第192話 え、パパが勇者!? 押し寄せる魔物の大群とかつてない激しい警鐘で村全体が絶体絶命のカルデア村総力戦!?
聖火山フェルナードの麓にあるカルデア村。
調査隊が出発して半日ほどたった頃、かつてない慌ただしさに包まれていた。
空を引き裂くような激しい警鐘の音が、村中に鳴り響く。
ダリオ「総員、配置につけ! 防衛線を死守するんだ!」
戦士長ダリオが声を枯らして指示を飛ばす中、見張り台からは次々と魔物の接近を知らせる緊迫した声が上がっていた。
戦士A「西側だ! 西の森から新たな影!」
戦士B「フレイムウルフ出現! それも十や二十じゃねえぞ!」
ダリオ「弓隊構え! 引きつけてから放て!」
放たれた矢の雨が狼の群れに突き刺さるが、魔物の勢いは止まらない。
村人A「南、南側にも魔物です! 柵が破られそうだ!」
ダリオ「南からもか! 遊撃隊は南へ回れ! 村の中に一匹たりとも近づかせるな! 迎撃しろ!」
戦士たちが武器を握り締め、砂煙を上げて駆け出す。
だが、状況は悪化する一方だった。
獰猛なフレイムウルフの群れが、牙を剥いて次々と柵を飛び越えて襲いかかってくる。
昨日までとは比べ物にならない、圧倒的な数が現れていた。
ダリオ「くそっ……まだ、増えるのか……! どこから湧いて出てきやがる!」
戦士「止まりません! 倒しても倒しても、奥の岩陰から次が引きも切らずに押し寄せてきます!」
村の戦士たちは息を整える暇もなく、傷つきながらも必死に戦い続けていた。
その時――。
ゴォォォォォォッ -!!
山から吹き下ろす、強烈な熱波が村全体を吹き抜けた。
村人A「熱い! なんだこの風は!」
村人B「また来た! 肌がヒリヒリする!」
村長のトーマスが、杖を突きながら天を仰いで額の汗を拭う。
トーマス「……こんな恐ろしい熱波は、長い歴史を持つこの村でも今までなかったのじゃ。やはり、山の神は相当お怒りなのじゃな……」
村人たち「山の神よー! どうかお鎮まりくだされー!」
容赦なく体力を奪う熱波。
そして、凶暴化して押し寄せる魔物の群れ。
状況は刻一刻と、悪くなる一方だった。
そんな絶望的な空気の中、トーマスは悲痛な面持ちで村の中を見回した。
建物の影で震えながら抱き合う子供たち。不安そうに祈りを捧げる村人たち。
そして、連戦で武器を握る手すら震えている疲れ切った戦士たち。
トーマス「調査隊の皆様、なるべく早く原因を突き止めてくだされ……。お願いしますじゃ。このままでは、本当に村が……」
それは、この土地に生きる者としての、切実な悲痛の叫びだった。
トーマス「……ダリオよ。戦士たちも、そろそろ限界じゃな」
ダリオ「……弱音を吐くわけにはいかんが、正直、武器の予備も底を突きかけている。まだ、なんとか気持ちだけで踏ん張ってはいるが……」
トーマス「ここはもう、危険じゃ」
ダリオ「……」
いつもなら「村を守る」と息巻くダリオが、言葉を詰まらせて黙り込む。
トーマス「村を捨てて、全員で一度避難する事も考えねばならんかもしれんのじゃ」
広場に重苦しい静寂が訪れた。
ダリオも、今度は反対しなかった。
もうこの人数では村を守り切れない。
それは、誰の目にも明らかな厳しい現実だった。
ダリオ「……ただ、この魔物の群れが囲む中、安全に避難が出来るかという問題があります!」
トーマス「確かにじゃ……。外の方が魔物の標的になりやすいじゃ」
次から次へと襲ってくる魔物の群れ。
この地獄のような包囲網の中を、戦えない女性や子供、老人を連れて避難させるのは、あまりにも現実的ではなかった。
ダリオ「とにかく、今は村長も安全な建物の中にいてください。ここは俺たちが――」
トーマス「いや、ワシも皆と一緒に戦うのじゃ。ここでただ座して待つような真似はせんじゃ!」
村長のその強い言葉に、周囲で怯えていた村人たちの目が変わった。
村人A「そうだ……我々も、ただ守られるだけじゃねえ! 戦うぞ!」
村人B「おー! そうだ! ここでじっとしていたって、どうせこのままでは助からないんだ!」
村人C「家を、子供たちを守るんだ!」
村人A「戦えるものは皆、鍬でも何でもいい、剣を取れ!」
村人B「槍を持て! 弓を持てー!」
村人一同「おーーー!!」
絶望が団結へと変わり、村全体が凄まじい熱気を持って動き出す。
生き残るための、カルデア村の総力戦が始まった。
トーマス「おー、皆の者……。ありがたいのじゃ」
ダリオ「よし! 死ぬ気で踏ん張るぞ! 皆で生き残るんだ!」
戦士と村人たちが一丸となり、迫り来る魔物に立ち向かおうとした――その時だった。
ゴォォォォォォォォッ――!!
地鳴りのような重低音と共に、今までで最大の、文字通り暴虐的な熱波が山から吹き荒れた。
あまりの熱風に、村の広場にいた人々が次々と悲鳴を上げてその場にへたり込む。
ダリオ「な、何だ今のは!? 熱すぎて息ができん!」
トーマス「こんなの、ワシの長い人生でも初めてじゃ……!」
グラグラと、足元の地面が微かに震える。
ゆらゆらと、大気そのものが異様な唸り声を上げる。
それは、まるで聖火山フェルナードそのものが、長きにわたる眠りから完全に目を覚ましたかのようだった。
村人A「山だ! 山が!」
村人B「おい、山を見ろ!」
誰かの叫び声に誘われ、誰もが恐怖に震えながら振り返る。
彼らの象徴である、聖火山フェルナード。
陽炎の向こう、その山頂付近から立ち上る赤黒い熱気と不穏な魔力の波動は、明らかに今までとは違っていた。
破滅のカウントダウンが始まったかのような、圧倒的な威圧感が麓まで押し寄せてくる。
トーマス「このままでは……本当に手遅れになってしまうのじゃ……」
ダリオ「村長……」
トーマス「頼む、皆様……なんとか間に合ってくれじゃ……!」
崩れゆく景色の中で、トーマスはただ、山頂へ向かったあの温かい家族の後姿を思い出し、祈るように呟くのだった。
こうして――
麓の村にも滅亡の危機が迫る中、聖火山の奥深くにいる調査隊は、さらに過酷な戦いへと身を投じていく。
ツッコミどころ満載な, 家族の異世界スローライフ(?) が、
山頂の火口で一行を待ち受ける真の元凶とは。
体長十メートルを超える巨大なサラマンダーが同時に三体も出現!
その中心に君臨するAランクの異常個体「サラマンダー・ロード」が放つ、すべてを無に帰す規格外の極大ブレスに、熟練の防御魔法が一瞬で爆砕され調査隊全員が絶体絶命の大ピンチに!?
誰もが息をもつけぬ過酷な死闘の真っ只中で、「みんな格好いいなぁ、パパの出番はどこかな?」と完全に緊張感ゼロで足湯を恋しがるパパの安定のダメさが今回も大炸裂。
次回、第193話 え、パパが勇者!? 三体のサラマンダーと規格外の極大ブレスで全員大ピンチの過酷な聖火山決戦!?
押し寄せる絶望の炎の壁、かつてない強敵の猛攻を神崎家のチートな絆で打ち破れ!




