第178話 え、パパが勇者!? 天を衝く巨大な聖火山フェルナード!村人たちの暗い表情に調査隊も息を呑む緊迫のカルデア村!?
統率されたフレイムウルフの襲撃を退け、調査隊はさらに南への道を突き進んでいた。
ごつごつとした赤茶けた岩場をいくつか越えたその時、先頭を進む馬車からラウルが前方を指差した。
ラウル「おい、みんな! 見えてきたぞ!」
亮「おお! ついに到着か!」
ラウルの言葉に、一行の視線が一斉に前方へと集まる。
陽炎の立つ地平線の先に見えてきたのは、小さな村だった。
だが、何よりもまず全員の目を奪ったのは、その集落のすぐ背後に圧倒的な存在感でそびえ立つ巨大な山だった。
聖火山フェルナード──。
天を衝くかと思うほどに巨大な山は、遠くから見ても存在感を放っている。
その山頂付近からは、まるで大地の息吹のように、白い薄煙がゆらゆらと空へ向かって昇っていた。
周囲に広がるのは、乾いた赤茶けた大地と、所々に点在する黒い溶岩原。
そして、その火山灰を多く含んだ独特な土壌を利用して作られた畑。
王都周辺や交易都市フレイアスで見てきた緑豊かな景色とは、まるで違う異界の光景がそこには広がっていた。
あんな「すごい、圧倒される景色ですね……」
みゆ「興味深いです。土壌の成分データが、これまでの地域と完全に違います。独自の生態系が構築されている可能性が高いです」
ベアトリス「本当に来たのですわね! 素晴らしい眺めですわ!」
セシル「わぁ!資料の文字で見るのと、実際に自分の目で見るのとでは全然違いますね!」
エドガー「カリカリカリ……。聖火山フェルナードの視認、および周辺の特異な地形を記録」
エドガーは揺れる馬車の中でも、相変わらずの手際で手帳にペンを走らせている。
ラウル「カルデアは、大昔からあの山と共に生きてきた村だからな」
ディオン「……ああ。火山の過酷な環境から恩恵も受けるが、同時に常に噴火の危険とも隣り合わせだ」
シェリル「だからこそ、独自の文化や信仰が色濃く残っているんですよ」
亮「へぇー、なるほどなぁ」
あんな「パパ、せっかくの真面目な解説なんですから、ちゃんと話を聞いてよ」
亮「大丈夫だよー! ちゃんと右の耳から左の耳へスルーしてるから!」
みゆ「筒抜け。お姉ちゃん、パパの記憶容量はすでに美味しいご飯のデータで満杯のようです。非常に怪しいです」
ベアトリス「大丈夫ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
そんな賑やかな会話を交わしながら、調査隊の馬車はゆっくりと村の境界へと近付いていく。
すると、村の入口に設置された見張り台から、村人がこちらへ向かって大声を上げた。
村人A「おーい! 調査隊だ! 王都からの調査隊が来たぞ!」
村人B「みんな、本当に来てくれたぞ!」
その声を合図に、村の中が少しだけ慌ただしく活気づく。
ルークは一行の先頭に立って村の広場へと進み出た。
そこには、一行を出迎えるために一人の年配の男性が待ち構えていた。
南方特有の強い日差しに焼けた褐色の肌。
長年の労働で鍛え上げられた、年齢を感じさせないがっしりとした体形。
彼こそが、この地を束ねるカルデア村の村長だった。
トーマス「……ようこそカルデア村へ。わしが村長のトーマスですじゃ」
ルーク「王都より参りました。王国騎士団所属、調査隊の隊長を務めますルークです」
トーマス「おお、これはご丁寧な挨拶、いたみいりますじゃ」
ラウル「よう、村長! 約束通り、王都の凄い偉い人たちを連れてきてやったぜ!」
知った仲であるラウルの言葉に、トーマスは深く厳かに頷いた。
トーマス「うむ、ラウルたちも遠路はるばる感謝するじゃ」
ルーク「我々も、報告された南方の異変の状況を直接確認するために参りました。ぜひ詳しくお話を伺いたい」
トーマス「かたじけない。ぜひ、お願いしますじゃ」
周囲には、次々と家々から出てきた多くの村人たちが集まり、遠巻きに調査隊の様子を窺っていた。
王宮の騎士や魔術師、高ランク冒険者に対する歓迎と期待の空気はある。
だが、その表情には、どこか暗い影があり、妙に元気がないように見えた。
ルークは、即座にその空気の重さに気付いたようだった。
トーマス「ふぅ……。本来ならば、王都からの客人をもっと盛大に、宴でも開いて迎えたいところなのじゃがな」
ルーク「いえ、我々は調査のために来ています。そのような気遣いはご無用です」
トーマスは、背後にそびえる聖火山フェルナードの山頂を仰ぎ見た。
トーマス「……今年は、少し山の様子がおかしくてな。これまでにない不気味な鳴動が続いているのじゃ」
ルーク「……」
トーマス「まあ、その深刻な話は後にしましょう。まずは長旅で疲れた体をゆっくり休めてくれじゃ。宿の用意はできておりますでの」
村長はそれ以上、詳しいことは語らなかった。
だが、その言葉の重みを感じ取ったルークやオスカー、そして案内人であるラウルやディオンたちは、一様に表情を厳しく引き締めていた。
──しかし、そんな重苦しい空気を一瞬で霧のように吹き飛ばしたのが、我らが神崎家のパパだった。
亮「よーし! 到着したことだし、まずはこの土地の美味しい飯だ! お腹ペコペコだよ!」
あんな「パパっ!? 先に村長さんへのご挨拶が先です!」
みゆ「指摘。パパの行動優先順位のデータが完全にバグを起こしています」
ベアトリス「ですが、お腹が空いては戦えませんわ! いつも通りの頼もしいですわ!」
ラウル「ガハハハ! 亮さんは相変わらずだな! 緊張感って言葉を知らねぇ!」
張り詰めていた空気が亮の一言で一気に弛み、周囲の冒険者たちからもドッと笑い声が漏れた。
トーマス村長も、呆気に取られたように目を丸くした後、フッと表情を和らげた。
トーマス「……ほっほ、なんとも元気な人じゃな」
亮「あはは、よく言われます!」
あんな「すみません村長さん、うちのパパは元気だけが取り柄なもので……」
みゆ「補足。データ上はただの天然です」
ベアトリス「そんな飾らないところが素晴らしいのですわ!」
こうして──
特級調査隊は、荒々しい火山の麓に佇むカルデア村へと無事に到着した。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?) は、
新たな土地、新たな出会い、
そして村を包む小さな違和感と共に、
南方での本格的な調査が、
いよいよ幕を開けるのだった。
例年以上の異質な熱気と、軍隊のように統率された魔物たちの出現!
それは、古くから伝わる「山の神」が激怒している天罰の予兆なのか……。
村人たちが夜も眠れぬほどの不安に震える緊迫の火山信仰の村。
神聖な石碑を前に、ちょっと触ってみてもいい?
と手を伸ばすパパの空気の読めなさと、もっふるたちの静止が今回も大炸裂!
次回、第179話 え、パパが勇者!? 山の神がお怒り!? 異質な熱気と山の神の天罰に怯える火山信仰の村の伝承ー!?
不穏な伝承が現実味を帯びる中、世界を救う(?)家族の歩みは止まらない――!




