第115話 え、パパが勇者!? お米の情報源は記憶喪失寸前の老人!? 「南か西か、白いから似たようなもん」という超適当な導きに、家族の運命が翻弄されちゃうー!?
港町ベーゼの一角。
神崎家は、通りを歩きながら何人もの商人や住民に声をかけていた。
だが、期待していた答えはなかなか返ってこない。
あんな「やっぱりお米の情報ないね」
みゆ「そもそも、この世界の植生にお米(イネ科)が存在するのかさえ、統計学的に怪しいレベルです」
もっふる「ピィー!」
ベアトリス「私も聞いたことがありませんわ」
亮「そうなのかなぁー」
石畳の通りの端に、小さな木の椅子が並んでいる場所があった。
そこに腰掛けていたのは、一人の白髪の老人だった。
あんな「すみませーん、ちょっといいですか?」
老人「ん?」
ゆっくりと顔を上げる。
亮「ちょっと聞きたいことがあって」
老人「おお!あのクラーケンを倒した英雄さん」
あんな「英雄はやめてほしいのだけど…」
老人「そうなのか?わしらにとっては、この町を救ってくれた英雄様だけどな」
亮「まあ、それはそれとして、お米って食べ物ご存じですか?」
老人「……おこめ?」
首をかしげる。
あんな「白くて、小さくて、炊いて食べるのですけど」
みゆ「この家族における、精神的・肉体的な最上位主食です」
老人「……ああ」
少し考えてから、ぽつりと呟いた。
老人「昔、誰かが話しておったのを聞いたことがある気がするなぁ……」
亮「あ、あるんですか!?」
あんな「ほんとに!?」
みゆ「奇跡」
ベアトリス「有力情報ですわ!さすがはパパ、引きが強いですわ!」
身を乗り出す四人。
老人「確か……商人が話しておった」
みゆ「いつの話ですか? 正確な日付、または季節をお願いします」
老人「さぁなぁ……。わしがまだ若かった頃じゃから、かなり昔のことじゃよ」
亮「どこで手に入るとかは?」
老人「そこまでは覚えとらんの」
あんな「えぇー……」
ベアトリス「惜しいですわ……!」
みゆ「特徴は覚えていませんか?」
老人「特徴なあ……。確か、白い粒で、水で炊くと増えるとかなんとか……」
みゆ「特徴の合致率、98%。」
亮「それって、どこの商人か分かりますか? どこの国から来たとか」
老人「うーん……」
腕を組み、しばらく唸っていた老人が、確信を持って頷いた。
老人「確か……南の方から来たとか言っとったな」
亮「南?」
あんな「この世界の南ってどこ?」
ベアトリス「ここからずっと街道を下った、国境付近か……あるいは国境を越えたさらに先ですわ」
みゆ「現時点での場所情報、低。ですが、完全なゼロではありません」
亮「まぁ、そうだよな……」
あんな「でもゼロじゃないよね」
ベアトリス「ええ、手がかりにはなりますわ!」
老人「すまんなぁ、こんな話しかできんで」
亮「いや、十分ですよ」
あんな&みゆ「ありがとうございました!」
ベアトリス「感謝いたしますわ」
もっふる「ピィー♪」
老人にお礼を伝え、一行は意気揚々とその場を離れた。
亮「とりあえず南だな」
あんな「本気? 南っていう、ざっくりした情報だけで旅立つの?」
みゆ「パパですから。コンパスがなくても、食欲という磁石で動きます」
ベアトリス「新たな旅ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
亮「とりあえず」
あんな「とりあえず?」
亮「宿に戻って食事だな」
あんな「もったいつけてそれー、でも」
みゆ「賛成。エネルギー充填が必要」
ベアトリス「私もお腹が空きましたわ!」
もっふる「ピィー♪」
賑やかに遠ざかっていく家族の背中を、老人はしばらくの間、眺めていた。
老人「……あれ?」
ふと、老人は首をかしげる。
老人「わし……今、南と言ったかの?西だったような……」
少し考えてから、首を振る。
老人「まぁいいか……。わしの記憶も、お米とやらも、白いから似たようなもんじゃ」
何事もなかったように、老人は再び日向ぼっこを再開した。
こうして――
お米という新たな目的が生まれ、神崎家のスローライフは次の段階へと進んでいく
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
果たして一行は、老人の「勘違い」に気づかず南へと突き進むのか。
それとも、まだ港町で食べ歩きを堪能するのか――!?
「昨日」が消えた!? それとも「今日」がダブってる!?
港町を包む奇妙なデジャヴは、店主の茶目っ気か世界のバグか!?
お米を求めて南へ……行くわけもなく、神崎家は朝からパン屋へ直行!
しかし、そこで待っていたのは「初めまして」という店主の衝撃発言。
昨日あんなに楽しく喋ってパンを買ったはずなのに。
記録上、店は「臨時休業」だったという不可解な事実!
「美味ければOK!」
——パパの能天気な全肯定が、深まりかけたミステリーを力技で「日常」に引き戻す!?
次回、第116話 え、パパが勇者!? 存在しない「昨日」を捏造中!? 店主のジョークか世界のバグか、違和感を「美味ければOK」でスルーするパパの能天気チートー!?
みゆの「整合性エラー」のアラートも、焼きたてパンの香ばしい匂いには勝てない!?
小さなズレをパンと一緒に飲み込んで、一家は今日も元気に現状維持。
でもパパさん、その店主の「昨日も聞かれました」
発言、本当に冗談なんですかね……?




