第104話 え、パパが勇者!? 解析不能な「深海テレパシー」を受信!? 物理法則に続いて生物の限界まで突破して、海の底までお散歩ですかー!?
港町での騒動が落ち着いて、数日。
ベーゼの街にはようやく、異世界のスローライフにふさわしい、穏やかで柔らかな時間が戻っていた。
亮「海ってさ、見てるだけで落ち着くよなー」
昼下がり。
港町の外れにある、入り江の奥にある静かな砂浜。
亮は砂浜にどっかと腰を下ろし、陽光にキラキラと輝く水平線をぼんやりと眺めていた。
先日の宴会が嘘のように、今はただ寄せては返す波の音だけが、心地よいリズムを刻んでいる。
もっふる「ピィ♪」
あんな「確かに、静かでいい場所ですね。……パパがまた突拍子もないことさえ始めなければ、ですけど」
みゆ「……波の周期、1/fゆらぎを観測。リラックス効果、最大値」
ベアトリス「平和ですわ……こういう時間も、大切ですわ。戦いの後の静寂……乙女には必要ですわ!」
やわらかな風が吹き抜け、心地よい潮の香りが運ばれてくる。
波は規則正しく、白く泡立ちながら砂浜へと打ち寄せては引いていく。
どこまでも穏やかで――
何も起こりそうにない、そんな満ち足りた時間。
――のはずだった。
亮「……ん?」
ふと、亮は顔を上げた。
今、何か――誰かに呼ばれたような気がした。
あんな「どうしたの?」
亮「いや……なんか、今……聞こえなかった?」
みゆ「……音響データ解析。周囲に人間は存在しません。異常、検知不可能」
耳を澄ませても、聞こえるのは寄せ返す波の音だけだ。
だが、亮の瞳に映る景色が、一瞬だけ揺らいだ。
それは温かく、懐かしいような、それでいて何かを強く求めているような、不思議な感覚。
だが――。
「……」
亮「……まただ」
それは耳で聞く音ではなく、頭の中に直接、染み渡るように響く不思議な声。
あんな「パパ?急に真面目な顔して、どうしたのよ」
みゆ「……パパの脳内反応に微弱な変化あり。外部からの干渉の可能性、12%から急上昇」
ベアトリス「え……? わたくしには何も聞こえませんわ」
亮は吸い寄せられるように立ち上がり、無意識に海へと視線を向けた。
青く、どこまでも透き通った静かな海。
その奥――光の届かない、深い深い場所から。
亮は、そこへ行かなければならないという強烈な「力」を感じていた。
まるで昨日、奥底に沈んでいったあの紋章が、そこでじっと自分を待っているような、奇妙な確信。
亮「……あっち、か?あっちで誰かが呼んでる」
なぜ自分だけに聞こえるのか、なぜそれが「海底」からだと断言できるのか、亮自身にも分からない。
ただ――“分かる”のだ。
海が自分を「招いている」ことが。
それが今、暗い海の底で自分を待っている。
あんな「……何かあるね」
みゆ「……高確率で、原因は海中」
もっふる「ピィ……」
さっきまで心地よく頬を撫でていた風が、ふと止んだ。
世界から色が抜け落ちたかのように、波の音が遠のき、奇妙な静寂が浜辺を支配する。
亮「……ちょっと、行ってみるよ。呼ばれてる気がするんだ」
あんな「……また即決!しかも今度は『海の底』って、パパ、私たちは人間だよ!?」
みゆ「……想定内。データの採取、及び安全確認も必要」
ベアトリス「どこへでも、地の果て、海の底でもお供いたしますわ!」
そこに、迷いはなかった。
まるで最初からそう決まっていたかのように。
言葉にできない、静かで、けれど抗いようのない「運命」の予感が、白く輝く砂浜に色濃く影を落としていた。
あんな「ところで、海底にお米はあるの?」
みゆ「……定番の、不毛な問いです」
ベアトリス「海苔ならたくさんありそうですわ!」
亮「カニ炒飯用のお米、あるといいなぁ」
あんな&みゆ「あるわけないでしょー!!」
もっふる「ピィー♪」
――そして、その空のさらに遥か高く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
ふふ……あの家族は、本当にどこへ行っても嵐を呼んでしまいますね。
潮風香る港町に、ただ「美味しい海の幸」を求めて立ち寄ったはずが、まさか海を封鎖していた伝説の魔獣を、夕食のメインディッシュに変えてしまうなんて。
絶望に沈んでいた街の人々の前で、光り輝く翼を広げ、聖なる炎を纏って戦う娘たちの姿。
それは、かつて語り継がれた英雄譚よりも眩しく、けれど、その後ろで必死にオールを漕ぎながら「イカ焼きパーティーだ!」とはしゃぐあの勇者の姿は、何よりも人間味に溢れていました。
「誰かのために」と肩肘を張るのではなく、ただ「みんなで笑って美味しいものを食べたい」という、そんなありふれた願い。
使命感ではなく、純粋な気持ちで……ただ幸せを分かち合い歩む彼らの姿は、凍てついた街の人々の心に、失われていた希望の灯を再び灯したのでしょう。
最強の力を持ちながら、伝説の武具よりも家族の絆を、そして何より「今日のごはん」を大切に想う。
その純粋な想いこそが、世界で最も強く、そして優しい魔法なのかもしれませんね。
さて……次はどんな日々を紡ぐのでしょう。
深海から届く不思議な呼び声に導かれ、あの家族はまた一つ、世界の理さえも笑顔で塗り替えてしまうのでしょうか。
光が揺れ、風がそっと潮の香りを運ぶ。
その微笑みは、月夜に照らされた凪の海のように優しかった。
こうして――
穏やかだった海辺のひとときは、神秘に満ちた“深海からの招待状”へと変貌した。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が、
次は海の底へ、また何かをやらかしに行く予感を孕んで動き出す。
【第十一章「港町編」を終えて】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第11章「港町編」では、パパの「お刺身が食べたい」という執念(?)から始まり、もっふるのカナヅチ発覚、そして魚一匹いないゴーストタウンの謎を追う大冒険となりました。
特に第100話の節目では、娘たちの「神レベル」の解放、そして海を割るという前代未聞の大スペクタクルまで飛び出し、神崎家の絆とやらかしが、また一つ伝説を刻みました。
ギルド重鎮との攻防や、亮にしか聞こえない「海底からの呼び声」など、一気に駆け抜けた本章、楽しんでいただけていれば幸いです。
絆を深めた一行を待ち受ける、次なる舞台は「海の底」――?
海底にカニ炒飯はあるのか、そして亮を呼ぶ紋章の正体とは。物語はさらに加速していきます!
亮「いやぁ、100話記念で海を割った時はどうなるかと思ったけど、やっぱりお米と刺身のためなら力が出るな! 海底にカニ炒飯があるかは分からないけど、みんな応援(★★★★★評価)よろしくな!」
あんな「ちょっとパパ、次はもっとスマートに解決してよね。でも、読者の皆さんの応援があれば、次はもっといい美容法が見つかるかも……! よろしくお願いします!」
みゆ「……肯定。100話を越え、パパのやらかしエネルギーは神域に達しています。皆様のブックマークによる『観測』が、唯一の安全装置です」
ベアトリス「わたくしも、海の底までお供いたしますわ! 次の冒険も楽しみですわね!」
もっふる「ピィ、ピィ……」
次回、『ぱぱやら!』 新章突入!
明日朝8時、本編第十二章スタートとなります。
これまで以上に楽しんでいただけたら嬉しいです。




