第168話 え、パパが勇者!? 国家規模の調査隊が結成されて超緊張感⁉なのに豪華調査隊はツッコミだらけー!?
第三部 神炎編
〜いざ南国へ! 聖火山の灼熱すら氷漬けにする規格外の家族旅行!?~
ここからいよいよ
第二十一章、そして第三部の幕が上がります!
舞台は一気に南国へ。
王都を離れた神崎家の前に広がるのは、灼けるような陽光、見たこともない文化、そして不穏な熱気。
今回の旅は、これまでとは桁違いです。
騎士団、魔術師団、王立記録院、そして凄腕Aランク冒険者まで巻き込んだ、国家規模の調査隊が正式に結成。
とはいえ、そんな重苦しい緊張感など、我らがパパには一切関係ありません!
脳内の九割を幻の南国米のシミュレーションに割き、残り一割で周囲の空気を完全に無視するパパ。
そしてその思考を秒速で読み取り、的確すぎるツッコミを入れる娘たち。
もっふるは相変わらず絶妙なタイミングで鳴き、
神崎家の温かくて賑やかな空気は、南国でも健在です。
さらに今回は、
神崎家と因縁深い《紅蓮の輪》の面々、そして合流早々にパパの存在感を跡形もなく消し飛ばす(?)
Aランクパーティ流星など、ツッコミどころ満載のキャラクターたちが大暴れ。
世界の危機を前に大混乱する国家の重鎮たちを余所に、神崎家は今日も元気に、そして自由に、幻の南国米を求めて突き進みます。
果たして亮は、
念願の“美味しい白米”に無事たどり着けるのか――!
笑いあり、家族の絆あり、
そして安定の勘違いとやらかし満載でお届けする南征編。
賑やかさが一気に跳ね上がる第三部・第二十一章。
どうぞ最後までお楽しみください!
第168話 え、パパが勇者!? 国家規模の調査隊が結成されて超緊張感⁉なのに豪華調査隊はツッコミだらけー!?
亮「南に出発だー」
王都南門。
朝の空気がまだ少し冷たさを残す中、巨大な石造りの門の前には、異様な熱気を含んだ一団が集まっていた。
美しく整えられた馬車が数台並び、次々と重厚な荷物が積み込まれていく。
周囲では甲冑を纏った騎士たちが鋭い視線で最終確認を行っており、まさに国家任務にふさわしい緊張感が漂っていた。
そんな張り詰めた空気を一瞬で壊す声が響き渡る。
亮「米だーーーっ!!」
あんな「出発前から心配しかない……」
みゆ「分析。驚くには値しません。周囲の重々しい空気を一瞬で変える、これが通常運転のパパです」
ベアトリス「この気合、素晴らしいですわ!わたくしも美味しいお肉とお米が今からとっても楽しみですわ!」
もっふる「ピィー♪」
セリナ「ハァ!? な、なんなのよあの一家は!なんでただのFランク風情が、この国家規模の調査隊で一番偉そうに仕切ってるわけ!?」
リュシア「相変わらず理解に苦しむ挙動ね。Fランクの分際なのだから、大人しく馬車の隅にでも引っ込んでいればいいものを」
ミレイア「元気な号令しか脳がないのよねー」
亮「おー、紅蓮の花さんたちじゃないですか!お久しぶりですね、今回一緒なんですか?」
セリナ「だから、輪!《紅蓮の輪》よ!! いい加減に覚えなさいよね!それに、言っておくけど私たちはあれから依頼をこなして、ついにBランクに上がったのよ!ビー・ランク!あなたたちみたいな万年Fランクとは、もう冒険者としての格が違うのよ!」
ガルド「おいセリナ、それくらいにしておけって……」
レオン「はぁ……。まだ王都の門もくぐっていないっていうのに、俺はもう出発前から胃が痛いよ……」
レイン「あんなさん!ご無沙汰しております。今回はご一緒できて光栄です。よろしくお願いいたします!」
リリナ「皆、皆さん! 足手まといにならないよう頑張りますので、よろしくお願いしふぇっ!?」
あんな「あ、リリナさん大丈夫ですか!?」
リリナは挨拶をしようとした瞬間、何もない平地で自分の足がもつれて転びそうになり、あんなが慌ててその身体を支えた。
アルト「みゆ様! またこうしてご一緒できて、僕は本当に光栄です!以前みゆ様に教えていただいた理論、今も毎日必死に勉強しています!」
みゆ「肯定。アルトさんの学習意欲の高さは、データ的にも評価に値します。道中、進捗を確認します」
オスカー「おい、お前たち。我々は遊びに行くのではないぞ。亮、貴殿も少しは緊張感というものを持ったらどうだ」
王立魔術師団のオスカーが、目を厳しく光らせて一喝した。
だが、そんな中で王都騎士団のルークが一段高い馬車のステップに立ち、全員を見渡す。
ルーク「全員、静粛に。今回、この合同調査隊の統括を任されたルーク、そして統括補佐にオスカーである。組織の垣根を越えた部隊だ、よろしく頼むぞ」
オスカー「よろしく」
ルーク「では最終確認を行う。今回の遠征は移動距離も長く、現地での調査も長期になる可能性が高い。各自、気を引き締めろ」
騎士団・魔術師団「はっ!」
あんな「ほらパパ、怒られた」
みゆ「当然です」
ベアトリス「ルークさん、統括としての威厳があってとってもカッコイイですわ!」
亮「え? 俺、怒られたの? ……というかルークさん、なんだかすごく偉い人だったんだね」
あんな「前に上級騎士とは聞いていたけど。ただの隊長どころか、騎士団も魔術師団も全部ひっくるめた統括責任者じゃない!凄すぎるでしょ!」
みゆ「今までが失礼すぎました。国家の最高重要人物のひとりとして、しかるべき敬意をもって接しないといけません」
王立記録院の二人は、すでに記録を開始していた。
エドガー「出発時点から全て記録対象だ……」
セシル「ええっ!? これ本当に全部書くんですか? 」
エドガー「当然だ。王立記録院長コンラート様からの直命だからな。一言半句たりとも聞き漏らすな」
セシル「でも、亮さんの『米だー』っていう絶叫まで書くんですか? 流石にそれは国家の歴史に刻む重要事項とは違うと思いますけど」
エドガー「重要だ」
ガルド「おいおい。騎士団に魔術師団に記録院まで、本当にこのとんでもねぇ規模で行くのかよ」
レオン「お偉いさんたちが真面目な顔をしてる横で、亮さんが笑ってる……。ああ、本当に胃が痛い……」
セリナ「ふん、騎士団も魔術師団も大げさなのよ。ただの自然調査でしょうに」
リュシア「提出されたデータを見る限り、明らかに過剰戦力ね。無駄というか、非効率の極みだわ」
ミレイア「でもでも、これだけ大勢で行くのって、なんだか賑やかで楽しそうじゃないですか?」
今回の王国特級調査隊の布陣は、まさに破格の一言だった。
王都騎士団からはルーク、カイル、レイン、リリナ。
王立魔術師団からはオスカー、ノエル、アルト。
王立記録院からはエドガーとセシル。
そしてBランク冒険者パーティ紅蓮の輪と神崎家。
さらに交易都市フレイアスではAランクパーティ流星との合流も予定されている。
王国が編成した大規模調査隊。
その顔ぶれを見れば、今回の案件がただ事ではないことが分かった。
誰もがその規模に圧倒される中、中央に立つルークが静かに右手を挙げた。
ルーク 「静かに。これより、本隊の出発を宣言する」
その声に、周囲がピタリと静まり返る。
ルーク「今回の調査は、南方火山地帯フェルナードにおける、原因不明の魔力異常および環境変化の調査を目的とする」
オスカー「現地の危険度は完全に未知数だ。場合によっては、調査を中断して即座に撤退の判断を下すこともある。各自、自分の命を最優先にし、油断なく気を引き締めろ」
その言葉に、ほんの少しだけ空気が重くなる。
オスカーの現実的な警告に、調査隊の面々の間に少しだけ重苦しい緊張感が走る。
だが、その重さを一瞬で粉砕する男がいた。
亮 「みんなそんなに怖い顔をしなくても大丈夫だよ」
全員 「……」
亮 「南に行けば、きっとお米はあるから」
あんな&みゆ 「ありません」
ルーク 「ないな」
オスカー 「ない」
ノエル 「ないわね」
エドガー「記録上も存在しない」
セシル「即却下です」
亮「えぇ……」
ベアトリス「ありませんの?」
もっふる「ピィー!」
そして、ルークが手を上げる。
ルーク 「出発!」
合図とともに、重厚な馬車が一斉に動き出す。
巨大な南門がギギギと開き、外の世界からの眩しい朝の光が差し込んできた。
どこまでも真っ直ぐに伸びる南への道が、静かにその姿を現す。
あんな「ほらパパ、行くよ」
亮「よし! それじゃあ気を取り直して、南だー!お米だー!」
みゆ「何度も言いますが、国家任務の調査です」
亮「いやいや、楽しいスローライフ旅行だー!」
あんな「だから、危険地帯の調査だってば!」
もっふる「ピィー♪」
馬車が門をくぐり抜ける中、神崎家の乗る馬車からはいつまでも賑やかな声が響いていた。
ルーク「これは思った以上に賑やかな道中になりそうだな 」
カイルは前方を見ながら苦笑した。
カイル「神崎家が加わっているだけでも、退屈する暇は一切なさそうですからね 」
ルーク 「まあいい。これだけの信頼できる人材が集まったんだ。きっと良い調査になる」
こうして――
王都を発った大規模調査隊は
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
国家規模の調査隊の中心で、今日も変わらず賑やかに南方へ進んでいくのだった。
世界の歯車を狂わせる未曾有の危機に、国家の中枢を担う重鎮たちが集結!
あまりにも異常すぎる魔力の潮流を前に、王国が総力を挙げたガチの国家案件として極秘調査隊を派遣する事態に。
そんな王城全体がかつてない大混乱に陥る最高レベルの緊張感のなか、当のパパは完全に南国の白米のことで脳内が全振りしていて――!
次回、第169話 え、パパが勇者!? 脳内全振り(?)国家の重鎮たちが王城会議で世界の危機に大混乱!?
国家の命運を賭けたシリアス展開を極限の米欲で完全スルー、神崎家流のマイペースすぎる南国遠征が幕を開ける!




