第211話 え、パパが勇者!? 聖火山でフェニックス消滅!? 総出の大捜索!?
第二十六章、スタートです。
聖火山での激闘を乗り越え、神崎家が向かう新たな祝杯と波乱の予感!?
守護獣フェニックスが姿を消し、静寂を取り戻した聖火山フェルナード。
命懸けの調査を終えた神崎家一行は、無事に下山し、カルデアの村や交易都市フレイアスでかけがえのない仲間たちと最高の乾杯を交わします!
しかし、パパが異世界で長年恋焦がれていた「悲願のお米」を巡り、またしても神崎家を大パニックに巻き込む盛大な大勘違いが勃発!?
さらに王都へ帰還した一行を待っていたのは……?
パパの天然っぷりとブレないお米愛、そして娘たちのキレッキレなツッコミは今章も大炸裂です。
神崎家のドタバタ異世界スローライフ(?)
新章もぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
神崎家は、再び聖火山フェルナードの山頂へ立っていた。
ゆっくりと周囲を見回す。
見慣れた岩場。
赤く染まった大地。
肌を刺すような熱気に包まれた空気。
すべてが、あの神殿へ向かう前と変わらない。
だが、そこには決定的な違和感があった。
騎士団は武器を構えたまま微動だにしない。
魔術師団も、記録院の面々も。
紅蓮の輪も、流星も。
まるで、その場面だけが時を切り取られたかのように静まり返っていた。
亮「……」
何かがおかしい。 風がピタリと止んでいる。
炎も揺れず、火山灰一つすら舞っていない。
恐ろしいほどに、静かすぎる。
あんな「パパ……」
亮「……」
みゆも周囲を見渡す。
みゆ「……」
誰も言葉にはしなかった。
世界の時間が、完全に止まっている。
まさに、その時だった。
ふっ――。
頬を優しく撫でるような風が吹いた。
それは、あまりにも静かで、ごく弱い風だった。
しかし、その風を合図にするように。
ゴォッ――!!
山頂を包む炎が激しく揺れた。
一気に押し寄せる灼熱の熱気。
空へと舞い上がる火山灰。
止まっていた世界へと、一斉に命の動きが戻っていく。
ルーク「総員――突撃準備!」
鋭い号令が山頂へ響き渡る。
カイル「右へ回れ! 隙を与えるな!」
リリナ「後ろから援護します!」
オスカー「魔術師団、展開!」
ノエル「結界を維持しろ!」
アルト「了解!」
全員が、ほんの一瞬前まで命を懸けて戦っていた続きのように、一斉に動き出した。
だが――。
ルーク「……」
その足が、ピタリと止まる。
目の前に、いるはずの絶対的な存在がいない。
ルーク「……フェニックスは……どこへ行った!?」
その一言で、駆け出そうとしていた全員の動きが完全に止まった。
ルークは目を見開いたまま、困惑に満ちた表情で火口の上空を見渡す。
ルーク「……どこだ、どこへ消えたんだ……!?」
カイルも慌てて周囲を確認する。
カイル「さっきまで、確実にそこにいたはずです!」
レイン「見失いました! 空にも地上にもいません!」
リリナ「そんな……巨大なのが急に……」
騎士団に激しい動揺が広がる。
オスカーはすぐに杖を構え、地を突いた。
オスカー「索敵魔法を展開!」
足元に巨大な魔法陣が広がる。
淡い光が山頂一帯を包み込み、周囲を探査していく。
しかし、
オスカー「……いません。影も形も……」
ノエル「魔力反応も完全に確認できません」
アルト「まるで、最初から存在しなかったみたいです……」
その言葉に、山頂の空気が凍りついた。
あり得ない。 あれほど周囲を焼き尽くす圧倒的な存在が、何の痕跡も残さずに消えるなど、世界の理としてあり得ないのだ。
記録院のエドガーは、慌てて手帳をめくる。
エドガー「記録を……いや、まず状況を整理しなければ! 一体何が……」
セシル「どなたか、消えた瞬間を見ていた方はいませんか!?」
返事はない。
誰も見ていなかった。
誰一人として、神威溢れるフェニックスが消えた瞬間を目撃した者はいなかったのだ。
ガルド「どういうことだ……さっぱり分からねぇぞ……」
レオン「俺たちから逃げた……のか?」
セリナ「でも、羽ばたく音も、飛び立つ風だって聞いてないわよ」
リュシア「転移魔法……でしょうか?」
ミレイア「あれほどの巨大な存在を転移させる魔法なんて、私たちが気付かないはずがありません」
ラウルは腕を組みながら苦笑いを浮かべる。
ラウル「何とも後味の悪い終わり方だな。すっかり拍子抜けだぜ」
シェリル「ですが、少なくとも戦闘自体は終わっています」
ディオンは静かに火口へ目を向けた。
ディオン「見ろ、火山の様子が……」
全員の視線が火口へ集まる。
先ほどまで天をつくほど噴き上がっていた炎は、嘘のように少しずつ勢いを失い、赤く煮え立っていた溶岩も静けさを取り戻し始めていた。
オスカー「……火山活動が、急速に落ち着いている」
ノエル「あれほど異常だった熱と魔力の流れも、弱まっていきます……」
アルト「……完全に終息へ向かっているようです」
山頂を吹き抜ける風は、先ほどまでの肌を焼く灼熱とは違っていた。
ゆっくりと。
そして確実に。
聖火山フェルナードは、本来の静寂な姿を取り戻し始めていた。
その穏やかになっていく火口の様子を見つめながら、亮は静かに空を見上げる。
何も言わない。
何も語らない。
ただ、どこか満足そうに小さく息を吐く。
あんなも、みゆも、ベアトリスも、そしてもっふるも、その意味をしっかりと理解していた。
フェニックスは倒されたのではない。
怖気づいて逃げたのでもない。
自らの神聖なる役目を、すべて終えたのだ。
その真実を知る者は、この広大な異世界において、ただ神崎家だけだった。
こうして――
戦場の時間が再び動き出した時、世界の命運を握っていた神威は跡形もなく姿を消していた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
嵐の去った静寂の中で、未来を見つめ始める。
絶望の戦いを経て、影も形もなく消え去った巨大なフェニックスの痕跡……。
騎士団や冒険者たちが騒然となる中、その「神話の真実」と「受け継いだ秘宝」を知る者は……。
次回、第212話 え、パパが勇者!? 神話の真実を胸に秘めて聖火山調査終了!?




