第117話 え、パパが勇者!? 港町ベーゼに響く、穏やかな波音と家族の笑い声!? 何も起きない夜こそが、パパが求めた「最強の幸福」の形ー!?
港町ベーゼの夜。
昼間の活気ある人々の声も落ち着き、街は穏やかな夜の空気に包まれていた。
窓の外からは、寄せては返す波の音が心地よいリズムを刻んでいる。
神崎家の泊まる宿の食堂。
テーブルの上には、今日買ったパンと宿自慢の温かい料理が並んでいた。
宿屋のおかみさん「はいはい、お待たせしましたよ。出来立ての熱いうちに食べておくれ」
亮「おー、美味そう。疲れも吹き飛ぶな」
あんな「本当に美味しそう。お腹空いちゃった」
みゆ「タンパク質、脂質、炭水化物。栄養バランス完璧です」
ベアトリス「良い香りですわ……。たまりませんわ!」
全員「「「いただきます! わ!」」」
もっふる「ピィー♪」
ふかふかのパンをちぎる。
スープからは白い湯気が立ち昇り、食堂の中は一気に幸福な香りに満たされた。
いつもの、けれど何物にも代えがたい食事の時間。
亮「やっぱ落ち着くな、こういうの」
あんな「ねー。バタバタしてないの久しぶり。海底に行ったり魔物と戦ったり、ハードすぎたよね」
ベアトリス「平和が一番ですわ。剣を振るうのも騎士の務めですが、こうして美味しいものを囲むのも、また勤めですわ!」
みゆ「同意。精神的安定が戦闘継続能力に直結します」
もっふる「ピィー♪」
亮「海底も大変だったしなぁ」
あんな「最後ちょっと意味分かんなかったよね」
ベアトリス「試練とはそういうものですわ!」
みゆ「結果は成立。女王の評価も得ています。プロセスはともかく、成功と言えます」
亮「まぁ、なんとかなったし結果オーライだな」
あんな「うんうん!パパらしいっていうか、なんというか!」
ベアトリス「さすがですわ!」
もっふる「ピィー!」
食堂に明るい笑い声が広がる。
何気ない会話。
とりとめのない冗談。
それだけで、空気がやわらぐ。
亮「そういえば、あのお米の話さ」
あんな「あの老人の言ってた、あの曖昧な情報ね」
ベアトリス「南の方、でしたわね」
みゆ「現時点での優先度は、中。情報の確度を考慮すれば、即座に移動を開始するのは合理的ではありません」
亮「そうなんだよなぁ。すぐ行くか、もうちょいここでゆっくりするか」
あんな「私はもう少しのんびりしたいな〜」
ベアトリス「賛成ですわ」
みゆ「いつもの『パパの即決』がないのが、逆に不気味ですが……この提案には同意」
亮「じゃあ決まりだな」
あんな「ベーゼ満喫だね!」
もっふる「ピィー♪」
食事を終え、それぞれがくつろぎの時間を過ごす。
窓の外には、月明かりに照らされた静かな港の夜景。
波の音が心地よく響く。
あんな「ほんと、いい街だね。海があって、活気があって」
亮「ああ」
ベアトリス「落ち着きますわ」
みゆ「環境良好。ストレス指数、低下を確認」
亮「こういう時間が一番大事だな」
あんな「だね。これぞ、パパの目指す生活じゃない?」
亮「ああ、スローライフ満喫中!」
静かな時間が流れる。
誰も急がない。
何も起きない。
ただ家族が隣にいて、今日という日を無事に終える。
みゆ「……問題なし」
小さく確認する。
あんな「そろそろ寝よっか」
亮「だな。明日は何しようか」
ベアトリス「明日も楽しみですわ」
みゆ「同意」
もっふる「ピィー♪」
灯りを落とす。
一日が終わる。
港町ベーゼの夜は、静かに更けていく。
変わらない日常。
変わらない家族。
そして——
何も起きないまま、穏やかな夜は過ぎていく。
――そして、その空のさらに穏やかなる場所。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族が、ようやく手にしたはずの穏やかな港町の日常。
けれど、その凪いだ水面の底で、世界は静かに、けれど確実に歪み始めていたようですね。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
誰もがスルーしてしまう「小さな違和感」が、やがてあの家族をどんな数奇な運命へと誘うのか。
真実の夜明けは待っているのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと「昨日あったはずの記憶」をさらっていく。
その微笑みは、何もかもを見通しながらも、どこまでも優しかった。
こうして――
港町での穏やかな一日を終え、神崎家はいつも通りの夜を迎える。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
引き続きスローライフ満喫編、それとも新たな展開が待っているのか――!?
【第十三章「港町編」を終えて】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第13章では、過酷な海底の試練を終えた神崎家が、再び地上(港町ベーゼ)でのスローライフを満喫する姿を描きました。
……はずだったのですが、どうにも街の様子がおかしいようです。
昨日会ったはずのパン屋の店主が「初めまして」と言い出したり、記録上は店が閉まっていたことになっていたり。
パパの「美味ければOK!」という能天気パワーで強引に日常を維持していますが、その裏で世界が静かに歪み始めている不気味さが、今章のスパイスとなっています。
そして、ついに浮上した「お米」の手がかり!
情報源が「白いから似たようなもん」で済ませるテキトーなおじいちゃんという不安要素はありますが、一行は(気づかず)南を目指すのか、それともこの街の違和感に飲み込まれてしまうのか……。
次回、『ぱぱやら!』
明日朝8時、本編第十四章スタートとなります。
女神さえも微笑みながら見つめる、この「歪んだ日常」の先にあるものは何なのか。
神崎家の次なるやらかし(?)に、ぜひご期待ください!
亮「いやぁ、やっぱり地上のパンは最高だな! おじいちゃんが言ってた南の方に行けば、ついにお米に会えるかもしれないし、ワクワクが止まらないぞ! みんな、応援(★★★★★評価)よろしくな!」
あんな「パパ、お米もいいけど街の違和感も少しは気にしてよね……。でも、パパが笑ってるなら、まだ大丈夫なのかな。読者の皆さんも、私たちの旅を応援してくれると嬉しいな!」
みゆ「……報告。港町ベーゼにおける整合性エラーは、現在進行形で拡大中。皆様のブックマークという『観測』こそが、この不安定な世界で家族を繋ぎ止める定数となります」
ベアトリス「わたくしの『超・弱火』、次は必ず成功させてみせますわ! 堤防をサウナにするのはもう卒業ですの! 次の冒険もド派手にいきますわよ!」
もっふる「ピィ、ピィ……!」
次回、第14章
物語は港町を離れ、ついに南の地へ……?
それとも消えた「昨日」の正体が暴かれるのか。
引き続き、神崎家のスローライフ(?)をお楽しみください!




