第227話 え、パパが勇者!? 王都でお買い物大パニック!? 爆買い攻勢にポポちゃん置いてきぼり!?
翌朝。
亮「よし。俺はギルドへ行って、旅に出ることを伝えてくるよ」
あんな「ギルド?」
亮「いやいや、長い間王都を離れるからね。一言、伝えておかないと」
みゆ「……定期的な連絡および報告。珍しくパパが合理的な判断をしています」
亮「珍しく?いつもと言って欲しいよな」
あんな「たまに、パパにしてはちゃんとしてる時があるのよね」
もっふる「ピィー♪」
亮は、ポポへと視線を向ける。
亮「その間、お前たちは買い物でもしてきなよ。ポポちゃんも、まだ王都のお店をゆっくり見てないだろ?」
ポポは少し戸惑いながら、亮を見上げた。
亮「街は……やっぱり、まだ少し怖いかな?」
ポポは一瞬だけ躊躇したものの、しっかりと首を横に振った。
ポポ「……少しだけ怖いけど、みんながいるから、大丈夫」
(……本当に強い子だなあ)
亮は心の中で感心し、温かな眼差しを向けながらポポの小さな頭を撫でた。
あんな「よし! じゃあお買い物に行こうか! ポポちゃんに王都の楽しいところ、いっぱい教えるね」
ポポ「……うん」
その時、ポポは隣にいるもっふるを見つめた。
ポポ「……もっふるも、いくの?」
あんなは太陽のような笑顔で頷いた。
あんな「もちろん! ね、もっふる?」
もっふる「ピィ〜♪」
その元気な返事に、ポポは安心し少しだけ笑った。
亮「じゃあ、後で合流しよう」
神崎家は二手に分かれ、それぞれ歩き始める。
亮は冒険者ギルドへ。
あんなたちは、旅立ち前の王都の街並みへと向かった。
冒険者ギルドの扉を開けると、いつものように多くの冒険者たちの賑やかな声で満ち溢れていた。
受付の奥から亮の姿に気付いた受付嬢のリーナが、笑顔で会釈する。
リーナ「あ、亮さん! おはようございます。今日はどうされたんですか?」
亮「おはようございます、リーナさん。今日はガリオスさんに用事がありまして」
リーナ「ギルマスですか……部屋にいますのでどうぞ」
亮は礼を言い、ギルドマスター室の扉をノックした。
中から豪快な声が響く。
ガリオス「入れぇ!」
亮が部屋へ入ると、ガリオスは書類の山から顔を上げた。
ガリオス「おう、亮じゃねぇか。今日はどうした?」
亮はいつもの調子で答える。
亮「ちょっと行ってくるよ」
ガリオス「……どこへだ?」
亮「獣人国」
ガリオスの動きがピタリと止まった。
ガリオス「……は?」
亮「獣人国」
ガリオス「いやいやいや!」
ガリオスは勢いよく立ち上がった。
ガリオス「何言ってんだお前!? 獣人国だぞ!?」
亮は首を傾げる。
亮「うん、そう言ったけど……」
ガリオス「お前も知ってるだろ! 約三百年間、国交が断絶してる国だ! 普通に行ける場所じゃねぇぞ!」
亮「大丈夫だよー。何とかなるって」
ガリオス「大丈夫って、何とかなる話か……!?」
ガリオスは額を押さえ、大きくため息をついた。
ガリオス「……ハァ。で、何でそんな所へ行くんだ?」
亮は穏やかに笑った。
亮「ちょっと困っている子がいるからね」
しばらく沈黙が流れる。
そして、ガリオスは呆れ果てたように苦笑した。
ガリオス「……またかよ」
亮「うん。困っているなら助ける。ただそれだけだよ」
ガリオスは肩をすくめながら笑う。
ガリオス「お前らしい理由だ。だから、お前の周りはいつも騒がしくなるんだろうな」
亮は照れくさそうに笑った。
亮「そうかな?」
ガリオスは呆れたように笑いながら、静かに頷いた。
一方、その頃。
あんなたちは王都の大通りを歩いていた。
露店が並び、人々の賑やかな声が響く。
ポポはきょろきょろと辺りを見回していた。見るものすべてが新鮮だった。
あんな「よしっ! ポポちゃんに最高の思い出を作ってもらうために、お姉ちゃん張り切っちゃうよ! まずは何を見ようか!」
ベアトリス「ポポちゃんのお洋服も見たいですわ! 可愛いお衣装をたくさん着ていただきたいですわ!」
みゆ「旅に必要です。ポポちゃんの着替えを揃えましょう」
もっふる「ピィー♪」
ポポは小さく頷いた。
最初に立ち寄ったのは、子ども服を扱う店だった。
ベアトリスとあんなが目を輝かせ、何着も服を選んではポポに合わせてみる。
ベアトリス「まあ! このドレス、ポポちゃんに絶対似合いそうですわ!」
あんな「うん、すっごく可愛い! あ、でもこっちのフリル付きのブラウスも捨てがたいなぁ!」
ポポは少し照れながらも、嬉しそうに笑う。
あんな「ねえねえ、これも可愛いよ! こっちのワンピースも似合いそう!」
ベアトリス「いいですわ! あら、こちらも捨てがたいですわ! 全部買って差し上げたいですわ!」
あんな「うんうん! ポポちゃん、どれも絶対似合うよー!」
盛り上がる二人を横目に、みゆがぽつりと呟いた。
みゆ「……完全にポポちゃんの意見を無視しています」
あんな「あ……! ご、ごめんポポちゃん! 夢中になっちゃった。ポポちゃんはどれがいい?」
ポポは二人の慌てぶりに楽しそうに笑った。
ポポ自身が選んだお気に入りの服を何着か買い、店を後にする。
店を出ると、今度は甘い香りが漂ってきた。
あんな「あっ! すっごい良い匂い!」
屋台では焼き菓子が並んでいた。
もっふる「ピィーーー!」
もっふるは元気よく、猛烈に頭を上下させた。
あんな「もっふるも食べたいの?」
みゆ「却下です。もっふるは、さっき宿を出る前に朝ご飯を食べています」
もっふる「ピィ……」
一瞬で耳をシナッと垂らすもっふるの姿に、あんなが思わず吹き出した。
あんな「じゃあ一個だけ買って分けっこね! ポポちゃんも食べてみて!」
店主から焼きたての焼き菓子を受け取り、みんなで切り分けて口に運ぶ。
ポポは恐る恐る一口食べた。
すると――。
ポポ「……っ! ……おいしい……!」
パッと笑顔を見せるポポ。
その一言に、あんなたちは顔を見合わせ、心からの笑顔になった。
ベアトリス「まあ! あちらの屋台の焼き串も美味しそうですわ!」
あんな「本当だ! ポポちゃん、あれも食べに行こう! お姉ちゃんが買ってあげる!」
ベアトリス「こちらのアイスも食べますわ! 王都の名物ですわ!」
あんな「あ、それもいいね! ポポちゃん、どれから食べる!?」
もっふる「ピィー♪」
次々と美味しいものを買いに走るあんなとベアトリスを見送りながら、みゆが呆れたように溜め息をついた。
みゆ「……あなた達、目的を完全に忘れています」
ベアトリス「あっ……ご、ごめんなさいですわ! ポポちゃんに王都の美味しいものを全部知っていただきたくて、ついですわ!」
あんな「ご、ごめんねポポちゃん! 私、はしゃぎすぎちゃった……!」
あんなが申し訳なさそうに頭を下げると、ポポは口元を緩めて嬉しそうに首を振った。
ポポ「ううん。お姉ちゃん達と食べると、どれもすごく美味しい!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「ポポちゃん……! 優しい……! よーし、次はポポちゃんが行きたいところに一緒に行こうね!」
ギルドでの用事を終えた亮は、王都の大通りへ戻ってきた。
しばらく歩くと――。
あんな「あっ! パパー!」
あんなが亮を見つけ、大きく手を振る。
亮「やあ、楽しんでるみたいだな」
あんな「うん! ポポちゃんもね」
亮はポポを見る。
ポポは少し照れながら小さく頷いた。
亮「それは良かった。楽しかったか?」
少し戸惑ったが、ポポはまっすぐ亮を見つめた。
ポポ「……うん!」
ベアトリスが抱えたたくさんの買い物袋を誇らしげに見せる。
ベアトリス「旅に必要な物もバッチリ揃いましたわ!」
みゆ「不足物資はありません。完璧な買い出しです」
もっふる「ピィー♪」
亮は笑いながら頷いた。
亮「じゃあ、今日はゆっくり休もう。明日から、長い旅になるからな」
全員が力強く頷く。
王都で過ごす最後の一日。
ポポにとっては、大好きな「家族」の優しさに包まれて、初めて心から笑えた特別な一日となった。
夕日に染まる王都の美しい街並みを背に、神崎家は帰路につく。
明日、新たな旅が始まる。
閉ざされた扉の向こう、獣人国へ向けて。
その温かな一歩を踏み出すために。
こうして――
王都での準備を完璧に整え、新たな目的地へと家族の歩みが始まる。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
その一歩を踏み出すのだった。
言葉も届かぬ絶望から救われたポポの「ありがとう」を背に、閉ざされた獣人国へ。
超至近距離に謎のトナカイ魔物、そして迫り来る不穏な黒い影。
相変わらずマイペースな神崎家が、未知なる地平線へ!?
次回、第228話 え、パパが勇者!? ポポの「ありがとう」で、いざ新たな旅へ! 獣人国を目指して出発!?




