【外伝】神崎家VS紅蓮!?宿命のライバル?女性たちの熱きバトル開幕!?
温泉我慢大会という、誰も望んでいなかった激闘を終えた六人は、ようやく休憩所へとたどり着いていた。
全員、まだ少し頬が赤い。
火照った体を床の上で投げ出していると、温泉施設のおばちゃんが木製の盆を重そうに抱えてやって来た。
おばちゃん「お嬢ちゃんたち、温泉上がりには名物の火山ヤギミルクだよ。疲れた体に染みるからねぇ」
目の前に並べられた六本の木製ジョッキ。
ほんのり湯気を立てる真っ白なミルクからは、どこか香ばしい甘い香りが漂っていた。
その濃厚な香りが鼻腔をくすぐるだけで、湯上がりの体にじわりと活力が戻ってくるような気がする。
あんな「わぁ、おいしそう!」
ベアトリス「温泉の後の一杯……最高ですわ!」
みゆ「成分分析。高タンパク、高ミネラル。栄養補給には最適です」
セリナ「……」
そのジョッキを見つめたセリナが、不敵に笑う。
セリナ「ふふっ……」
あんな「……その笑い方、嫌な予感しかしない」
セリナ「今度こそ決着をつけるわ!」
あんな「だから何の決着ですか!?」
リュシア「火山ヤギミルク一気飲み対決!」
ミレイア「負けた方が今日一日、荷物持ちね!」
みゆ「分析。私たちが勝つ確率99.8%です」
ベアトリス「神崎家代表として負けるわけにはいきませんわ!」
あんな「なんでみんな乗り気なのー!?」
全員の目が完全に戦闘モードへと切り替わる。
いつの間にか空気はぴりりと張り詰め、六人は一斉にジョッキを構えた。
「「「せーのっ!」」」
ごくっ、ごくっ、ごくっ――!
一気に流し込まれる火山ヤギミルク。
濃厚でありながら、後味は驚くほどさっぱりとしていて引き際が良い。
あっという間に全員が飲み干した。
「あーーっ!」
「おいしい!」
「最高ですわ!」
セリナ「……私の勝ちね」
あんな「いや、みんな同時だったよ!」
リュシア「私の方がコンマ一秒早かったわ」
みゆ「計測不能。全員ほぼ同時です」
ベアトリス「引き分けですわ!」
誰一人として己の負けを認めず、納得がいかない様子で睨み合う。
その時だった。
「焼きたて火山まんじゅうはいかがー!」
タイミングが良いのか悪いのか、香ばしい匂いが休憩所いっぱいに広がる。
店先には、ふっくらと湯気を立てる丸いまんじゅうがずらりと並んでいた。
セリナ「……!」
あんな「その目はやめて!」
セリナ「第二ラウンドよ!」
あんな「始めないでー!」
リュシア「火山まんじゅう早食い対決!」
ミレイア「もちろん参加ですわ!」
ベアトリス「神崎家の名誉にかけてですわ!」
みゆ「分析。私たちの勝利です」
「「「いただきます!」」」
ぱくっ。
「熱っ!!」
「あふっ!」
「はふっ、はふっ!」
「あチチチチ!」
焼きたての餡は予想以上に熱く、まるで溶岩のようだった。
それでも誰も皿に戻そうとはしない。
涙目になりながら、必死に口を動かし続ける。
セリナ「ま、まだ……負けない……!」
あんな「だから勝負じゃないってば……はふっ!」
ベアトリス「お、おいしいですけれど……熱いですわ!」
ミレイア「はふっ……はふっ……!」
リュシア「水……いえ、まだ我慢……!」
みゆ「分析。全員、正常な判断能力を失っています。勝負の意味はありません」
数分後――。
机の上には、呆れるほどの数の空になった皿が山積みになっていた。
あんな「……もう食べられない」
セリナ「……私も」
リュシア「お腹いっぱい……」
ミレイア「もう夕食はいりませんわ……」
ベアトリス「神崎家代表……無念ですわ……」
みゆ「報告。全員、満腹により戦闘不能です」
長椅子に並んで突っ伏す六人。
全員がお腹を押さえ、指一本動かすのも億劫な様子で完全に沈黙していた。
その様子を見ていたおばちゃんがにこにこと笑う。
おばちゃん「ふふっ。本当に仲良しさんたちだねぇ。」
その言葉に、残された最後の力を振り絞って全員の叫びが重なった。
「「「違いますーーっ!!」」」
カルデア村の温泉。
そこでは今日もまた、誰も頼んでいない奇妙な勝負が繰り広げられていたのであった。
こうして――
泉街の片隅で繰り広げられた少女たちの熱き(?)戦いは、全員の自爆という形で幕を閉じた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
また一歩、騒がしい方向へと進んでいくのだった。
読者の皆様、いつも『パパ、またやらかしてる!』を応援いただき、本当にありがとうございます!
今回は本編の激闘(?)から少し離れて、カルデア村の温泉を舞台にした【外伝】をお届けいたしました。
本編ではいつもパパのやらかしに振り回されている娘たちですが、パパがいないところはいないところで、結局いつも通り(あるいはそれ以上?)本当に賑やかな感じになってしまいました。
誰も頼んでいないのに、なぜか毎回限界突破の勝負に挑んで自爆していく彼女たちの姿を、楽しんでいただけていれば幸いです。
温泉上がりの「火山ヤギミルク」に、熱々の「火山まんじゅう」
カルデア村の名物はどれも一癖ありますが、美味しいのは間違いありません。
……とはいえ、何事も「ほどほど」が一番ですね。
完全に戦闘不能(満腹)になった彼女たちが、この後どうなったかは……。
いよいよ明日朝8時より、本編第二十三章がスタートいたします!
これまでと同様に、いえ、これまで以上に楽しんでいただけたら嬉しいです。




