第134話 え、パパが勇者!? 王都帰還で親衛隊が大暴走の酸欠パニック!? 国家の重鎮を「飲み会」に強制勧誘して、明日の一家全滅フラグが立ちましたー!?
「お帰りなさーい!」
お店の扉を開けた瞬間、地を揺らすような歓迎の声が神崎家を包み込んだ。
あんな「ええっ、何事!?」
みゆ「騒音レベル。聴覚保護を推奨します 」
亮「うわ、びっくりしたぁ。みんな、そんなに待っててくれたのか 」
もっふる「ピィー!」
目を白黒させる一家の横で、案内役のルークがニカッと笑う。
ルーク「亮さんたちが帰ってくると聞いてな。有志たちが歓迎会をしたいと言い出したんだ。これでもかなり人数を絞ったんだぞ」
「あんなちゃーん! こっちこっち!」
「みゆ様ー! お姿を拝見できて光栄です!」
「俺たちの太陽だ―!王都がようやく明るくなったぞー! 」
あんなとみゆ、それぞれの親衛隊が早くも熱烈なコールを送っている。
さらに、見慣れた顔ぶれも揃っていた。
王都のC級パーティ《紅蓮の輪》の面々だ。
ガルド「お帰り。無事で何よりだ」
セリナ「あんな、今度こそ勝つんだからね」
リュシア「みゆ、私の知性の前にひれ伏せさせてあげる。新魔法の理論値で叩きのめしてあげるんだから」
ミレイア「……別に、歓迎なんてしてないんだから。ただ、席が空いてたから座ってるだけよ 」
レオン「まあまあ、今日は歓迎会なんだから楽しくやろうよ」
女性陣の相変わらずの剣幕に、亮がのんびりと応じる。
亮「《紅蓮の輪》さん、お久しぶりです」
セリナ「ちょっと! 『輪』じゃなくて『花』よ! 私たちは《紅蓮の花》なの! 」
ガルド「いや、セリナ。亮さんの方が合ってるぞ、うちは『輪』だ」
自身のパーティ名を間違えたセリナは、顔を真っ赤にして叫んだ。
セリナ「あなたがいつも間違えるから、こっちまで釣られたじゃない!どうしてくれるのよ! 」
あんな「いや、どっちでもいいけど落ち着いてよ!」
みゆ「……混乱。セリナの言語能力の低下を確認」
亮「あはは、じゃあ『花』でいいですよ。可愛いし 」
セリナ「だから違うわよ!」
絶妙に噛み合わないやり取りに、酒場は一気に爆笑に包まれた。
そこには《蒼流の連》のブロスやエリオ、リーナ、さらには馴染みの商人や街の人々まで集まっている。
ルーク「今日は神崎家の王都帰還祝いだー! みんな、盛大に飲んでくれ!」
一同「おーーー!」
亮「なんかすごい人数だな。ベアトリス、圧倒されるな」
ベアトリス「皆様、人気者ですわ!」
あんな「人気者……なのかなぁ。これ」
みゆ「……否定。パパのこれまでのやらかしが、因果律として集結した結果です」
もっふる「ピィー!」
宴が始まれば、亮は出された料理を幸せそうに頬張る。
亮「美味いなー! 王都の料理はやっぱり絶品だ」
冒険者A「だろ、亮さん! 腕利きのシェフを呼んだんだからな」
あんな「相変わらずの適応力ね、パパは……」
みゆ「パパの固有スキル『環境同化』。驚異的です」
ベアトリス「本当に美味しいですわ!」
冒険者B「ベアトリスちゃん、これも食べて! 栄養満点だよ」
ベアトリス「ありがとうですわ!いただきますわ! 」
もっふる「ピィー♪」
賑やかな会場のあちこちで交流の輪が広がる。
あんなは「手合わせをお願いします!」
と騎士団員たちに囲まれ、
ルークが「飲み過ぎだぞ、お前たち」とたしなめる事態に。
一方のみゆは、魔術師団員たちから
「指導をお願いします!」と熱視線を送られていた。
みゆ「拒否します。データの無駄です」
魔術師団員「その冷静な言い方……しびれるー!」
もはや何でもありの状態だ。
その時、酒場の扉が勢いよく開いた。
「こら、お前たち。いい加減にしろ!」
「……品位を疑います」
現れたのは、騎士団長ライオネルと魔術師団長マルティナだった。
その圧倒的な威圧感に、浮かれていた団員たちが一瞬で静まり返る。
騎士団員「ラ、ライオネル様!?」
魔術師団員「マルティナ様!」
慌てて居住まいを正す団員たちに、団長たちが神崎家へ向かって頭を下げる。
ライオネル「あんな殿、すまない。うちの部下が迷惑をかけた」
マルティナ「みゆ殿も。礼儀を失した部下をお許しください」
亮「おー、ライオネルさんにマルティナさん! 今日は無礼講だよー。仕事なんて忘れて、 こっちに来て一緒に飲みましょうよー。ほら、席空けるから 」
あんな「ちょっとパパ! 国家の重鎮を捕まえて、なんて誘い方してるのよ! 失礼でしょ!」
みゆ「パパの『無礼講』の定義は、国家レベルの秩序崩壊を招く危険性があります。不敬罪指数が急上昇中」
ライオネル「いや、長居をするつもりはない。顔を出しに来ただけだ」
マルティナ「私もです。公務がありますので、すぐに失礼しますよ」
亮「えー、そんなつれないこと言わないでー。楽しいですよ」
あんな「ちょっとパパ、失礼でしょ! お二人はお忙しい合間を縫って来てくださったんだから」
みゆ「パパ、礼節の欠如。データ修正が必要です」
ベアトリス「ライオネル様! ぜひわたくしとお相手願いたいですわ!」
あんな「ベアトリスまで何を言い出すのー!」
盛り上がる冒険者たちを、ライオネルは楽しげに見渡し、不敵に微笑んだ。
ライオネル「……相手か。いいだろう。明日、騎士団を訪ねてくるがいい。あんな殿とみゆ殿も、な?」
マルティナ「……そうだな。明日来い」
逃げ場を塞ぐような団長たちの言葉に、亮は満足げにしている。
ライオネル「亮、頼んだぞ。……しっかり連れてこい」
亮「任せてください! 明日は一家総出でお邪魔しますね」
ライオネル「では、失礼する」
マルティナ「失礼しますよ」
嵐のように去っていく二人を見送り、亮は寂しそうに手を振った。
亮「あーあ、帰っちゃった。もっと飲めばよかったのに」
あんな「パパー! 勝手に約束しないでよ!あの二人、目が本気だったじゃない! 」
みゆ「……パパ、完全な酔っ払い。思考能力の低下を確認」
ベアトリス「明日は騎士団! 楽しみで行きますわー!」
亮「いいじゃん。面白そうだしさ」
あんな「パパだね」
みゆ「いつもの即決。そして後の祭り 」
もっふる「ピィー!」
夜はまだ続く。
騒がしく、賑やかに。
だが、あの瞳がこの宴会にも紛れ込まれているのを知る由もなかった。
こうして――
国家の重鎮まで巻き込んだ王都の帰還祝いは、翌日の波乱を予感させながら、宴の活気の中に溶けていく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
酒場の陽気な歌声と、静かに忍び寄る「明日への戦々恐々」を乗せて、夜の深淵へと更けていくのだった。
王都の朝に響く絶叫!
ライオネル団長との約束を忘れたパパが、街角で「怪しすぎる顔の近い男」に捕まる事案が発生!?
商人のゼーマンから漂うのは、胡散臭さと強烈な営業の匂い!
「いくらかかってもいい」
パパが放ったその一言が、神崎家の全財産を飲み込む爆買い破産の引き金になる?
次回、第135話 え、パパが勇者!? 王都の怪しい商人にロックオンされて絶体絶命ー!? 距離感ゼロの猛烈営業にパパが陥落して、神崎家が破産(買い占め)の危機ですかー!?
お米の希望と引き換えに、家計は火の車!?
パパの財布の紐が、今かつてない崩壊の危機に瀕していますー!




