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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
中級冒険者の章

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閑話 ショタを求めて何億光年?


「ああ……終わってしまった」


 30分という短くも濃密な時間の中で繰り広げられたユウタとの逢瀬。それはとても充実的で刺激的で幸福的で、私に初めての感情を与えてくれた。


 次にユウタが来れるのは早くて一週間後、それも赤いゲートの先で運良くこのスペースコロニーに選ばれた場合だけ。今までこんなにも冒険者を待ち望んだ事はあっただろうか……?


「あはっ、ルナったら随分と楽しそうな事してるね~」


 油断していた。ユウタとの時間が濃密過ぎてこの悪魔に監視されている事さえ忘れていた。生まれてから今日まで、こんなにも他人に意識(メモリ)を割いた事は無かった。


「久しぶりねビアンカ。先に言っておくけど、私は貴女の男から相談を受けただけだし、ちゃんと気を遣ってセックスしないであげたわよ? ふふ……早漏を気にしてるんですって」


「おにーちゃんはね、ビアンカちゃんがゆっくりと甘々のドロドロに蕩けさせてダメ人間にするんだから、あんまり鍛えられても困るんだけど?」


「ふふ……アレはどんなに鍛えたところで無理だと思うわよ。ビアンカだってそう思ってるから止めに入らなかったんでしょう?」


「きゃはっ、バレてたか~。おにーちゃんがピンチになったら助けてあげようと見守ってたんだけど、必要なかったよね~」


 この悪魔に弱みを見せないように最速で演算を行い取り繕った。永遠の処女と言われたビアンカが身を挺して守ろうとするユウタという存在は、彼女の中でも特別な存在に違いない。


 知りたい、あのユウタという平凡な男が私の心を動かす理由が知りたい。そう強く思った。


「おにーちゃんはね、特別な称号を持ってるんだよ」


「へぇ、どんな称号かしら?」


「理想のヒモ生活、だよ♪」


「なっ!? あの伝説の……?」


 その称号を聞いた瞬間にストンと納得してしまった。愛くるしい容姿もアホ可愛い言動も、その全てがアンドロイドの『ご奉仕したい』という気持ちを揺さぶっていたのだ。


「ルナなら変な事しないだろうし、まあ少しくらい遊ぶのは許してあげる。けどお尻は絶対にダメ。あとさっき本気で奴隷の首輪着けようとしてたでしょ。おにーちゃんを奴隷落ちになんてしたら戦争だからね?」


「ええ、分かったわ。奴隷落ちにしないよう通達しておきます。ふふ、楽しくなってたわ」


 ビアンカは話の分かる悪魔だ。どうせ私の事はオ〇ホと同じように思って見下しているのだろう。だけどそう悪い気はしなかった。


 それからビアンカとユウタの事を話していると、突然私の衣服が消失した。急いでシステムログを漁ってみるが、このスペースコロニーから存在が消されていたのだ。


「……どういう事かしら? 私の目を盗んでこのスペースコロニーから奪ったというの? しかもお気に入りのコスメセットまで。あなたが何かしたんじゃないでしょうね?」


「ひどーい! このビアンカちゃんがルナの下着盗んで喜ぶと思う~?」


「それもそうね……じゃあ冒険者しかいないわね。すぐに抹殺命令を出しましょう」


 スペースコロニー全土のアンドロイドに全ての冒険者の抹殺命令を下した。もちろんユウタだけは例外である。各地から届く冒険者の絶望的な声が心地良い。


「ルナったら過激だね~。冒険者っていうのは半分正解だけど、半分不正解かな~」


 ビアンカがニヤニヤと笑いながら見下して来た。冒険者が半分正解、つまり……!


「ユウタが盗んだというの!?」


「大正解~♪ おにーちゃんってば運の良さだけは誰にも負けてないからね。きっとギルドのガチャで引き当てたんだよ。よーし、ビアンカちゃんがルナのロンググローブ貰ってシコシコスプラッシュしてあげよ~っと。じゃあね~」


「…………」


 そう言って悪魔は消えてしまった。


 一人残された部屋で私は考えた、このままユウタを待つだけでいいのだろうかと。次にユウタが来るのは最短で一週間後、だけど運が悪ければ……?


 さっきビアンカが自慢げに話していた事を思い出した。魂の契約で結ばれたビアンカはユウタの居る世界に遊びにいけるらしい。どうにかして私も同じような事が出来ないかとスペースコロニー全てのリソースを使って導いた。








『お、お呼びでしょうかニャ。ルナ様……』


 演算の結果、この警備ロボのチロルを使う事にした。チロルはユウタから名前を与えられた事が後ろめたいのか、ビクビクと怖がっていた。その姿がユウタと少しだけ似ていて思わず笑みが浮かんだ。


「警備ロボ30241番…………今はチロルですか」


『ピギャー!? こ、これはアホな男が勝手に付けた名前でして……ミャーにはどうしようもなかったんですニャー』


「ふふ……別に怒っている訳じゃないから安心なさい。チロルには特別任務を与えます。ユウタから名前を与えられたあなたにしか出来ない任務です。やってくれますね?」


『ニャニャ!? ミャーだけにしか出来ない任務ですかニャ! お任せ下さいルナ様、このチロルが命に代えても任務達成してみせますニャン!』


 そう、これはユウタと絆を結んだチロルにしか出来ない任務だ。


「任務は簡単です。ビアンカが教えてくれた情報によれば、冒険者と特別な絆を結んだ者には冒険者ギルドから支援要請が来るそうよ。もしあなたに支援要請が来たらユウタを助けてあげて欲しいの」


『あのアホな男ですかニャ? 確かにアホ過ぎて手助けしてやりたくなる気持ちは分からないでもないですニャ。でも冒険者を助けてもいいんですかニャ?』


 やはりユウタの称号はチロルに対しても絶大な影響を及ぼしているようだ。ユウタが私達アンドロイドの求めていたご主人様に違いない。


「あなたにはスパイになってもらいます。ビアンカの話が本当だとした場合、ユウタは自分の世界にアイテムを持ち帰る不思議な能力があるらしいの。それを探り、その能力であなたがユウタの世界に潜入するのが任務です。これは二度とここへ戻って来れないかもしれない危険な任務、それでも受けてくれますか?」


『ニャオオオ! ミャーにお任せ下さいルナ様! ビシィっと完遂して見せますニャン』


 そうしてチロルの極秘任務が始まった。でもルナは思った。ユウタに出会う前のチロルはもう少し賢い言動をしていたような……こんなビシィっとなんていうユウタと同じような発言は無かったと。もしかしたらユウタと関わるとアホになる呪いでもあるのかもしれない。気を引き締めよう。




   ◇




『……みゃーみゃー、こちらチロル、こちらチロル。ルナ様聞こえてますかニャン? 繰り返しますニャン。こちらチロル……』


 チロルがユウタの所属するギルドに助っ人で参加した日から数日が経った。ビアンカの話は本当だったようで、持ち帰り金庫という謎のアイテムでチロルをお持ち帰りしてしまったのだ。


 そして遂に待ちに待ったチロルからの通信が届いた!


「ええ、聞こえているわチロル。良くやってくれました。そっちの状況を教えて頂戴」


『ニャオオオン! やっとルナ様に届いたニャン! この星はレベルが低すぎて通信の出力を上げるのに苦労しましたニャ……。まずターゲットについてですが――』


 チロルからユウタが暮らす惑星の情報や生活、そしてユウタのだらしない生活が逐一報告された。あどけない顔で眠るユウタの顔を見た瞬間、ルナの心が温かくなるのを感じていた。


 そして彼女である七海という女性との夜の生活が生々しい映像と共に伝えられた時、彼女がどれだけユウタの事を愛しているのかを見せつけられたような気がした。でも不思議と黒い感情は湧いて来なかった。ユウタが幸せそうな顔をしていたからだ。


 ユウタは自分のことをドSな男と自負しているが、騎乗位で一方的に責められて喜ぶ姿はMそのものである。私もあんな風にトロトロにしてあげたいと心から思った。


『――以上ですニャ。まさかこの広い宇宙の果てで繋がっていたニャんて思いませんでしたニャア』


「ええ、そうね。では引き続きユウタの監視を頼んだわよ」


 ユウタの居場所が分かった。あとは全速力でユウタの住む地球という星に行くだけ……。


「待っていなさいユウタ。私が徹底的に甘やかしてドロドロに溶かしてあげるわ」


 そうしてスペースコロニーという希望の船は進路を変えた。


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