第188話 え、パパが勇者!? 溶鉱炉並みの異常熱波で限界寸前なのに我慢比べゲーム開始!?
調査隊は聖火山フェルナードの山頂を目指し、一歩一歩、険しい足取りを進めていた。
上るにつれて傾斜はさらに厳しさを増し、ゴツゴツとした赤茶けた岩肌が周囲を埋め尽くしていく。
そして――。
とにかく、暑い。
亮「それにしても暑い……。さすがにこれはちょっと、尋常じゃないぞ……」
ラウル「暑いな。本当に……」
亮「いやいや、暑いってレベルじゃないぞ? サウナの中で全力疾走させられてる気分なんだけど!」
みゆ「パパの特殊スキルトラブルホイホイ発動中です」
亮「そんなスキル持ってないぞ」
みゆ「確定です。これ以上のスキル発動はやめてほしいです」
あんな「ほんとやめてほしいよ」
亮「えー、パパが原因なのー」
もっふる「ピィー!」
いつもの光景に、一同は思わず声を上げて笑った。
だが、その笑い声すらも熱気に阻まれるようにしてすぐにかき消されていく。
額から流れ落ちる大粒の汗が次から次へと目に入り、呼吸をするたびに肺が焼けるような錯覚を覚える。
ただ歩いているだけなのに、体力は容赦なく削られていた。
ラウル「予想はしていたけど、ここまでとはな……」
いつも陽気なラウルが真剣な表情を浮かべ、隣を進むディオンも真剣な表情だった。
ディオン「……ここまで暑いのは初めてだな。以前、聖火山を登った時にはここまでではなかった。この熱気はあり得ない」
ルーク「やはり、異変の影響ですか」
ディオン「その可能性は高いな」
みゆ「周辺気温上昇継続中」
あんな「えっ、まだ上がるの!?」
ベアトリス「さすがに厳しいですわ……。鎧の中が、まるで沸き立つスープのようになっておりますわ……!」
もっふる「ピィー!」
その時だった。
ゴォォォォォッ!!
突如、山の斜面を駆け下りるようにして、凄まじい熱波が吹き抜けた。
ただの温い風ではない。
文字通り、肌を焼くような熱気が全身を包み込む。
一同「熱っ!?」
亮「わ、わわっ! 尋常ではないぞ、今の風は!」
あんな「きゃああっ!? なに今の!? 全身が焼けるかと思った!」
みゆ「瞬間的な熱波。周囲の気温も一時的に跳ね上がりました」
ベアトリス「さすがのわたくしも暑いですわ!」
もっふる「ピィー!」
まるで巨大な溶鉱炉の扉を、目の前でいきなり全開にされたかのような熱気。
一瞬で全身の水分がすべて持っていかれるような、強烈な不快感が一同を襲う。
ラウル「今の熱波はヤバいな……。肌にピリピリくるぜ」
ルーク「熱波……。ディオン、普段でも、このような現象は起きるのですか?」
ディオン「いいえ。本来ならここまで暴力的な熱波は、噴火直前でもない限り滅多に起きません」
ラウル「これは確かに異常だな。この熱波が続くようなら命がいくつあっても足りないぞ」
エドガー「この瞬間的な熱波の周期と体感温度、すべて克明に記録します!」
セシルと共に歩きながら、エドガーは汗だくになりながらも執念でペンを走らせる。
熱波は数秒で通り過ぎ、元のじっとりとした暑さに戻った。
だが、誰一人として表情を緩める者はいない。
歩くだけで著しく体力を消耗する環境。
そこに加えて、いつ襲ってくるか分からない異常な熱波。
状況は確実に悪化の一途を辿っていた。
そんな緊迫した空気の中、一際冷ややかな声が響く。
セリナ「ふん、これくらいで騒ぐなんて大げさね。これだから素人の Fランクは困るのよ」
あんな「……は? 別に騒いでないけど? 事実を言っただけでしょ」
リュシア「おや、余裕がないように見えますが。そんなに辛いなら、今のうちに泣いて逃げ帰ったらどうかしら。ねえ?」
みゆ「……相手の煽り文句の意図、およびその言葉を選ぶ論理的メリット、分析不能。時間の無駄と判断します」
ミレイア「うふふ、そんなに強がらなくてもいいのですよ。 無理は良くありませんからね。体を壊してからでは遅いですもの」
ベアトリス「その言葉、そのままそっくり皆様にお返ししますわ! その勝負!わたくしがお受けしますわ!」
一瞬で、熱気とは違う空気がピリッと張り詰めた。
ガルド「あー……始まったな……」
レオン「この過酷な異常気象の中で、わざわざ意地の張り合いをしなくてもいいだろうに……」
ルーク「はは……皆さん、こんな状況でも仲がいいですね」
カイル「……それは絶対に違うと思いますけど」
その後も、足元の悪い溶岩道を歩き続ける一行。
だが、誰もが汗だくでいた。
そのような中でも、女性陣の意地の張り合いはまだ続いていた。
ガルド「おい、お前たち、もうその辺にしておけよ。喉が渇くだけだぞ」
レオン「頼むからやめてくれ、俺の胃が痛くなってきた……」
セリナ「何を言っているのよガルド。私はただ、事実を指摘しているだけよ」
リュシア「ええ。私たちは何もしてませんわよ。ただ、アドバイスを差し上げているだけですわ」
ミレイア「そうですよ。私たちは我慢比べをしているわけではありませんから」
亮「お、我慢比べかー! なるほど、みんなでするかー! 誰が一番最後まで涼しい顔をしていられるかゲームだな!」
ラウル「おっ、亮さん、良いねー! そのノリ、俺は嫌いじゃないぜ!」
セリナ「ふん、いいですわよ。受けて立とうじゃないの」
リュシア「ふふ、私は理論上、余裕ですけどね」
ミレイア「うふふ、あんまり無理をして、後で泣くことになりますよ?」
ベアトリス「わたくしも負けませんわ!」
もっふる「ピィー♪」
ルークは前髪から滴る額の汗を手の甲で拭った。
ルーク「……まずいですね」
オスカー「ああ、笑い事にしている場合ではないな。これ以上の気温上昇は危険だ」
ディオン「……このまま進むのは危険です、ルーク殿。本格的に倒れるものが出かねない」
その場の空気が一瞬で変わった。
冗談でも意地の張り合いでもない。
本気の判断だった。
カイル「引き返すんですか?」
オスカー「安全を優先するなら、一度カルデア村まで撤退するのも選択肢に入るな。準備を強化する必要がある」
ディオン「ええ。準備不足のままこの先に進めば、危険を伴います」
ルークは険しい表情で、陽炎の向こうにゆらめく聖火山の山頂を見つめた。
このまま強行して進むべきか。
それとも、一度戻って体制を立て直すべきか。
隊長として、彼が決断を下そうとした――その時。
みゆ「……」
あんな「みゆ? どうしたの、急に立ち止まって」
みゆ「……反応あり」
ルーク「何だ?」
みゆはじっと聖火山を見つめた。
みゆ「複数の魔力反応。急速にこちらへ接近中です」
オスカー「……魔物か!」
ガラガラと激しい音を立てて、行く手を阻む岩陰の向こうで何かが動いた。
熱気に歪む景色の向こうから、明らかに敵意を持った気配が近づいてくる。
ルーク「全員警戒!」
ルークの声が響き渡り、一同が一斉に武器を構える。
さっきまでの我慢比べの空気は雲が晴れるように消え失せ、調査隊に張り詰めた緊張が走る。
こうして――
引き返す判断が頭をよぎるほど状況は悪化していた。
しかし聖火山は、その判断すら許さないかのように、容赦なく新たな脅威を送り込んできた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
現れた魔物との遭遇。
聖火山の異変はさらに深刻さを増していく。
緊張走る灼熱の火山道に現れたのは、全身が真っ赤に燃え盛る危険なファイアスライムの大群。
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