第113話 え、パパが勇者!? 海底から戻ったらパン屋で嫁取り合戦が勃発!? 親バカ全開で娘を自慢するパパと、街に漂う「小さな違和感」の正体はー!?
第十三章、始まります!
「やっぱり地上のご飯が一番落ち着くなぁ」
過酷すぎる海底の試練を乗り越え、神崎家一行がようやく取り戻した、待ちに待った平穏な日常。
美味しいパンを頬張り、堤防釣りに興じる――。
パパが夢にまで見た理想のスローライフが、港町ベーゼでついに実現!?
しかし、平和を満喫するパパの裏で、街には「存在しないはずの昨日」や「記憶の食い違い」という、不気味で奇妙な違和感が漂い始めます。
それが世界の危機か、はたまた店主のジョークか。
「美味ければOK!」とあらゆる異変を能天気パワーでスルーするパパと、そんなパパに振り回されつつも、過剰防衛気味に平穏を守ろうとする娘たち。
何も起きないはずの夜に潜む「影」の正体とは――。
悲願である「お米」への手がかりも”超適当な形”で浮上し、神崎家の旅はまた新たな局面へ!
日常と非日常が、パパの食欲で混ざり合う(?)、ちょっと不思議でやっぱり賑やかな新章も、ぜひ楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
海底王国の幻想的な蒼の世界から、再び太陽の光が降り注ぐ地上へ。
神崎家の一行は、潮の香りと人々の声に包まれた港町ベーゼへと戻ってきていた。
視界いっぱいに広がる青い海。
潮風に乗って運ばれてくる、どうしようもなく懐かしい磯の匂い。
行き交う人々の活気、荷を運ぶ荷車の音。
――そこは、いつも通りの、平和な港町のはずだった。
あんな「女王様も、海底洞窟じゃなくて港町まで転送してくれても良かったのに。帰りも結構な距離を歩く羽目になったよね」
みゆ「肯定。女神様は草原に放り出すし、女王様は洞窟。高位存在のナビゲーション能力には、著しい欠陥が認められます。改善を要求します」
亮「優しいのか、優しくないのか、どっちなんだろうな……」
ベアトリス「ですが、こうして無事に街へ戻れましたわ! これも一つの修行、足腰を鍛える良い機会ですわ!」
もっふる「ピィー♪」
いつもの調子の会話に、自然と笑みがこぼれる。
海底王国での出来事は、どこか遠い夢のようだった。
過酷な試練、己を問う戦い。
家族としての在り方を問われた時間。
それでも、こうして帰ってきた場所は変わらない。
変わらない――はずだった。
亮「……あれ?」
ふと、足を止める。
あんな「どうしたの、パパ?また何か拾った?」
亮「いや……なんでもない」
そう答えながらも、父の視線は街の奥へと向いていた。
見慣れた通り、並ぶ商店、行き交う人々。
記憶と同じはずなのに
(……なんだ、この感じ)
ほんのわずかに、何かが引っかかる。
みゆ「疲労による認知の揺らぎ。休息を推奨します」
亮「そうかもな。ちょっとぼーっとしてただけだ」
軽く首を振る。
考えすぎだ。
海底王国での時間が濃すぎたせいで、感覚が少しズレているだけだろう。
そう思えば、すぐに納得できる程度の違和感だった。
ベアトリス「それより、本日はどうなさいますの?」
あんな「まずはご飯でしょ」
みゆ「賛成。脳の糖分不足は、論理的思考の妨げになります」
もっふる「ピィー!」
亮「はは……だな。よし、まずは腹ごしらえだ!」
家族の声に引っ張られるように、父の意識も日常へと戻っていく。
腹が減ってはなんとやら。
まずは温かい食事だ。
通りを歩きながら、いつもの店の前を通り過ぎる。
焼いた魚の香ばしい匂い。
湯気の立つスープ。
笑い声。
あんな「あ、ここ久しぶり」
みゆ「入るのが最適」
亮「いいな。ここにしよう」
自然な流れで足が止まる。
店の中は相変わらずの賑わいだった。
店主「あいよ、いらっしゃい!」
元気な声が飛んでくる。
亮「久しぶりです」
店主「おう、そうだな……あれ?」
一瞬だけ、店主が首をかしげた。
まるで、亮の顔を数年ぶりに見たかのような、あるいは幽霊でも見たかのような妙な間。
だが、店主はすぐにいつもの笑顔に戻った。
店主「ま、いいか!好きな所に座ってくれ!」
亮たちは気にした様子もなく席に着く。
やがて運ばれてきた料理の湯気が、ふわりと広がる。
亮「……うまそうだな」
あんな&みゆ「いただきます」
ベアトリス「いただきますわ」
もっふる「ピィー!」
一斉に手を合わせる。
口に入れた瞬間、懐かしい味が広がり、海底での緊張が完全に溶けていく。
あんな「やっぱりこれだね」
みゆ「落ち着きます。栄養素が染み渡る感覚です」
亮「だな……」
ベアトリス「美味しいですわ」
もっふる「ピィー♪」
自然と頬が緩む。
帰ってきた。
そう実感できる、何気ない時間だった。
さっきまで感じていた小さな違和感も、いつの間にか消えていた。
気のせい――そう思うことにした。
だが胸の奥のざらつきは、完全には消えなかった。
ベアトリス「食後はどうなさいますの?」
あんな「ちょっと街ぶらして、いつものパン屋に行きたい」
みゆ「賛成」
亮「いいな、それでいこう」
もっふる「ピィー♪」
笑い声が重なる。
一行は食堂を出て歩き出した。
石畳に落ちる影が、午後の光にやわらかく伸びていく。
潮の匂いが、風に乗って静かに流れてきた。
通りを進むたびに、木の扉や窓枠が陽に照らされ、どこか懐かしい温度を帯びて見える。
ベアトリス「あっ、見えてきましたわ。パン屋ですわ!」
亮「お、ほんとだ。よーし、今日も買い込むぞー」
もっふる「ピィー♪」
家族は笑いながら、パン屋の扉を開けた。
パン屋のご主人「亮さん、いらっしゃい!」
亮「今日も美味しそうだね」
パン屋のご主人「ありがとうよ。ところで、亮さん」
真剣な顔で身を乗り出すご主人。
亮「ん、なんだいご主人?」
パン屋のご主人「あんなちゃんか、みゆちゃん、うちの息子の嫁にもらえんかな?」
亮「え?どうしたの急に!」
パン屋の奥さん「いきなり何を言っているのだか、亮さんが困っているだろ」
パン屋のご主人「だってよ、こんな器量良しでしっかりした娘さん、他にいないだろ」
亮「いやー分かりますよ、なんてたって、うちの娘は世界一の美人三姉妹だからね」
あんな「でた、親バカ」
みゆ「定番」
ベアトリス「光栄ですわ」
パン屋の奥さん「全く男どもは、どうしようもないね」
店内にはいつもの温かい笑い声が響く。
亮「今日のおすすめは?」
パン屋のご主人「今日はこれとこれだな。特別にサービスしておくよ」
亮「ありがとう。それを人数分もらうよ」
パン屋のご主人「ありがとうよ。また来てくれよ」
亮「また、来ます」
あんな&みゆ「ありがとうございます」
ベアトリス「ありがとうですわ」
もっふる「ピィー♪」
外に出れば、相変わらずの港町の騒がしさが続いている。
人がいて、声があって、日常がある。
――何も変わっていない。
そう思える景色の中で。
亮は、ほんの一瞬だけ。
言葉にできない“引っかかり”を感じていた。
けれどそれも、家族の笑顔にかき消される。
こうして――
海底王国から帰還した神崎家は、再び港町ベーゼでの穏やかな時間を取り戻す。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は
久しぶりの街ぶらと、ちょっとした騒動。
「超・弱火」が堤防を溶かす!? 爆裂お嬢様の火力調整、海底の試練を経てさらにパワーアップ中?
久しぶりの休日、潮風に吹かれてのんびり堤防釣り。
あんなの釣り上げた銀色の魚を前に、ベアトリスが自信満々に火種を引き受けるけれど……?
「海底での反省を活かす」というフラグを完璧に回収し、放たれた《ファイア》は魚を炭に変え、堤防をサウナに変える暴挙に!
「はい、交代」——みゆの無慈悲な宣告。
焦げた魚を前に、お嬢様の修行道はまだまだ続く?
次回、第114話 え、パパが勇者!? 堤防釣りでスローライフ満喫……のはずが、ベアトリスの「超・弱火」で堤防が火だるまパニックにー!?
炭化した昼食を乗り越え、目指すはやっぱり「白いごはん」!
子供たちに「おじさん」と呼ばれてショックを受けるパパを横目に、港町に眠る「お米の噂」がいよいよ輪郭を帯びてくる!?




