第185話 え、パパが勇者!? 魔物の猛攻を規格外の火力で迎え撃つ防衛戦の裏でまさかの応援団結成!?
カルデア村、東門。
ひときわ高く鳴り響く警鐘の中、村の戦士たちが次々と防衛の配置についた。
ルーク「──よし、みな、気合いを入れて行くぞ! 一匹たりとも村に入れるな!」
一同「おおっ!」
門の前に陣取るのは、王国騎士団の面々。
そして、やる気に満ちあふれた紅蓮の輪と流星。
もちろん、その中には神崎家の姿もある。
彼らの後方からは、王立魔術師団の面々が杖を掲げていた。
ダリオ「カルデアの誇り高き戦士たちよ! 命にかえても我が故郷を守り抜くぞ!」
戦士達「おおおおおおっ!」
割れんばかりの雄叫びが上がった、まさにその直後だった。
グルルルルルル──!!
巻き上がる赤茶けた砂煙の向こうから、凶暴な赤い眼光をぎらつかせた第一陣のバーニングラビットの大群が、牙を剥いて村の防衛線へと到達した。
ルーク「迎撃開始!!」
一同「おおっ!」
カルデア村の命運をかけた、激しい防衛戦の火蓋が切られた。
ガルド「がははは! まずは俺が押し返すぞ! 《シールドバッシュ》(大盾の壁)」
ガルドが構えた身の丈ほどもある巨大な盾が、突進してきたバーニングラビットを凄まじい衝撃音とともに正面から吹き飛ばした。
レオン「ガルドさん、右へ回ります! 撃ち漏らしを叩く!」
セリナ「ふん、ぬるいわ! 遅い!」
前線へ躍り出たセリナの剣が、目にも留まらぬ速さで閃いた。
一匹、二匹、三匹──。
流れるような太刀筋で、次々と襲いかかる魔物を鮮烈に切り倒していく。
セリナ「ふふん! どう、これが王都のBランクの実力よ!」
セリナは勝ち誇ったように胸を張り、ある人物へと視線を向けた。
その視線の先では──。
あんな「そこっ! はあぁぁっ!」
あんなが剣を豪快に一閃させると、突撃してきた数匹の魔物がまとめて遙か彼方へと弾き飛ばされていった。
セリナ「なっ、ちょっと……! 負けないわよ、あんな!」
一方、前衛の後方。
リュシアが、静かに杖を天空へと掲げた。
リュシア「──ファイアボール」
ドォン!
と激しい爆発音が響き、バーニングラビットの群れの一部がまとめて吹き飛ぶ。
リュシア「ふふっ、これで六匹ね」
リュシアは自信満々に微笑んだ。
だが、その隣から淡々とした声が響く。
みゆ「……十一」
リュシア「え?」
みゆ「今ので、討伐数は十一に達しました」
リュシア「な、何ですって!? いつの間にそんな数を!?」
アルト「さすがみゆ様! 魔力回路の無駄のない最適化、神業です!」
リュシア「くっ……ま、まだ肩慣らしよ。本番はここからなんだから!」
また別の場所では、ミレイアが傷ついた戦士たちの背後から、手厚い支援魔術を施していた。
ミレイア「はい、そこのお強い戦士の方々、光の加護を」
聖なる光が荒野を走り、怯んだ魔物がバタバタと倒れていく。
ミレイア「うふふ、これで私も五匹目ですわ」
ベアトリス「そんなちまちまとした数字、関係ありませんわ! 私の全力をお見せしますわ!」
ゴォォォォッ!
ベアトリスから放たれた規格外の巨大な火球が、魔物の群れの中央で大爆発を起こした。
ドゴォォォン!!
もの凄い爆風とともに、何匹もの魔物たちがまとめて天高く吹き飛んでいく。
ベアトリス「た、楽しいですわ! どんどん、どんどん倒しますわ!」
ミレイア「え、えっ……何かしらあの規格外の火力……」
激しい乱戦の中、ルークは剣を振るいながらも、奇妙な違和感を拭いきれずにいた。
ルーク「……やっぱり、みゆさんの言うとおりだな」
カイル「どうかしたか?」
ルーク「魔物たちの動きだ。本来なら知性の低いバーニングラビットに、これほど統率された進軍ができるはずがない。まるで、何かに後ろから無理やり追い立てられているかのような……」
その頃
亮「がんばれー! みんながんばれーー!」
ラウル「……亮さん、なぜお前は戦う側じゃなくて応援側に回ってるんだ?」
亮「いやぁ、だって若いみんながこんなに頑張ってるからね。親としては応援したくなるじゃないか」
ラウル「あはは、確かにそれもそうだな! よーし、がんばれー! 負けるなよー!」
亮とラウルは、まるで示し合わせたかのように同じ角度で腕を振り上げていた。
あんな「パパっ!! 何をラウルさんと一緒になって応援団やってるの!」
ディオン「ラウル……! お前はAランク冒険者の自覚を持て!」
亮「……はい」
ラウル「……はい」
二人揃って、娘と仲間にこっぴどく怒られる羽目になった。
しかし、戦場では、神崎家と紅蓮の輪の妙な競争がさらに激化していた。
セリナ「これで、十五! 十五匹目よ、あんな!」
あんな「え、えぇっ!? だから何ですか、それ!? 私は数えてないですよ!」
ベアトリス「わたくしはたくさんですわ! 計算が追いつきませんわ!」
セリナ「ちょっと、たくさんって何よ! ずるいマネしないでよね!」
みゆ「……三十二」
リュシア「さ、さ、三十二ぃぃ!?」
アルト「素晴らしいです、みゆ様! やはりみゆ様は最強です!」
みゆ「……普通です。計算通りの効率的運用の結果に過ぎません」
周囲から見れば、全然普通ではないチートっぷりだった。
やがて、荒野に展開していた最後のフレイムウルフが倒れる。
激しかった戦場に、にわかに静寂が訪れた。
戦士A「……し、周辺の魔物反応、すべて消失!」
戦士B「群れの完全なる壊滅を確認しました──っ!」
一瞬の間を置いて、地を震わせるような大歓声が沸き起こった。
「勝った、勝ったぞーー!」
「カルデアの村が助かったんだ!」
「やったぞーーーっ!」
あんな「レインもリリナも、見ない間にすごく剣の腕をあげたね」
ベアトリス「ええ、とっても凄かったですわ!」
レイン「は、はい! ありがとうございます!」
リリナ「すべて、あんなさんが教えてくださったおかげです! 本当にありがとうございます!」
みゆ「アルト。先ほどの術式の制御、完璧でした。合格点をあげます」
アルト「あ、ありがとうございます……っ! もっともっとみゆ様の領域に近づけるよう、これからも必死で努力します!」
村長トーマスは、深々と安堵の息を吐き出した。
トーマス「おお、おお……皆のおかげじゃ。カルデア村は救われたのじゃ……」
ルーク「ですが、村長。この異常事態は、まだ終わっていません」
ラウル「ああ。魔物たちがこれだけの規模で暴走した理由が、まだ謎のままだからな」
みゆ「データ補足。現在も、周囲の残留魔力の流れは、あの聖火山フェルナードの深部へと明確に続いています」
ルーク「つまり、すべての原因は、そびえ立つ山!聖火山フェルナードだな」
オスカー「うむ。根本的な解決のためには、やはり山への本格的な調査が必要ですな」
ルークは一同を見渡し、力強く頷いた。
ルーク「明日、調査隊は聖火山フェルナードへ向かう」
亮「おっ、ついに本格的な山登りだな! お弁当は何にしようか」
あんな「パパ、ピクニックじゃないんですから! 命がけの調査ですからね!」
みゆ「補足。山登りではなく、調査です」
もっふる「ピィー♪」
緊張の解けた村人たちからどっと温かい笑いが漏れた。
──その夜。
激しい戦いの余韻が残るカルデア村から、少し離れた暗い岩場。
二つの怪しい影が、静かに息を潜めながら、松明の光が灯る村の様子を見下ろしていた。
「……予想以上の戦力ですね。王都の調査隊、侮れません」
夜の冷たい風に紛れるような、不気味な声が響く。
隣に立つもう一人の影は答えた。
「……問題ない。観察を続けるぞ」
二人の影は、ゆっくりと暗雲の立ち込める火山の方向へと視線を向けた。
そして、誰にもその存在を気付かれることなく、音もなく闇の中へ溶けるように消え去っていった。
こうして──
カルデア村を襲った、かつてない魔物の大群は見事に撃退された。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
異常の原因は未だ不明。
不穏な影が暗躍する中、調査隊はついに、異変の元凶が眠る火山調査へと。
次なる舞台は原因不明の異変が渦巻く聖火山フェルナード。
険しい未知の火山道、立ちはだかる新たな脅威に調査隊の面々がかつてない緊張感に包まれる。
次回、第186話 え、パパが勇者!? 調査終了!? 次なる目的地へ出発だー!?
前途多難な火山調査の行方は、大自然の深部に眠る未知の脅威を迎え撃て!




