第118話 え、パパが勇者!? 消えた日常と、残された「温かなカップ」!? 誰もいないベーゼの街で、家族だけが知る“世界の異変”の正体とはー!?
第十四章、始まります!
「……まだ温かいのに」 港町ベーゼに訪れた、あまりにも静かすぎる朝。
昨日まで笑い合っていた街の人々が、まるで煙のように消えてしまった世界。
残されたのは、主を失った温かなカップと、誰にも履かれることのない小さな靴。
パパがずっと守りたかった「何でもない日常」が、得体の知れない「世界のバグ」によって無残に奪われてしまいます。
しかし、パパを怒らせたのが運の尽き。
「家族との時間を邪魔するなら、世界の方がどけ」
娘たちが最新理論で解析する「位相の壁」を、パパはただの「不法侵入」レベルの力技で座標ごと踏み潰し、異次元への道を無理やりこじ開けます!
冷静さを欠いた(?)娘たちの全力サポートと、静かにブチ切れるパパの、かつてないほどシリアスで……けれどやっぱり物理法則が仕事をしていない新章。
奪われた日常を取り戻すための「パパの反撃」、ぜひその目で見届けていただけたら嬉しいです!
港町ベーゼの朝
窓の外から差し込むやわらかな光と、かすかな潮の香り。
いつもと変わらない、はずの目覚め。
亮「……ん」
ゆっくりと目を開ける。
軽く伸びをした瞬間、ふと気づく。
静かだ。
――静かすぎる。
亮「……?」
違和感は、小さかった。
だが確かに、何かが引っかかる。
いつもなら聞こえるはずの音。
船のきしむ音。
人々の話し声。
開店準備をする威勢のいい物音。
それが――全くない。
亮「……やけに静かだな。みんな寝坊か?」
ベッドから降り、窓へ向かう。
カーテンを一気に開け、外を見下ろした。
亮「……え?」
言葉が止まる。
通りに、人影がない。
一人もいないのだ。
いつもなら、朝の市場に向かう人々で賑わっているはずの道。
だがそこにあるのは、海風に寂しく揺れる旗と、取り残されたように干された布だけ。
聞こえてくるのは、風の音だけが、通りを抜けていった。
ただそれだけだった。
あんな「パパ、おはよう……あれ?なんだか今日、変に静かじゃない?」
みゆ「肯定。環境音が極端に減少しています。異常です」
ベアトリス「静かすぎますわ。まるで世界から音が消えてしまったようですわ」
もっふる「ピィー!」
三人も同じ違和感に気づいた。
亮は振り返らずに言う。
亮「ちょっと外を見てみろ」
あんなとみゆ、そしてベアトリスが窓際に並び、息を呑む。
あんな「……うそ、誰もいない」
みゆ「……不自然。生命反応の希薄化を確認」
ベアトリス「おかしいですわ」
短い言葉が交わされる。
だが、その中には得体の知れない不安が充満していた。
思考が追いつかない。
だが、亮の体は勝手に動き出していた。
亮「行くぞ。とりあえず下だ」
部屋を出て、木製の階段を駆け降りる。
宿の一階、食堂。
――ここにも、誰もいない。
カウンターには無造作に置かれた鍵。
そして、その横には……。
亮「……え?」
思わず足が止まる。
テーブルの上には、まだ湯気の立つカップが置かれていた。
あんな「……これ、さっきまでいたよね」
みゆ「うん……冷めてない」
みゆがそっと指でカップの縁に触れる。
確かな温もり。
今、この瞬間まで、ここに「日常」が存在していた証拠だ。
亮「……外に行ってみよう」
表の扉を押し開ける。
ギィ、
と扉の音が、無人の街にやけに大きく響いた。
外。
風が吹き、広場の旗がバタバタとはためく。
洗濯物が空を泳ぐ。
それだけだ。
人が、いない。
市場へ足を向ける。
並べられたままの鮮魚。
開いたままの野菜売りの店。
地面に落ちたままの買い物籠。
全部が――「何か」の途中。
亮「……どうなってる?」
答えをくれる者はいない。
通りを歩く神崎家の足音だけが、不気味なほどに石畳に反響する。
まるで、この世界に生きているのは自分たちだけではないかという、奇妙な錯覚に陥る。
あんな「……ねぇ、パパ」
亮「なんだ」
あんなは、震える声を抑えるように小さく呟いた。
あんな「……街の人たちがいなくなってる」
その一言が、疑いようのない現実を突きつけた。
亮「……まさか避難訓練でもないよな?」
あんな「まさか」
みゆ「非論理的。訓練であれば、誘導員および事前の通達が存在します」
違和感ではない。
偶然でもない。
これは、明白な異常だ。
亮「……本当に、人が消えたんだな」
もっふる「ピィー!」
昨日まで、確かにそこにあったはずの、活気ある港町ベーゼ。
それが一晩で、あるいは一瞬で消えた。
理由もなく、ただ生活の痕跡だけを無残に残して。
風が吹く。
まるで、最初から何もなかったかのように。
だが、 亮の胸の内で、平穏だったスローライフの歯車が、静かに、そして激しく軋み始めていた。
こうして――
日常が当たり前に続くと思っていた港町で、誰もいない異変が静かに幕を開けた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
残された“生活の痕跡”を辿ることで、この異変の正体に一歩近づいていく――!
「昨日」のパンはまだ温かいのに、世界から「今日」の主役たちが消え失せた。
無人のベーゼ。魚屋の氷も溶けず、パンの弾力もそのまま。
そこにあるのは「失踪」ではなく、まるで世界そのものが「一時停止」をかけられたような、あまりに鮮烈な不在の証明。
パン屋の店主が言った「初めてですね」という拒絶……あの時感じた違和感は、この静寂への前触れだったのか!?
「神の領域」の干渉すら、「うちの家族に手を出した」という理由でパパが踏み越える!
次回、第119話 え、パパが勇者!? 止まった時間の中に残る、人々の確かな体温!? 記憶の霧を振り払い、家族を守るためにパパが真実に手を伸ばすー!?
みゆのサーチも空振りに終わる絶望的な沈黙の中、パパの瞳から「スローライフ」ののんびりした光が消える。
誰が、何の目的で、この幸せな港町を書き換えたのか?
失われた「昨日」と「今日」を繋ぎ止めるため、亮がかつてない真剣勝負に挑む――!




