第217話 え、パパが勇者!? 王都へ無事帰還!? 魔物が一匹も出ない平和街道!?
翌朝。
神崎家とルークたち調査隊は、温かいお見送りに包まれながら交易都市フレイアスを後にした。
ルークを先頭に、一行は王都へとまっすぐに続く踏み固められた街道を歩いていく。
朝の光が街道を優しく照らし、旅路を祝福するかのように心地よい風が吹き抜けていた。
亮は青空に向かって、大きく両腕を伸ばす。
亮「んーっ! 昨日は楽しかったなぁ。やっぱり宴会は最高だよ」
あんな「そうだね。流星のみんな、すごく良い人たちだったよね。お別れはちょっと寂しいけど……」
みゆ「非常に魅力的なパーティでした。個々の連携もさることながら、戦闘データ的にも素晴らしい精度を誇っていました」
ベアトリス「お二人とも、本当に素晴らしい騎士道の精神をお持ちの方々でしたわ!」
もっふる「ピィー♪」
ふと後ろを振り返ると、フレイアスの巨大な城壁が、少しずつ小さくなって遠ざかっていった。
カイル「ええ。活気があって、人も温かい本当に良い街です」
リリナ「またいつか、プライベートで遊びに来たいですね」
レイン「そうですね。今度は命懸けの調査仕事ではなく、純粋な観光として来たいものです」
穏やかな街道を歩き続ける一行。
静寂に包まれた周囲からは、風に揺れる木々のざわめきと、小鳥たちの楽しげなさえずりだけが聞こえていた。
亮は周囲の景色を見渡し、ふと不思議そうに首をかしげる。
亮「そういえばさ……帰り道って、魔物が全然出てこないよね? 姿すら見かけないや」
あんな「あっ、言われてみれば本当だ! 聖火山へ向かう時は、あんなに何度も襲われて大変だったのに」
みゆ「私の簡易索敵データ内にも、魔物の活性反応はほぼ皆無です。数値にして98%以上の減少を確認しました」
ルークは街道の先を警戒の眼差しで見つめながら口を開く。
ルーク「私も、行きと帰りのこの状況の違いは気になっていました」
オスカーが静かに、そして分かりやすく解説を付け加えた。
オスカー「聖火山での異常事態が収束したことで、周辺一帯の乱れていた魔力の流れが正常へと戻ったのでしょう。あの異常な魔力に引き寄せられて興奮していた魔物たちも、本来の静かな生息域へと戻ったと考えられます」
ノエル「カルデアの村長さんも仰っていましたね。村を襲っていた魔物たちが突然、吸い寄せられるように聖火山の方へ走り去っていったと」
カイルはあの時の光景を思い返すように呟く。
カイル「聖火山の異変が治まると同時に、この街道からも魔物が一斉に姿を消した……。とても偶然とは思えませんね」
亮「そっかぁ。じゃあ、本当に全部終わったんだね。よかったなぁ」
みゆ「肯定。少なくとも、聖火山を中心に発生していた広域な異常事態は完全に解決したと考えて良いと思います」
あんな「これで、もう旅人さんや村の人たちが怖い思いをしなくて済むんだね。本当に良かった」
ルーク「ええ。この朗報を一日も早く王都へ届けることも、私たち調査隊の重要な任務です」
その言葉に、一同は深く深くうなずいた。
南方の地に再び平穏が戻ったことを胸に刻み、一行は確かな足取りで王都への道を歩み続けた。
交易都市フレイアスを出発してから数日後。
先頭を行くルークが、前方の地平線へ視線を向けた。
ルーク「皆さん、見えてきました」
亮たち神崎家も一斉に顔を上げる。
果てしなく続く街道の向こう、地平線の先に、陽の光を浴びて白く輝く巨大な城壁が姿を現していた。
王国の中枢、王都。
亮「うわぁ……帰ってきたなぁ。なんだかちょっと懐かしいよ」
あんな「そうだね。なんだかすごく久しぶりの王都って感じがする」
みゆ「移動ペースは極めて順調です。予定通り、本日中に城門を通過できます」
ベアトリス「ようやく辿り着きましたわ! 旅は楽しくて、あっという間でしたわ!」
もっふる「ピィー♪」
オスカー「王都では、上層部への正式な最終報告となります」
ノエル「聖火山で起きたすべての真実を、正確に王国へ伝えなければなりませんからね」
記録院のエドガーは、大事そうに抱えている厚い記録簿をポンポンと軽く叩く。
エドガー「ご安心ください。フェニックスの件も含め、記録の整理は完全に完了しております」
セシル「提出用の報告書も抜かりありません」
王都の堅牢な城門が目前に迫る。
警戒に当たっていた門番の王国騎士たちは、街道から近づいてくる見覚えのある一団へ目を向けた。
そして、その先頭を歩く人物の顔を認識した瞬間、驚きで目を見開く。
騎士A「ルーク隊長だ!」
騎士B「聖火山調査隊が帰還されたぞーっ!」
騎士C「調査隊、無事帰還!」
騎士D「王城へ急ぎ伝令を走らせろ!」
その叫び声を合図に、城門の周囲は一瞬にして慌ただしく動き始めた。
一人の伝令騎士が馬に飛び乗り、王城に向かって猛スピードで駆け出していく。
ルークは城門へ到着すると、整列した門番へ軽く一礼した。
ルーク「ただいま帰還いたしました」
門番たちもビシッと姿勢を正し、敬意を込めて深く頭を下げる。
騎士「皆様、ご無事で何よりです! 各師団および王城へは、ただちに連絡を回します!」
ルーク「ご苦労様です。よろしくお願いします」
亮は久々に目にする、活気に満ちあふれた王都の美しい街並みを温かい眼差しで見渡した。
亮「やっぱり王都は賑やかでいいなぁ。活気があって元気がもらえるよ」
あんな「う〜ん、帰ってきたー!って感じがするね。ベッドが恋しいかも」
みゆ「王都周辺の空間データも正常。こちらでも変わらず平穏な日常が継続しているようです」
ベアトリス「王都の皆様もお元気そうで、本当に何よりですわ!」
もっふる「ピィー♪」
ルークはここでくるりと振り返り、神崎家と紅蓮の輪の面々へ丁寧に向き直った。
ルーク「皆さんは、まず指定の宿へ向かってゆっくりとお体をお休めください。私たちはこれより、王城へ報告に行ってまいります」
オスカーたちも静かに、感謝を込めて一礼をした。
長かった聖火山での死闘と、過酷な調査任務はここに幕を下ろした。
しかし、この無事の帰還と報告が、やがて王国全体を揺るがす大きな一歩になることを、この時の彼らはまだ知る由もなかった。
こうして――
数々の激闘を乗り越え、神崎家と調査隊は無事に王都への帰還を果たした。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
王都で巻き起こる新たな波乱と展開に向かって、静かに動き出す。
束の間の休息も束の間、迎えの馬車で連行された先は……なんと王国の重鎮勢揃いの王城大会議室。
静まり返る極限の緊張感の中、マイペースなパパの言動にあんなのツッコミとみゆの分析が試される!?
次回、第218話 え、パパが勇者!? 束の間の休息が一瞬で終了!? 重鎮勢揃いの王城大会議室へ強制連行!?




