第133話 え、パパが勇者!? 王宮重鎮が緊急集結で絶体絶命ー!? 世界消滅の謎を前にパパが思考停止で大混乱ー!?
王都は、以前と変わらず活気に満ちていた 。
高い城壁、整えられた街路、そして絶え間ない人々の楽しげな声。
見慣れたはずの景色だが、どこかだけ違って見えるのは、背負っている謎が重いせいだろうか。
街に入ってからの流れは驚くほど早かった。
門を抜け、そのまま中心部へ。
ルークは普段と変わらない様子で先導している。
その足取りには一切の迷いも寄り道もなかった。
そのまま案内されたのは、国の心臓部たる王宮だった。
石造りの建物は静まり返り、余計な音をすべて吸い込むかのようだ。
廊下を進むたびに人の気配は減り、扉の前でルークが足を止めた。
ルーク「こちらです」
軽くノックをし、返事を待たずに扉が開かれる。
外の騒ぎが嘘のような静寂に包まれた広々とした執務室。
そこに集まっていたのは、この国の中枢を担う重鎮たちだった。
王国騎士団長ライオネルをはじめ、 王都騎士団長アルベルト、王立魔術師団長マルティナ、王立記録院長コンラート、ギルドマスターのガリオス。
そして中央には、第一皇女レオニアが静かに座していた。
全員の鋭い視線が、一斉に亮たちへ向けられる。
あんなが一歩前に出て、みゆが隣に並び、ベアトリスは騎士らしく少しだけ胸を張った。
レオニア「久しいな、みんな」
柔らかな声だが、場の空気が軽くなることはない。
あんな「皇女様まで……」
レオニア「当たり前だ。今回の件は軽く見ていない。改めて説明願えるか」
みゆ「わかりました。事実関係のみを簡潔に報告します」
みゆがいつもの冷静な口調で、ベーゼで起きた「街の消失」と「人々の忘却」について淡々と説明を始める。
居並ぶ重鎮たちは、最後まで一言も遮らずにその言葉に耳を傾けていた。
話し終えた後、部屋には重い沈黙が降りた。
レオニア「報告書通りだな。コンラート、記録院としての見解は? 」
コンラート「は。過去の文献を精査したところ、類似案件が見つかりました」
ライオネル「類似案件だと?」
コンラート「はい。古い文献に『消失』の記録があります。ですが記述が不完全で……意図的に欠落させられている可能性もあります」
あんな「意図的に? でも、それって今回と同じことが過去にも起きてるってことですよね? 」
マルティナ「……魔術的観点から言えば、空間そのものが『無』に置き換わるなど、通常の術式では不可能です。神の領域か、あるいは世界の理そのものが変質しているとしか……」
コンラート「記述が不鮮明なため『類似』としか表現できません。ただ……その記録は、三大ダンジョンのひとつが発見された年と重なっているのです」
ガリオス「三大ダンジョン?では今回の新ダンジョンと関わりがあると……?」
議論は白熱し、重鎮たちの間で険しい言葉が飛び交う。
レオニア「……静まれ。今回の件は謎が多すぎる。コンラート!」
コンラート「は!まだ現状では正確なことは申し上げられません。……引き続き調査を続けます」
レオニアは深く頷き、次々と各師団長へ指示を飛ばした。
警戒、解析、情報収集。
王宮が組織として動き出す。
レオニア「くれぐれも無理はするな。単独での行動を禁止します。先ずは情報の収集に徹してくれ。そして、この件に関して箝口令を敷く。よいな」
一同「は!」
レオニア「神崎家の皆さん、ご苦労だった。……ただ、ひとつ頼みがある」
亮「何ですか?」
レオニア「しばらく、王都に留まってほしい 」
亮「……え?」
家族一同、言葉を失う。
レオニアが小さく息をつき、会議は解散となった。
張り詰めていた空気が緩み、椅子が動く音が響く。
結局、正体は分からないまま。
それでも進む方向だけが決まった。
王宮からの帰り道。
亮「……(ようやく終わった。お腹空いたな……)」
あんな「……はぁ。さすがに皇女様自らの依頼となると、断る隙もなかったわね」
みゆ「パパ、先ほどから思考停止によるフリーズ状態が続いています。空腹によるエネルギー不足と推測」
亮「あ、バレた? いや、レオニア様の話が難しくてさ。それよりルーク、帰りは俺たちだけで大丈夫だぞ」
ルーク「言ったではありませんか、王都で一番の酒場を予約したと」
カイル「ぜひ招待させてください!」
亮「お! いいねー。じゃあ、そこ行こう!」
あんな「……すっかりいつものパパに戻っちゃった。この空気の切り替え、私にも分けてほしいな」
みゆ「パパのメンタル構造は、鋼鉄を上回る弾力性を持っています。分析不能」
ベアトリス「さすがですわ! 嵐の中でも揺るがぬ大樹のような安心感ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
あんな「でも……結局、王都でも何もわからなかったね」
みゆ「謎だらけです」
亮「大丈夫だよー」
もっふる「ピィー♪」
しばらく賑やかに歩いて行くと、ルークが足を止めた。
ルーク「ここです」
そこは、中心から少し離れた場所にある、趣のある店構えだった。
店の看板が風に揺れ、音を立てている。
一歩足を踏み入れた瞬間、あんなとみゆは背筋に、会議室の緊張感とはまた違う、違和感を覚えた。
こうして――
国家の中枢を揺るがす重大な局面を前にしても、 結局は『美味しいご飯』に落ち着いてしまうのが神崎家の日常。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
王都の隠れた名店での、賑やかな食事会へと続いていくのだった。
王都帰還を祝う宴が、一瞬で国家レベルのカオスへ!?
絶叫と熱狂が渦巻く中、パパが放った禁断の「一言」が騎士団を凍り付かせる!?
愛娘たちの親衛隊が大暴走し、空気すら薄くなるほどの熱気で酒場は酸欠状態!
そんな中、酔いも手伝い無双モードのパパは、居合わせた国家重鎮をまさかの飲み会へ強制勧誘!?
騎士団長と魔術師団長の目がマジになった瞬間、神崎家の平和は木っ端微塵に吹き飛んだ――!
次回、第134話 え、パパが勇者!? 王都帰還で親衛隊が大暴走の酸欠パニック!? 国家の重鎮を「飲み会」に強制勧誘して、明日の一家全滅フラグが立ちましたー!?
パパの適当な返事が、明日への「地獄の招待状」に!? 王都の夜を揺るがすやらかし、今度は逃げ場なしですー!




