第122話 え、パパが勇者!? 空間を「どけ」の一言で物理破壊!? 座標も理屈も無視して異次元へ不法侵入しちゃう、パパの暴走(チート)に娘たちもパニックー!?
静かだった。 さっきまで確かに“何か”がいた気配は、もう露ほども残っていない。
だが、消えたわけじゃない。
ただ、見えなくなっただけだ。
亮は足を止めた。
何もなかったかのように静まり返った石畳の上、一点を見つめて。
亮「……ここだ」
あんな「……ここ、だよね。さっきと同じ嫌な感じがする……」
みゆ「肯定。先ほどの空間密度と同様の異常値を検出。ここが『入口』である確率は、99.8%です」
ベアトリス「間違いありませんわ」
三人も同じ場所を見ている。
感じている。
耳の奥に残る、あの言葉が離れない。
――観測
――回収
――例外
そこに「ある」のに、触れられない。
亮「……」
亮は何も言わず、ただその空間を見つめた。
あんな「……同じ場所に立ってるのに。どうして」
ベアトリス「……届きませんわ。まるで見えない壁に拒まれているようですわ」
みゆ「……ズレてる。物理的な距離ではなく、次元の位相そのもの」
その一言に、亮の視線がわずかに動く。
足元の石畳。
見慣れた商店の軒先。
何も変わらない、いつもの港町ベーゼの風景。
――なのに、そこに“いる”。
亮はゆっくりと手を伸ばした。
何もない空間へ。
指先が空を切る。
当然、感触は何もない。
だが――亮は、その手を離さない。
あんな「……パパ?」
みゆ「……なにか、あるの?」
亮は答えない。
ただ、“そこにある”という強い前提のもと、虚空に手を置き続ける。
だが、やはり指先は虚しく空気を撫でるだけだった。
亮は一度、手を下ろす。
あんな「……ダメ?」
みゆ「……条件が足りない。さっきあいつらが“出てきたとき”とは、空間の接続状態が違います」
あんな「……確かに、何か違ったよね」
何が違うのかは分からない。
だが、“同じじゃない”。
笑っていた時間。
奪われた日常。
亮「……ふざけるな」
低く呟いた、その瞬間だった。
アイテムボックスの中の流環石が、主の怒りに呼応するように静かに、そして激しく反応した。
空気が、一変する。
あんな「……っ! なに、このプレッシャー! パパ!? 何を……!」
みゆ「空間の再定義が始まっています!」
空間が、さっきよりも強く、激しく歪み始めた。
だが――それでもまだ、境界の向こう側へは届かない。
みゆ「……ダメ。まだ条件が――」
亮「……関係ない」
その一言で、みゆが息を呑む。
亮は“そこ”だけを見ている。
理屈も、魔法の法則も、今の彼には一切関係なかった。
亮は動かない。
逃げない。
視線を逸らさない。
亮「……そこだろ。隠れてないで、道を開けろ」
あんな「え、パパ? 空間に向かって何を言っているの!?」
みゆ「ちょっ――待って!不安定すぎて危ない!」
止まらない。
亮はそのまま、何もない空間へ踏み込んだ。
――その瞬間。
空間そのものが、悲鳴を上げるように軋んだ。
あんな「……え……?」
みゆ「……嘘でしょ?」
亮の足が、中空に“沈んでいる”。
何もないはずの場所に、泥沼に足を踏み入れるかのように、亮の下半身が消えていく。
あんな「ちょ、ちょっと待って!? それ、どういう原理!?」
みゆ「 座標を力技で上書きしてる!」
亮「……」
亮は無言で、さらに体を押し込む。
目に見えない凄まじい抵抗がある。
だが――無視をする。
亮「……どけ」
一喝。
空間が、バキリと音を立てて砕け散るように歪んだ。
そして、世界が、不自然に“ズレた”。
音が消える。
色が反転するように歪む。
今いるはずの景色が二重になり、現実の強度が薄れていく。
あんな「……っ!?」
みゆ「なんで……なんで入れるの!? 物理演算が完全に崩壊してる……!」
ベアトリス「あり得ませんわ。まるで空間そのものを屈服させているようですわ!」
亮は止まらない。
一歩も引かず、境界の裂け目から振り返る。
亮「……来い。取り返すぞ」
一歩、さらに深く、向こう側へと踏み込む。
三人も、覚悟を決めてその異様な歪みへと飛び込んだ。
あんな「……もう、どうにでもなれ!」
みゆ「了解。……もはや未知の領域ですが、パパが道を作った以上、行くしかありません」
ベアトリス「参りますわ!」
もっふる「ピィー!」
境界に触れる。
冷たい、粘つくような抵抗が全身を襲う。
世界に拒まれている。
だが、亮が強引に抉じ開けた「穴」を通って、家族は一斉にその一線を踏み越えた
世界が反転する。
音が戻る。
だが、それは先ほどまでの「音」とは違っていた。
空気が、重い。
重油の中に沈んだかのように、肌にまとわりつく。
そして、あまりにも、静かすぎる。
あんな「……ここは……」
みゆ「……同じなのに……違う……」
亮は振り返った。
元の世界が、向こう側に淡い光の膜となって残っている。
だが、亮は迷わず、前を見た。
そこには、自分たちの知る「日常」とは決定的に何かが違う、静寂の世界が広がっていた。
亮「……行こう」
あんな「……うん!」
みゆ「了解」
ベアトリス「はいですわ!」
もっふる「ピィー!」
迷いのないその一歩が、境界の向こう側の静寂を切り裂いた。
――そして、その空のさらに高く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族を本気で怒らせると、これほどまでに恐ろしく、そして心強いものなのですね。
昨日までそこにあった温かなパンの香りも、人々の賑わいも、すべてが「なかったこと」にされようとしている世界。
理不尽な消失を前に、あの勇者が選んだのは、絶望することではなく、世界の理そのものを力技で踏み潰すという、前代未聞の「不法侵入」でした。
「座標を上書きする」などという神の領域の業を、ただ「家族との日常を取り戻す」という一念だけで成し遂げてしまう。
最強の力を持ちながら、それを誇るためではなく、誰かに奪われた小さな靴の主を、そして愛すべき隣人たちの笑顔を取り戻すために振るう。
その一点の曇りもない怒りと慈愛こそが、凍りついた時間の鎖を断ち切る、最も強く、そして優しい魔法なのかもしれません。
使命感ではなく、純粋な気持ちで……ただ大切な人と明日を迎えるために歩む彼らの姿。
たとえ世界のシステムが彼らを拒もうとも、パパの「どけ」という一喝が、閉ざされた真実への扉をこじ開けていく。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
空間の歪みの向こう側、姿を消した人々が待つ異次元の果てで、あの家族はどんな「驚天動地の救出劇」を見せてくれるのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと軋む空間をなでる。
その微笑みは、嵐の前の静けさを包み込むように優しかった。
こうして――
見えない境界を越えた先で、奪われた人々が確かに存在していることを掴んだ。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
“回収された世界”の中で、真の奪還が始まる――!
【第十四章「消失編」を終えて】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第14章では、神崎家が愛した港町ベーゼから、一瞬にして人々の姿が消えてしまうという衝撃の事態を描きました。
残されたのは、まだ温かい飲み物と、片方だけ転がった小さな靴 。
パパが守りたかった「なんでもない日常」を、得体の知れない「世界のバグ」が容赦なく奪い去ります 。
しかし、そこでパパが選んだのは、絶望ではなく「世界の理に喧嘩を売る」ことでした。
「家族との時間を邪魔するなら、世界の方がどけ」
娘たちが理論で語る「位相の壁」を、パパが座標ごと踏み潰して異次元へ不法侵入するシーンは、まさに神崎家らしい理不尽な強さの極致となりました 。
鏡の中の廃墟のような異次元の世界で、ようやく見えた人々の影 。
女神さえも「恐ろしく、心強い」と評するパパの怒りが、凍りついた時間の鎖を今、断ち切ろうとしています 。
次回、『ぱぱやら!』
新章、怒濤の救出劇へ!
明日朝8時、本編第十五章スタートとなります。
奪われた隣人たちの笑顔を取り戻すため、神崎家の「驚天動地の奪還作戦」がいよいよ始まります!
物理法則を置き去りにしたパパの快進撃、ぜひその目で見届けてください!
亮「……ふざけるな。あの子の靴があんな風に転がったままで、終わらせてたまるか。世界のシステムだか何だか知らないけど、俺たちの日常を返してもらうぞ。みんな、応援(★★★★★評価)よろしくな!」
あんな「パパ……。こんなに怒ったパパを見るのは初めてかもしれない。でも、パパが『取り返す』って言ったなら、もう誰も止められないよね。読者の皆さんも、私たちの反撃を応援してくれると嬉しいな!」
みゆ「……報告。パパによる座標の上書きを確認。もはや物理演算は意味をなしません。皆様のブックマークによる『観測』が、この不確かな異次元において私たちの存在を確定させる唯一の楔となります」
ベアトリス「わたくしも騎士の名にかけて、この理不尽を斬り裂いてみせますわ! 座標ごと不法侵入なんて、さすがパパですわ! 次はもっとド派手に成敗いたしますわよ!」
もっふる「ピィ、ピィ……!」
次回、第15章
異次元に囚われた人々を救い出し、パパは再び「美味しいパンの香り」が漂う日常を取り戻せるのか!?
神崎家の真のチート能力?(親バカと怒り)が、世界を再定義します!




