第123話 え、パパが勇者!? 異次元不法侵入した結果、幽霊扱いになっちゃったー!? 触れないおじさん、届かない声……最強一家、まさかの完全無視(スルー)パニックー!?
第十五章、始まります!
「俺、もしかして幽霊になっちゃった……?」
消えた人々を追って、理屈無視の力技で異次元へ不法侵入したパパ。
しかし、辿り着いた先で待っていたのは、誰にも触れられず、声も届かない「完全無視」という、最強一家にとって最大の試練(?)だった!?
灰色の空の下、消えゆく世界の輪郭。 刻一刻と迫る消滅のカウントダウンに、娘たちが導き出した「唯一の希望」とは――。
そして、ついに姿を現した「世界を消去する者たち」に対し、パパの静かな怒りが再び爆発します!
「家族の時間を邪魔する記録なら、俺が全部書き換えてやる」
物理法則も、世界の定義も、パパの「父としての意地」の前ではただの障害物。
娘たちとの完璧な同期で、絶望的な消滅の連鎖を力技でねじ伏せます。
果たして、奪われた「存在」を取り戻し、愛する港町に再び朝を呼ぶことができるのか。
そして、戦い終わった後のパパが真っ先に求める「ご褒美」とは……?
シリアスと無自覚チートが最高潮に交差する、驚天動地の救出劇。
神崎家の絆が奇跡を起こす(かもしれない)
新章も、ぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
静かだった。
いや――静かすぎた。
亮が無理やり抉じ開けた空間の裂け目を通り、その「向こう側」へ足を踏み入れた瞬間、全身の産毛が逆立つような違和感が神崎家を襲った。
見えている。
景色は間違いなく、昨日まで自分たちが過ごしていた港町ベーゼのはずだ。
足元の石畳の並びも、潮風に晒された建物の配置も、見慣れた通りのままだ。
だが――何かが、決定的に違っていた。
亮「……何だ、この世界は。まるで、古びた白黒写真の中に迷い込んだみたいだな」
あんな「そんな風雅な言い方してる場合じゃないよ! 見てよ、これ……街の色が、全部なくなってる!」
あんなが絶叫するのも無理はなかった。
空、海、建物、そして道行く人々に至るまで、全ての色が抜き取られ、濃淡だけの灰色の世界に塗り替えられていたのだ。
鮮やかだったベーゼの青い海も、活気のあった市場の極彩色も、まるで炭を撒き散らしたような灰色へと変貌している。
ベアトリス「どういうことですの? 景色はありますのに、生きている感じが全くいたしませんわ。冷たくて、不気味で……まるで世界そのものが死んでしまったようですわ」
もっふる「ピィ……ピィー……」
いつも元気なもっふるも、毛色まで灰色に沈んだようなこの世界に怯え、亮の足元に丸まって震えている。
亮「まあ、落ち着け。……ほら、あそこに人がいるぞ。普通に歩いてるみたいだし、話を聞いてみよう」
亮が指差した先には、大きな荷物を抱えた男が一人、何事もない顔でこちらへ向かって歩いてきていた。
その足取りは、普通の人間そのものに見える。
あんな「でもあの人、この異常事態に気づいてないのかな!? 普通に歩いてるよ? ……すみませーん! 」
あんなが必死に手を振り、声を張り上げながら男に駆け寄る。
だが、男はピクリとも反応しない。
あんなの声が届いていないどころか、目の前に人間が立っていることすら認識していないかのように、視線を一切動かさず、ただ前だけを見て歩き続ける。
あんな「ちょっと、ねえってば! 街がこんな変なことになってるのに、何でそんなに平然としてられるのよ!」
痺れを切らしたあんなが、男の肩を掴もうと勢いよく手を伸ばした。
その瞬間――。
あんな「……え?」
手応えは、ゼロだった。
確かにそこにあるはずの男の体を、あんなの手は何の抵抗もなく、霧を割くようにすり抜けた。
あんな「……いま、何が起きたの? あたしの手が、おじさんの体を通り抜けたんだけど……!?」
ベアトリス「ですわ。幽霊ですわ、それとも私たちが幽霊ですの?」
みゆ「……いいえ、どちらでもありません。接触情報、および物理的干渉が成立していません。観測する限り、あちら側の存在には『質量』を感じさせるデータが一切伴っていません。輪郭はあるのに、実体が伴っていません」
ベアトリス「どういうことですの?わたくしも試してみますわ! えいっ!」
ベアトリスが全力で別の通行人にタックルをかますが、結果は同じ。
まるで空気の中を泳ぐように、彼女の体は男を突き抜けて反対側へ飛び出した。
みゆ「……緊急事態です。この声が届くなら、何らかのリアクションを」
みゆが静かに、冷静に人々に問いかける。
だが、誰一人として足を止めない。
風の音すら返ってこない完全な一方通行。
あんな「うそでしょ……見えてない、聞こえてない、触れない……。パパ、これってあたしたち、この世界にいないことになってるんじゃないの!?」
亮「三拍子揃っちゃったな。不法侵入した挙句、認識すらされないとはな」
あんな「揃ってていいやつじゃないでしょ! 今、そんな呑気なこと言ってる場合!? ねぇ、助けるとか以前に、これじゃ何にもできないじゃない!」
みゆ「……少なくとも現在、同一の空間座標に存在していながら、私たちの位相はあちらの世界から完全に切り離されています。私たちは『干渉対象外(例外)』として処理されているようです」
その言葉は、みゆらしい論理的な響きを持っていたが、それゆえに絶望的に重かった。
あんな「干渉、できない……? じゃあ、あの子も……!」
通りの向こうから、一人の子供がこちらへ走ってくる。
いつも港でもっふると追いかけっこをして笑っていた、あの少年だ。
あんなが反射的に手を伸ばし、少年の小さな体を抱きとめようとする。
だが、期待は残酷に裏切られた。
あんなの腕は少年の体を虚しく突き抜け、少年は何の違和感も抱かずに、あんなの体を通り過ぎて走り去っていった。
あんな「……っ。なんで、なんでなのよ! こんなにすぐそばにいるのに……!」
亮「……」
亮は黙ってその様子を見ていたが、やがて一歩前に出ると、近くの露店に並ぶ灰色のリンゴのような物体に無造作に手を伸ばした。
やはり、指先は何の感触も得ることなく、リンゴの形をした影をすり抜ける。
亮「だな。確かにこれは、通常の方法じゃ手出しができないレベルでスカスカだ」
みゆ「……確定。現時点での物理的干渉は不可能です。この世界において、私たちは“存在していない”のと同義。いわば、モニター越しに映画を見ている観客と変わりません」
あんな「そんな……どうすんのよ……。必死にパパが入口を開けたのに、ただ見てるだけなんて、そんなの嫌だよ……」
あんなの声が小さくなる。
さっきまでの怒りも勢いも、届かないという現実の前に消えかけていた。
目の前に救うべき人々が、触れられるほど近くに「見えている」のに、その実態は果てしなく遠い。
亮「……面倒なことになってるのは確かだな」
あんな「パパ……」
亮「だが、住民がそこにいるのも確かだ。触れないなら、触れる方法をこれから探せばいい。俺が無理やりこじ開けた入口の先がここなんだ。道は続いてる」
亮は、色が抜け落ちた灰色の空を、いつものようにどこか抜けたような、それでいて揺るぎない眼差しで見上げた。
みゆ「……非論理的な結論ですが、パパの言う通りです。それに、まだ完全には消失していません。この虚構の世界を維持し、人々の存在を薄めている『芯』のようなものが、必ずこの街のどこかにあるはずです」
亮「よし、行くぞ。ここに立ち止まってても、誰も助けれないからな」
亮の迷いのない一歩が、石畳に乾いた音を立てて踏み出される。
触れられず、届かず、存在すら認識されない、絶対的な拒絶に満ちた灰色の世界。
それでも、神崎家は歩みを止めない。
あんな「……いつものパパだね。絶対にみんなを助ける」
みゆ「定番です」
ベアトリス「わたくしも参りますわ! この見えない壁、必ず叩き割って見せますわ!」
もっふる「ピィー!」
こうして―
触れられず、届かず、存在すら許されない世界で、家族は“何もできない”という現実を突きつけられる。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
干渉できない絶対ルールと、崩れ始める世界の兆しが明らかになる――!?
「見るだけ」なんて、パパの辞書には載っていない!
崩壊する世界を全否定する、神崎家の絶対反撃!
目の前で透け、消えゆく人々。
位相の壁に拒まれ、最強の家族をもってしても「干渉不可」という残酷な現実。
リソースが底を突き、指数関数的に加速する世界の終わりを前に、理論の天才・みゆですら絶望の淵に立たされる。
しかし、人々の命を「データ」や「消え物」として扱う理不尽に対し、パパの中に眠る「静かなる怒り」が臨界点を突破した!
「触れないなら、触れるように書き換えるだけだ」——不可能を「やらかす」準備は、整った!
次回、第124話 え、パパが勇者!? 消えゆく輪郭と、みゆが導き出した「唯一の希望」!? 灰色の空の下、家族が繋ぐ反撃へのラストピースー!?
みゆが見つけた唯一の希望、それはパパという名の「究極のイレギュラー」!
タイムリミットが迫る中、パパが放つ一撃は、世界の理を再び粉砕できるのか!?




