第184話 え、パパが勇者!? 魔物の大群接近!? カルデア村!絶体絶命で本格防衛戦の火蓋が切られるー!?
カン! カン! カン! カン!
激しく、そして狂ったように村中に鳴り響く、見張り台からの警鐘。
つい先ほどまで広場を包んでいた穏やかな日常は、文字通り一瞬にして消え去った。
村人A「……っ、警鐘だ! 敵襲だぞ!」
村人B「東側の見張り台からだ! みんな、建物の中へ隠れろ!」
のどかだった村の空気が、張り詰めた戦場のそれへと一変する。
ルーク「──何事だ! 総員、東の防衛線へ急行するぞ!」
ルークの大声とともに、王都の騎士たちが一斉に地を蹴って走り出した。
神崎家、そして調査隊の面々も、そのただならぬ気配に表情を引き締め、すぐさま後を追った。
東側の見張り台へと到着すると、そこでは防衛についていた村の戦士たちが、誰もが血相を変えて遥か前方の荒野を凝視していた。
戦士A「来ました! こちらに向かって一斉に押し寄せてきています!」
ルーク「落ち着け! まずは正確な状況を報告しろ!」
戦士B「は、はい……っ! 前方から進軍してくるのは、バーニングラビットの群れです!」
その報告に、周囲の空気が一気にざわめきに包まれる。
ルーク「……バーニングラビットだと? 数はどれほどだ!」
戦士A「ご、五十……いや、そんな生易しいものじゃありません! もっとです! 百は超えています!」
ルーク「なに……。バーニングラビットがそれほどの群れをなすなど、今まで聞いたことがないぞ!」
ラウル「……異常だ。あの魔物は本来、単体か数匹の家族単位で行動するはずだ。それが百以上の大群で押し寄せてくるなど、あり得ん……」
南方の火山地帯をよく知るラウルの顔も、見たことがないほど険しく引き締まっている。
しかし、見張りの戦士の絶望的な叫びは、それで終わりではなかった。
戦士A「ま、まだあります! そのバーニングラビットの群れの後方、さらに左右の岩陰からも、別の魔物が急速に接近中!」
ルーク「後方からもだと!? 別の魔物というのか!」
戦士A「は、はい! フレイムウルフの群れです! バーニングラビットを追い立てるように、同じ方向から迫ってきています!」
トーマス「同時じゃと……? 別種の魔物が、争いもせずに同時に村へ攻めてくるというのか……!?」
オスカー「……おかしいな。魔物同士が、互いの縄張りを完全に無視して同じ方向へ進軍している」
ラウル「普通なら、遭遇した時点で殺し合いが始まるはず! こんな統率された動き、あり得ない!」
みゆ「……いえ。彼らは統率されているのではなく、何かに追われています」
冷静な声が、防衛線に響いた。
ルークをはじめ、その場にいた全員の視線が一斉にみゆへと集中する。
みゆ「データ観測。現在、前方からこちらへ向かってくる魔物たちの魔力の流れが、尋常ではないほど激しく乱れています。これは、純粋な敵意というよりも、背後からの恐怖による暴走状態です」
オスカー「魔力波形を感じます! みゆ殿の言う通り、魔物たちの背後、ずっと遠くからです」
みゆ「はい。聖火山フェルナードの山頂側から、大気を押し潰すような、極めて強力な熱魔力がこちらへ向けて照射されています。魔物たちは、その圧倒的な力から逃れるために、麓の村へ向かって必死になっていると推測されます」
ルーク「……となると、山の奥に、魔物の生態系を根底からひっくり返すような、恐るべき上位種が現れた可能性がありそうだな!」
ラウル「火山で、一体何が起きているってんだ……」
謎は深まるばかりだが、今は目前に迫る大群を止めるのが先決だった。
ルークは即座に、指揮官として指示を次々と飛ばし始める。
ルーク「村長! 村人たちを連れて、今すぐ避難を! 一人も外へ出すな!」
トーマス「わ、分かったのじゃ! 総員、避難を最優先にするのじゃ!」
ルーク「戦士長ダリオ! 貴殿らは戦士たちを率いて、村の境界にある防衛の死守を頼む! 決して村の中へ魔物を入れるな!」
ダリオ「応よ、分かった! 調査隊の指示に従え! 総員、戦闘配置──っ!」
戦士達「おおおーーっ!」
全身に刺青を刻んだ二十人の勇敢な戦士たちが、一斉に武器を構えて防衛へと散っていく。
ルーク「王国騎士団、および冒険者パーティ、流星、紅蓮の輪、そして神崎家は、村の外の開けた荒野で魔物の第一陣を迎撃、これを各個撃破する!」
オスカー「王立魔術師団は、騎士団の後方から魔法による迎撃を行え! 前衛の負担を減らすのだ!」
ラウル「よーし、話が早くて助かるぜ! 久々に派手な大仕事が来たな!」
シェリル「ラウル、調子に乗って前に出すぎないでよ。油断は禁物だから」
ディオン「ああ。何と言っても、今回は数が多すぎる。持久戦を覚悟しろ」
紅蓮の輪の面々も、それぞれの愛用の武器を構えた。
ガルド「ついに防衛戦か。ここが俺たちの踏ん張りどころだな」
レオン「はは、やるしかないですね」
セリナ「ふん、この村を不細工な魔物どもに落とさせるわけにはいかないわよ!」
リュシア「まったく、温泉上がりで肌がさっぱりしたばかりなのに、面倒なことになったわね」
ミレイア「ふふふ。私たちに任せておけば、どんな大群相手でも余裕ですわよ」
防衛線の緊張感が、極限まで高まった。
その瞬間だった。
村の外、赤茶けた荒野の遙か彼方から、地を這うような不気味な声が響き渡った。
グルルルルルルル……!
ガルゥゥゥッ──!
それは、一つではない。二つでもない。
何十、何百という、無数の獣たちが放つ、背筋が凍りつくような狂暴な咆哮だった。
戦士A「み、見えたぞ! 奴らだ!」
見張り台からの悲鳴のような声に、全員の視線が村の外へと向けられる。 荒野の地平線の向こうから、無数の黒い影が、まるで津波のように押し寄せてくるのが見えた。
巻き上げられる巨大な砂煙が、ただでさえ強い太陽の光を遮り、不気味な影を大地に落としている。
ルーク「……来るか!」
ルークが腰の長剣を力強く引き抜いた。
その後方でオスカーが魔力を込めた杖を構える。
そして──
そんな緊迫した大バトルの空気の真ん中で、亮は周囲を見渡していた。
亮「うわぁ……。なんか、もの凄い数だな。こんなにたくさんいたら、畑の作物を全部踏んづけちゃいそうだけど、大丈夫か?」
あんな「パパっ! 今は畑の心配をしてる場合じゃないです! 武器を構えてください!」
みゆ「警告。第一陣、バーニングラビットの先頭集団が、間もなく有効射程内に到達します」
その瞬間、頭上の見張り台から、声を枯らした決定的な叫び声が響き渡った。
「魔物の大群、完全にこちらを捕捉! 接近してきます!」
「第一陣到達まで──残り、三分!」
カルデア村の存亡をかけた防衛戦。
その、あまりにも過酷な戦いの火蓋が、ついに切られようとしていた──。
こうして──
魔物活性化の不気味な異常は、ついに村そのものを脅かす最悪の事態へと発展した。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?) は、
押し寄せるかつてない大群を前に、神崎家もついに本格的な迎撃へと動き出す。
しかし、みゆが感じ取った「山の奥の強い圧力」の正体は、まだ誰も知る由がなかった。
津波のように押し寄せる魔物の大群を、容赦なく一網打尽。
王都Bランクの意地が激しく空回りする大乱戦の最中、全力の応援団を結成する亮のズレまくったダメさが今回も大炸裂!?
防衛戦を制し次なる舞台は聖火山へ、だが歓喜に沸く村の闇から不気味な視線がじっと息を潜めている。
次回、第185話 え、パパが勇者!? 魔物の猛攻を規格外の火力で迎え撃つ防衛戦の裏でまさかの応援団結成!?
暗躍する怪しい影の正体とは、不穏な火山調査の幕が静かに上がる――!




