第210話 え、パパが勇者!? 三姉妹の絆が奇跡の石を呼び覚ます神殿からの帰還!?
ベアトリスの小さな両手の中に、しっかりと、そして温かく収まった五角形の『炎環石』
その神秘的な輝きを見つめながら、亮たちは改めて、先ほどまで石が静かに浮かんでいた円形の祭壇へと視線を向けた。
亮「……なぁ、あんな。あのスタイラスって女性、やっぱりこの石を狙ってここまで来たのかな?」
あんな「そうだと思うよ。あんなに必死になって私たちの邪魔をして、祭壇に突っ込んできたんだし。もし私たちがここにいなかったら、この大切な石はあいつらに盗まれてたってことでしょ」
みゆ「簡潔に言うと、前回とは目的が違います。 ベーゼでは世界そのものを奪おうとしていました。 今回は炎環石という特定のアーティファクトです。 背後の組織は同じ目的で動いている可能性が高いです」
ベアトリス「あの侵入者にこの聖なる石を奪われなくて本当によかったですわ!」
もっふる「ピィー♪」
光が静まり、空気がふっと止まった。
その静寂の中心で、神殿の奥から、重厚で慈愛に満ちた声が響いた。
『――継承は成された』
誰も口を開かなかった。
あんなもみゆも、そしてベアトリスも、そのあまりにも圧倒的な存在感を放つ神秘的な声に、ただ息を呑んでじっと耳を傾けていた。
『よくぞここへ辿り着いた。そして、よくぞ邪悪から、守り抜いた』
神殿の天井の闇から優しく降り注ぐようなその響きに、全員の身体が心地よい魔力で満たされていく。
ベアトリスは胸の前でさらに強く手を重ね、その声の主へ応えるように目を閉じた。
声は、静かに、しかし予言のように続いた。
『されど、今はまだ、その時ではない。……時が満ちれば、道は、自ずと開かれるであろう』
それだけを厳かに告げると、その言葉は、未来への予兆のように空気へと消えていった。
それと同時に、祭壇の周囲を優しく包み込んでいた赤金色の光も、役目を終えたかのように名残惜しそうに少しずつ薄れていく。
あんな「……消えちゃった。ねえ、今の言葉ってどういう意味? 時が満ちればって、これから何か特別なことでも起きるの?」
みゆ「現状のデータでは、情報が圧倒的に不足しているため判断不能です。何らかの未知が始動した可能性を考慮すべきですが、現時点での予測は無意味です」
あんな「とりあえずは、これで全部終わった……のよね?」
みゆ「肯定。神殿内の魔力波形は完全に安定しています。……警告。私たちの足元の床面より、ここへ転移してきた際と全く同一の空間位相の反転反応を確認しました」
ベアトリス「また自動的に転移するのですわ!」
もっふる「ピィー!」
亮「よし、みんな、帰るぞ」
あんな「うん」
みゆ「はい」
ベアトリス「はいですわ!」
もっふる「ピィー♪」
水色の光がゆっくりと身体を包み込んでいく。
神殿はそれ以上、何も語らなかった。
ただ静かに、何千年の時を経て訪れたこの奇妙で温かい家族の姿を、元の静寂の中で見送るだけだった。
次の瞬間、神崎家の姿は光の中へと溶けるようにして、音もなく消え去った。
眩い光が彼らを優しく包み込む。
そして、視界が一瞬で塗り替わり――。
亮たちが目を開けると、そこはあの酷暑の空気がじっとりと漂う、聖火山フェルナードの山頂だった。
周囲の景色は、彼らが謎の神殿へと飛ばされる前と、寸分違わぬまったく同じ赤黒い岩肌の世界。
亮「……本当に戻ってきたのか」
あんな「パパ、本当に戻ってきたんだね……。あの大理石の神殿、なんだか狐につままれたみたいで、まるで夢だったみたい」
みゆ「空間座標の照合を完了。転移は正常に完了しています。物理的な位置誤差はゼロパーセント。完全に元の世界です」
ベアトリス「本当に戻ってきましたわ! 夢のようですけれど、私の手にはしっかりとこれが……!」
ベアトリスは、両手の中に大切に抱えられた炎環石を見つめ、誇らしげに胸を張った。
もっふる「ピィー!」
神殿で起きた数々の出来事。
不思議な力を持つ炎環石の継承。
そして、死闘を繰り広げた守護獣フェニックスの真実。
それらすべてを抱えたまま戻ってきた、聖火山フェルナードは……今……。
――そして、その空のさらに静謐なる場所。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、本当に退屈という言葉を忘れさせてくれますね
天上の鏡に映るのは、灼熱の試練を乗り越え、無事に元の山頂へと帰還した神崎家の姿。
守護獣フェニックスを巡る、過酷な激突。
その灼熱の戦いの最中に彼らが飛ばされたのは、何千年もの時を超えて佇む、太古の神殿でした。
不気味に忍び寄る灰色の影、そして立ちはだかる二人の強敵。
一触即発の緊迫した戦いの中でも、あの勇者は常に温かい眼差しで家族を見守り、娘たちは固い絆と完璧な連携で道を切り開いてみせました。
そして、神殿がずっと待ち望んでいた若き騎士の真っ直ぐな想いに応えるように、大地の記憶たる『炎環石』は彼女の手へと受け継がれたのです。
女神はそっと、その美しい指先を重ね合わせる。
『最強』の力を持ちながら、それを決して驕ることも、誇示することもなく……。
ただ大切な人を守りたいという純粋な想いだけで、冷たく閉ざされた神殿に再び美しい輝きを呼び戻してしまいました。
邪悪な野望を前にしても、己の信念を貫き、最後には誰もが笑顔になっていく……。
その飾らないぬくもりこそが、この世界で最も強く、そして優しい魔法なのかもしれませんね。
『されど、今はまだ、その時ではない』
神殿が残したその厳かな言葉は、一体どのような未来を示しているのでしょう。
ベアトリスが手にしたあの石が、いつ、どのようにして新たな道を開くのか……
女神は、まだ見ぬ次のページに指先をかけた。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
予期せぬ転移から帰還したあの家族の旅路に、また新しい奇跡が日常となっていくのでしょうね。
光が揺れ、風がそっと時の狭間を撫でる。
その微笑みは、予感に満ちた夜明けのように優しかった。
こうして――
神殿での激闘を乗り越え、炎環石を手にして無事に元の世界へと帰還した神崎家。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
再びいつもの賑やかな日常へと戻るはずだった。
第二十五章「神殿編」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
今章は突如として強制転移された神殿を舞台に、パパの出番こそ少なめでしたが、あんなとベアトリスの全開の突撃、そしてみゆの精密な魔法が冴え渡り、姉妹たちの完璧な連携が強敵グラファイトやスタイラスを圧倒しました。
見事に『炎環石』をベアトリスが継承し無事に帰還したのも束の間、
次章ではさらにスケールアップした規格外のトラブル?と待望のお米情報!?が一家を待ち受けます!
亮「みんな、神殿編を最後まで応援してくれて本当にありがとう! パパは後ろで暴風に飛ばされそうになっていたけど、娘たちが全開で大活躍する姿を見られて、見えない勇者ポイントが過去最高にガンガン増えている気がするぞ!」
あんな「ちょっとパパ、今回は私たちの連携がメインなんだから、後ろでオロオロしていたパパは大人しくしていてよね!? でも、読者の皆さんの応援が私たちの支えになっているのは本当です。皆さん、これからも私たちと一緒にこの旅路を歩んでくれたら嬉しいです!」
みゆ「観測データを報告。神殿から帰還したものの、パパのやらかしフラグが既に次回予告時点で炸裂傾向にあります。これ以上の事態悪化を予防するため、読者の皆様の評価(★)とブックマークによる『強力なやらかし予防策』の展開を要請します」
ベアトリス「お姉さま方の素晴らしいサポートがあったからこそ、わたくしも無事に『炎環石』を継承できましたわ! さあ皆様、私たち三姉妹の固い連帯感と、皆様の清き評価・ブックマークで、パパにさらなる光を捧げましょう!」
もっふる「ピィー♪」




