿った牢屋の鉄格子だった。
目的はただ一つ。
迷子になり、泣いていた小さな獣人の少女・ポポを故郷へ送り届けること。
ただそれだけのために、荒野を越え、幾多の夜を明かしてここまで来たのだ。
それなのに。
「……ポポちゃんを誘拐した犯人、か」
冷たい石の床の上で、亮が呟く。
ポポを連れていた人間。
その事実だけで、彼らは獣人の子を奪った凶悪な誘拐犯の烙印を押した。
力ずくでポポと引き裂き、神崎家はこの牢へと放り込まれたのだ。
あんな「……冗談じゃないわよ」
あんなが握りしめた拳が、静かに震えている。
いつもと違い彼女の瞳には、隠しきれない激怒の炎が揺れていた。
あんな「あんなに泣いて嫌がってたポポちゃんを引き離して……! 理由も聞かずに牢屋に入れるなんて、何なのよそれ!?」
みゆ「……同感です。論理的な弁明の機会すら与えず、一方的に罪人扱いするなど、到底承服できません」
みゆの声は、氷のように冷たかった。
いつもの分析的な余裕など一切なく、冷酷なまでの憤怒が宿っている。
ベアトリス「許せませんわ! 私たちのポポちゃんを、このような雑な扱い方で奪っていくなんて……っ!」
もっふる「ピィイイイ……ッ!」
もっふるの悲痛な鳴き声が、暗い地下牢に空虚に響き渡る。
家族の誰一人として、この状況を笑い飛ばせる者などいなかった。
亮「……ポポちゃん、言葉が通じないんだ。急に知らない大人に囲まれて、俺たちと引き離されて……どれだけ怖がってるか」
亮はゆっくりと歩み寄り、鉄格子の向こうに立つ牢番に声をかけた。
亮「すみません」
牢番が鋭い眼光でこちらを睨みつける。
亮「ポポちゃんは……無事ですか?」
返事はない。
亮「怪我とか……してないでしょうね?」
亮の問いかけに、牢番は頑なに口を閉ざしたままだ。
亮「頼む。せめて、無事かどうかだけでも教えてくれ!」
牢番「黙れ、人間」
吐き捨てるような、蔑みのこもった声だった。
牢番「お前たちが知る必要などない」
あんな「……なんですって?」
あんなの足元の石床に、ピキ……と小さな亀裂が入った。
みゆ「パパ。……これ以上の会話は無駄です。ポポちゃんの安全が確認できない以上、直ちにこの牢を破壊し、力づくでポポちゃんを奪還することを提案します」
あんな「壊すよ! こんな檻、一瞬で吹き飛ばしてポポちゃんを助け出す!」
ベアトリス「私もお供しますわ! ポポちゃんを泣かせる奴らは、この国ごと灰にして差し上げますわ!」
怒りに飲まれたあんなが鉄格子に手をかけ、本気で握りつぶそうとしたその瞬間。
亮「あんな、みゆ、ベアトリス、止めなさい」
亮の静かな、だが腹の底に響くような声が三人を制した。
あんな「な、なんでよパパ!? あんな言い方されて黙ってられる」
みゆ「そうです、パパ! 今の状況で静観するのは合理的な判断とは言えません!」
感情を爆発させる娘二人に対し、亮は二人の肩へゆっくりと手を置いた。
その手から伝わる圧倒的な温もりと揺るぎない重みに、あんなとみゆは息をのむ。
亮「俺たちが暴れるのは簡単だ。だけどそれで解決できる問題なのか」
あんな「あ……それは……」
言いかけて、言葉が詰まる。
力を振るえば、この牢なんて一瞬で粉々にできる。
目の前の牢番も、この国ごとひれ伏せさせることだって、神崎家の力なら造作もない。
だけど――。
亮「力ずくでポポちゃんを奪い返したとして……ポポちゃんは、故郷の家族やみんなのところへ笑顔で戻れると思うか?」
みゆ「……っ!」
みゆの表情がハッと強張る。
亮の言葉で、怒りに塗れかけていた頭が一気に冷やされていくのを感じた。
亮「俺たちは、ポポちゃんを笑顔で家に送り届けるために来たんだ。戦うためじゃない」
あんな「……でも、ポポちゃんが……っ」
あんなは悔しさに唇を噛み締め、溢れそうになる感情を殺すように拳を握りしめた。
みゆ「……申し訳ありません、パパ。私としたことが、怒りで冷静な計算を失っていました。ここで私たちが敵対すれば、ポポちゃんを一番追い詰めることになります……」
亮「分かってくれればいいんだ。……でもね」
亮は静かに、だが恐ろしいほどの圧を孕んだ目で、鉄格子の向こうを深く睨みつけた。
亮「もしポポちゃんが一滴でも涙を流すような酷い目に遭わされているなら――俺は、国だろうが何だろうが許さない」
神崎亮という男の「父親」としての本気の静寂が、地下牢の空気を物理的に歪ませていく。
力で破ることは容易い。
だが、ポポのために耐える。
あんなとみゆはハッと我に返り、父の持つ「静かな覚悟」の重さに息を呑んだ。
こうして――
大切なポポちゃんの無事を祈り、溢れ出る怒りと圧倒的な破壊力を必死に抑え込みながら、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
国を揺るがす危機の中で極限の緊張感を孕んでいくのだった。
言葉の通じない未知の国で、たった一人取り残されたポポが大号泣。
必死の身振り手振りで訴える幼い叫びが、獣人国全体を巻き込む大騒動に発展……。
パパたちが捕まる裏で、家族の絆を信じるポポの命がけの直訴は届くのか!?
次回、第238話 え、パパが勇者!? 言葉が通じない国でひとりぼっち!? ポポちゃんの大号泣で獣人国が大混乱!?
言葉の壁をぶち破れ! すれ違いから始まる前代未聞の異世界スローライフ(?)開幕!




