第190話 え、パパが勇者!? ウサギと狼の無限湧きで大正解しちゃう天然パパ!?
ファイアスライムの群れをどうにか退けた調査隊一行だったが、誰一人として安堵の息を漏らすことはできなかった。
山肌を渡る熱風が、さらに不穏な気配を運んでくる。
みゆ「……警告。先ほどを上回る規模の魔力反応、急速に接近中」
ルーク「一同!新たな魔物に備えよ!」
ラウル「おいおい、またあの熱いスライムか?」
ガサガサと、熱気で干からびかけた赤茶けた茂みが激しく揺れる。
そこから一斉に飛び出してきたのは、全身が燃えるような赤い毛並みに覆われ、長い耳を立てた魔物だった。
ディオン「バーニングラビット!」
本来なら、個々の危険度は決して高くない。
冒険者になりたての新人でも相手にできるような魔物だ。
だが――。
バーニングラビットたちは、目に狂暴な光を宿しながら一直線にこちらへと飛び込んできた。
しかも、信じられないほどの群れを成して襲いかかってくる。
ルーク「前方! 数、約三十! 塊となって突っ込んでくるぞ!」
カイル「多いな!」
ルーク「臆するな、迎撃!」
ルークの指示で、再び騎士団が前へ出る。
カイル「行くぞ、お前たち! 一歩も引くな!」
レイン「はっ!」
リリナ「はいっ!」
訓練された騎士たちのブレのない剣技が、突撃してくる赤い弾丸のような魔物を次々に撃破していく。
しかし、正面の敵に気を取られている暇はなかった。
ルーク「右手、こちらも約三十出現! 紅蓮の輪!対処を頼む!」
ガルド「おう、任せておけ!」
ガルドが大盾を構えて前に出る。
ガルド「行くぞ!」
セリナ「言われなくても分かっているわよ! あんな生意気な小娘たちの前で、無様な姿を見せられるもんですか!」
リュシア「ふん、ただ数が多いだけの雑魚ね。私の計算に狂いはありませんわ」
ミレイア「うふふ、皆さん怪我をなさらないでくださいね? 治してあげるのは手間ですから」
レオン「普通に倒せばいいのに……胃が痛い」
文句を叩きつけながらも、さすがは実績のあるBランクパーティ。
手際よくバーニングラビットの群れをなぎ倒していく。
だが、それでも魔物の出現は終わらない。
亮「ねえ……なんか、どんどん増えてない?」
ラウル「ああ、増えてるな。前も後ろも、全方位がお祭り騒ぎだぜ!」
ガルルルルルッ!
ディオン「今度はフレイムウルフです!」
乾燥した岩肌を蹴り立て、今度は左手の斜面と、さらには一行の後方から、体からパチパチと火の粉をまとったフレイムウルフの群れが姿を現した。
ラウル「おいおい……ウサギの次は狼かよ。めちゃくちゃじゃねえか」
ルーク「息つく暇もないな……! 完全に包囲されている!」
オスカー「実に面倒ね。次々と……」
フレイムウルフたちは低い唸り声を上げながら、鋭い牙を剥き出しにして一斉に調査隊へと襲いかかってくる。
ルーク「左、神崎家! 後方は流星!魔術師団は援護及び中央の記録員を死守せよ!」
亮「よーし、任せておけー!」
あんな「了解です! ほらパパ、調子に乗ってまた火傷しないでよ!」
みゆ「左方のウルフ、速度、時速四十キロ。軌道を予測!お姉ちゃん、ベアトリス!」
あんな「任せて!」
ベアトリス「みゆお姉さま、神の啓示、確かに受け取りましたわ! お任せですわ! ハァァァッ!」
もっふる「ピィー!」
神崎家の見事な連携と、Aランクパーティ流星の圧倒的な火力によって、フレイムウルフたちは次々に討伐されていく。
しかし――。
ラウル「ハァ、ハァ……。おいディオン、やっぱりこれ、おかしいぞ」
ディオン「ああ……」
ラウル「いくらなんでも多すぎるな。まるで山中の魔物が、一箇所に集められてるみたいだ」
ディオン「ええ、私も長年色々な火山地帯を見てきましたが、ここまで異なる種の魔物が密集し、同時に狂暴化しているのは見たことがありません」
ラウル「俺も初めてだ。普通ならウサギと狼が一緒に突っ込んでくるなんてありえない」
エドガー「うぅ、熱い……ですが、この異常な異種混載の群れの動向、すべて記録します!」
セシルに背中を守られながら、エドガーは必死に現状を書き留めていく。
最後の一匹を倒し終え、その場の空気は先ほどよりも遥かに重く、沈み込んでいた。
亮「つまり……」
あんな「つまり?」
亮「これは……嫌な予感しかしないぞ」
みゆ「……パパにしては、珍しく正解。データの裏付けはありませんが、直感としては正しいです」
ベアトリス「さすがパパですわ! 危機の予知能力までお持ちなのですわ!」
もっふる「ピィー!」
みゆ「冗談を言っている場合ではありません……更なる警戒です。周辺の魔力反応、先ほどの倍以上の数値で増加中」
ルーク「くっ、またか! 無限湧きか、ここは!」
この聖火山の異常は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
調査隊の全員の胸に、底知れない不安がよぎる。
ルーク「総員、陣形を維持! 絶対に油断するな!」
岩の向こうから、さらなる地鳴りのような足音が響き始める。
こうして――
聖火山フェルナードの異変は、確実に、そして容赦なく周囲へその狂気の影響を広げていたのだった。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
大量発生した魔物たちが次々と調査隊の前に立ちはだかる。
聖火山の異変は、さらに深刻さと危険度を増していく。
灼熱の聖火山を埋め尽くす巨大アリの大群に、あんなとみゆが限界突破で大暴走!?
火山の熱気を真っ向から叩き潰す無差別級の極寒魔法が炸裂し、燃え盛る大地が一瞬にして完全なる氷の世界へと変貌を遂げる。
調査隊が魔物ではなく娘たちの過剰なチート火力に命がけで逃げ惑う中、放心状態の娘たちを「パパに任せろ!」と優しく守るパパの父親らしい男気が今回も大炸裂!?
次回、第191話 え、パパが勇者!? 灼熱の聖火山がまさかの全面氷結で大パニック!?
一瞬で氷を溶かす未曾有の超熱波、火口付近で蠢く地鳴りの正体とは!?




