放課後の体育館 ― “笑って強くなる一年目”
放課後の体育館 ― “笑って強くなる一年目”
シャトルが天井で白く跳ね、木床に軽い音を散らす。
山口第一中バドミントン部の放課後、空気は汗と笑いでいつもの熱量。
「はい、いったん給水〜。“口のストレッチ”も可!」
村田コーチの一声で、部員が水筒を手に集まる。
泉(中1)、にやっと笑ってラケットをマイクみたいに構えた。
「はいどーも〜、一年生コンビ“いずひろ”でぇす!」
ひろ(中1)「もうコンビ名そのまんまやめい。新人漫才ちゃうで」
泉「ええやん、“最初の一本=挨拶”、まずは笑いで口ならしや」
ひろ「それは音楽部のやつ!」
今日おるメンバー
* 仁保 泉(中1・女子/前衛)…大阪弁のボケと“要所で一発”が売り。
* 仁保 宇宙(中1・男子/後衛)…拾いの鬼。ツッコミ制御塔。
* 杉本 葵(中3・女子主将)…冷静沈着、でも笑いの沸点は低い。
* 中谷 未央(中2・女子)…笑い声の音圧が体育館級。
* 浜崎 拓斗(中3・男子)…スマッシュ大砲。笑うと精度が2割落ちる。
* 藤井 莉音(中1・女子)…見た目かわいい毒舌枠。
* 榎田 航平(中2・男子)…球拾いの神。笑い出すと止まらない。
* 村田 孝信(顧問)…関西ノリで指導。笑いに弱く脱線しがち。
見学席には、高校に上がった二人の先輩。
矢場 藍(山口西高校・1年)と、太田 歳也(私立・高田高校・1年)。
「おーい、後輩ーズ。手首ゆるめて、笑いは締めて!」
「どんなウォームアップやそれ!」と一同ツッコミ。
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1)ウォームアップ兼“口のストレッチ”
泉「本日の目標、“届くほうへ”&“二拍我慢→一拍返し”で笑いも球もコントロール!」
ひろ「笑いをコントロールするな。ラリーや」
葵「でも、笑いで肩の力は抜けるよな」
未央「抜けすぎて、さっきサーブ3球連続ロングになりました〜」
一同「正直〜!」
藍、ニヤリと拍手。
「一年やのにテンポええやん。**“間”**の作り方、もう習得しとる」
歳也「うむ、将来は“お笑いラケット部”やな」
ひろ「やめろ、競技名変わる」
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2)基礎打ち → 蚊、参戦。
ノックが進む。
ひろ「前、任せた!」
泉「後ろ、預かった!」
3往復して、ネット前で“置く”形――の予定が。
泉「イタッ!!」
ひろ「どした!?」
泉「蚊やっ! 試合で刺すより刺されてるっちゅうねん!」
体育館:ドッ
村田「“見せびらかさん一発”どころか、“見せびらかさん一刺し”やな!」
葵「それは全国禁止技やで!」
藍「スコア:蚊1—0泉」
泉「いらんスコア増やすなや!」
藤井(中1)が前に出る。
「泉先輩、そこ掻くより先に、“二拍我慢”です」
泉「かゆみで二拍我慢はハードル高っ!」
ひろ「でも我慢のあと“一拍返し”でヘアピン置けるやろ?」
泉「――置く!」(すっ…)
ネット前に無音ドロップ。相手、届かず。
ベンチ「おおぉ!」
藍「今のは要所で一発や。完璧!」
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3)一年生まつり(交替ラリー)
村田「次、交替で一年生入れ! “笑い過ぎ注意”の貼り紙の近く集合!」
榎田「そんな貼り紙あるかい!」
未央「仮設や仮設!」
* いずひろ vs 藤井&榎田
→ 初手、泉が“最初の一本=挨拶”を忘れて、
二人同時に「ごめん!」でさらに遅れる“新人あるある”。
ひろ「同時に譲るな!」
藤井「かわいいから許す」
泉「やさしさに甘えます(即土下座)」
葵「土下座早い!」
* いずひろ vs 浜崎&未央
→ 浜崎の大砲スマッシュが火を噴くが、
ひろの拾いが壁。
泉「拾うでぇ!」
ひろ「拾って拾って、さらに拾う!」
未央「笑いすぎて肩外れる〜!」
村田「外すな! その前にBPM80で整列や!」
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4)給水=“夫婦漫才(仮)”タイム
泉、水筒を掲げてグビグビ。
「ぷはーっ。蚊にビタミンB群、半分持ってかれた気ぃする」
ひろ「気ぃのせいや。……たぶん」
泉「今度は蚊取り線香×ミントのダブルで対抗や」
藍「部室が夏祭りの匂いになるぞ」
歳也「顧問にバレたら“燃やすな”って一喝」
村田「聞こえとるわ!」
泉、きりっと客席(=部員)へ。
「それでは実演。“退場の足音=BPM80”の代わりに、
“入場の足音=BPM80”で再開しまーす」
トン、トン、トン――と、いずひろが同じ歩幅でコートへ。
葵「歩きが合うの、地味に格上ポイント」
藤井「尊い……(カメラ連写)」
ひろ「撮るな、集中切れる」
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5)仕上げ:ゲーム形式(藍&歳也が実況)
藍「さ、ここからは**“届くほうへ”の徹底」
歳也「実況わしがやる。“一年生・いずひろ、見事に口は回るが足も回る**!”」
村田「誰がMC頼んだ」
サーブ、レシーブ、吊る、落とす、刺す――
“緩→急→緩”に対し“急→止→急”で返し、
一年生らしからぬテンポの奪い合い。
ひろ「逆斜め、空ける!」
泉「前、任せた!」
無音のピース・ドロップがネットを撫で、相手の足が止まる。
葵「……ほんま、一年の伸びやない」
藍「“合図”が半拍早い。合図=武器になっとる」
歳也「おもろいのに、ちゃんと強い。これ最強やん」
――決まった瞬間、泉がぺこり。
「ただいまの“握手”、無音でお届けしましたぁ〜」
ひろ「毎度のアフターサービスいらん!」
体育館、拍手と笑い。
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6)クールダウン ― “練習より笑って疲れた日”
「はい終了〜! 本日のメニュー、おしまい。
……で、どうや、練習より笑う方で疲れたやろ?」
村田がニヤリ。
部員一同「疲れたぁぁ!」
未央「腹筋が筋肉痛!」
榎田「頬っぺたも痛い!」
葵「でも、肩の力ぜんぶ抜けた。いい時間」
泉、ラケットを肩に担いで、汗をタオルで拭いながら。
「なぁ、うちら一年でも――“届くほうへ”いけるで」
ひろ「いける。笑いも球も、先に合図。それで勝てる」
藍「その調子で、次の“市の大会→県→中国”抜けてこい」
歳也「高校でも待っとる。……あ、漫才枠やなくて競技枠でな」
泉「どっちもいったるわ!」
夕陽が窓の格子で金色の線を落とす。
笑い声が薄く反響し、シャトルが転がる音が最後のBPMを刻んだ。
(最初の一本=挨拶)
(最後の一本=握手)
(――そして、届くほうへ)
一年目の夏は、汗と笑いの熱でまっすぐにのびていく。




