第229話 え、パパが勇者!? 美人四姉妹で獣人国へ!温かな家族の絆を乗せて爆走!?
第二十八章、スタートです!
ポポちゃんの故郷を目指し、ついに王都を出立した神崎家一行。
「今度こそ、のんびり風を感じながら家族でスローライフな旅を!」
と願うパパですが、ベアトリスの大張り切りによる大爆走から始まり、三百年間途絶えていた歴史の壁、そしてまさかの不審者?
国境を越える前から、やっぱり今回も騒動とツッコミの嵐です。
けれど、新たに「四姉妹」となった娘たちの絆と、ポポちゃんを無事におうちに送り届けるための家族の決意は本物。
神崎家は無事に獣人国にいけるのか?
神崎家のドタバタ異世界スローライフ(?)、
新章もぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
亮「よーし、獣人国へ出発だー!」
青空の下、亮の爽やかな声が街道に響き渡る。
快適な速度で走る一台の大きな荷車。
それを引いているのは、大型鹿系魔物・グランディアだ。
御者台では、亮が穏やかな笑顔で手綱を握っていた。
亮「いやー、こうして風を感じながらのんびり旅するのも久しぶりだなあ」
あんな「そうだね。前回の移動はバタバタだったから、こういう移動もたまには良いかも」
亮「それに、この立派な荷車。本当にありがたいよなあ」
あんな「ゼーマンさん、本当に親切だよね。 小さいポポちゃんが歩くのは大変だろうからって、こんな立派な荷車を貸してくれるなんて感謝しきれないよ 」
ベアトリス「皆様で一緒に乗れるのですから、とってもありがたいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
どこまでも広がる澄み切った青空。
心地よい爽やかな風が、通り抜けていく。
街道の両脇には、青々とした美しい草原がどこまでも広がっていた。
荷台では、あんなとみゆが並んで座り、その隣ではポポがもっふるを大切そうに抱きしめている。
もっふる「ピィ〜♪」
ポポ「……きれい」
ポポは、目の前を流れていく雄大な景色をぽかんと眺めていた。
壁に囲まれていた王都とは、まるで違う世界。
どこまでも続く広大な草原と、遠くに見える雄大な山々。
ポポにとって、見るものすべてが初めて体験する美しい景色だった。
あんな「ポポちゃん、楽しそうだね。私たちも一緒に旅ができてすごく嬉しいよ」
ポポ「うん……!ポポも嬉しい」
ポポは嬉しそうに微笑む。
その表情を荷台の奥に見つけた亮は、御者台から温かな眼差しで振り返った。
亮「そういえばさ」
あんな「ん? なにパパ?」
亮「これで、うちも四人になったんだよな」
みゆ「……家族構成の再定義ですか」
亮「ほら、あんな、みゆ、ベアトリス、それからポポちゃん」
ポポ「……わたしも……?」
亮「もちろん!」
亮は優しく笑った。
亮「これからは『神崎家の美人四姉妹』だな!」
ポポ「……!」
ポポは驚いたように、大きな瞳を丸くした。
亮「あれ……嫌だったかな?」
ポポ「……嫌じゃない! すっごく……うれしい……!」
ベアトリス「まあ! 素晴らしいですわ! ポポちゃんという可愛らしい妹ができて、わたくしも誇らしいですわ!」
あんな「ポポちゃんが一番下の妹ね!」
みゆ「パパらしいです」
ポポ「……お姉ちゃん……?」
ポポはおずおずと、あんなたちを見つめた。
あんな「そうだよ! 私たちがポポちゃんのお姉ちゃんだよ!」
ポポ「……そっか……お姉ちゃん……」
ポポは照れくさそうに頬を染めながら、心から嬉しそうに笑った。
その横で、もっふるがパタパタと短い羽を揺らす。
もっふる「ピィー♪」
亮「もっふるも嬉しそうだな」
もっふる「ピィー♪」
そんな温かく穏やかな時間が流れていたのだが。
すっと、ベアトリスが目を輝かせながら御者台へ身を乗り出した。
ベアトリス「わたくしもその荷車の操縦というものをやってみたいですわ!」
亮「え、グランディアの操縦を?」
ベアトリス「ええ! 騎乗や御者の技術も嗜んでおきたいのですわ!」
亮「そっか! やってみる?」
ベアトリス「ぜひやりたいですわ!」
亮「じゃあ、どうぞ。優しく持ってね」
亮が手綱を渡すと、ベアトリスは嬉しそうに握りしめた。
ベアトリス「こうですわ?」
亮「そうそう。グランディアは頭が良いから、強く引っ張らなくて大丈夫だからね」
ベアトリス「分かりましたわ!」
グランディアが、パカポコと心地よい足音を立てて街道を進む。
ベアトリス「まあ! 風を切って、とっても気持ちいいですわ!」
亮「うん、筋がいいよ。上手だ」
あんな「ベアトリス、すっごく楽しそう!」
みゆ「はい。運動学習における適応能力の高さを感じます」
あんな「パパより筋がいいんじゃない? パパ、王都を出る前に御者さんに教えてもらってた時、ひどかったもんね」
みゆ「記憶に新しいです。非常に危険な状態でした」
【〜回想〜】
王都を出発する直前、親切な御者から手綱の握り方を教わっていた亮。
御者「亮さん、このように手綱をですね、優しく張る感じで……」
亮「大丈夫だよー! 俺、こういうの得意だから!」
御者「あ、いえ、調子に乗ると魔物が……あっ! なかなか上手ですね!」
亮「でしょー! ハハハ!」
調子に乗った瞬間、グランディアが「ヒヒーン!?」と暴れ出し、荷車が激しく蛇行したのだった。
御者「暴れるなんて滅多にないグランディアが!? 一体何をしたんですか!?」
あんな「パパ! 調子に乗って何か変なことでもしたでしょー!?」
みゆ「褒められるとすぐに調子に乗って失敗する典型例です」
亮「そんなー! 褒められたから『よしよし』って心の中で思っただけなのにー!」
もっふる「ピィ……」
【〜現在〜】
あんな「……っていう前科があるからね、パパは」
亮「あの時はグランディアがちょっと張り切っちゃっただけだって」
ベアトリス「もっと速くしても大丈夫ですの!?」
亮「いやいや、まだ慣れてないんだからそのままで」
その瞬間。
グランディアの大きな耳がピクッと動いた。
亮「ん?」
グランディア「ブルルッ!」
突然、グランディアが何かを感じ取ったように速度を上げた!
ベアトリス「まあっ! スピードが上がりましたわ!」
亮「ベアトリス、慌てなくていい! 手綱を優しく引き寄せて!」
ベアトリス「分かっていますわ! お任せくださいですわ!」
しかし、ベアトリスの視線の先、街道の真ん中に大きな水たまりが広がっていた。
ベアトリス「……あら? あれは……?」
亮「あっ! まずい、水たまりだ!」
ベアトリス「えっ!?」
グランディアが水たまりを避けようと、急激に横へ進路を変えた!
荷車が大きく斜めに傾く!
ガタンッ!!
ポポ「きゃっ!?」
あんな「ポポちゃん!?」
みゆ「警告! 荷台右側、急速に傾斜します!」
もっふる「ピィー!?」
ポポ「もっふる!」
ポポはとっさにもっふるを抱きしめ、身を縮めた。
亮「ベアトリス、手綱を少し緩めて! まっすぐ走らせて !」
ベアトリス「こ、こうですわ!」
亮「そう!」
ベアトリスが慌てて手綱を緩めると、グランディアは姿勢を立て直し、再び速度を落とした。
荷車の揺れがゆっくりと収まっていく。
ベアトリス「……ふぅ。……今のは、少々揺れましたわ!」
あんな「少々!? 完全に横転しかけてたでしょ!?」
みゆ「計測データによれば、荷台が約二十度傾きました。転覆寸前です」
ベアトリス「今度は安全運転で行きますわ!」
ポポ「……ふふっ」
そのやり取りを見ていたポポが、思わず可憐な笑い声を漏らした。
もっふる「ピィー♪」
ポポの笑顔につられるように、もっふるもご機嫌で鳴く。
亮「よーし、のんびり安全に行こう。スローライフ旅行だ―」
だが、亮のそんな平和な願いは、次の瞬間あっさりと打ち砕かれた。
ベアトリス「お任せくださいですわ! 完璧な安全運転とは即ち、迅速な目的地への到達ですわ! 今度は最高速度でお届けいたしますわ!」
あんな「どこが安全運転なの!? 意図を真逆に解釈しないでー!?」
ベアトリス「お姉様からの熱い激励、確かに受け取りましたわ! いざ、限界突破ですわーー!!」
ビシィッ!
威勢良く手綱が振られた瞬間、グランディアが目を輝かせて猛烈なダッシュを開始した!
ガタガタガタガタッ!!
あんな「きゃああああ!? スピードが出すぎーー!!」
みゆ「警告! 荷台の揺れが限界値を超過、空中跳躍の危険性があります!」
ポポ「わぁーっ♪ すごーい! ぴゅーって飛んでるみたいー!」
もっふる「ピィーーーーーッ!?」
亮「ベアトリス! ブレーキ! ブレーキを踏んで――うわああああ!?」
あんな「荷車にブレーキなんてついてないでしょーー!!」
スローライフとは程遠い絶叫と悲鳴を街道に響かせながら、神崎家を乗せた荷車は、遥かなる獣人国へ向かって猛スピードで爆走していくのだった。
こうして――
『美人四姉妹』となった娘たちの賑やかな歓声とともに、新たな旅が幕を開ける。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
風を切り裂く爆走とともに未知なる秘境へ突き進むのだった。
暴走する荷車で平原を大爆走する神崎家。
一方その頃、王都では歴史から消された「300年前の真実」を巡り最高幹部会議が大紛糾。
手続き無用の無茶振りな旅立ちに、国の重鎮たちが勝手に期待と勘違いを深めていく!
次回、第230話 え、パパが勇者!? 神崎家の勝手な旅立ちで王都大騒ぎ!?
勘違いと爆走の果てに、止まっていた歴史の歯車が今動き出す!




