閑話 乙女はショタに恋してる
私が指名した初めての人間は変な男だった。
「それでですねぇ、ボクは彼女にビシィっと言ったのです。今日はボクがバックで責めるから反撃しちゃダメですよって。卑怯かもしれませんがこれくらいビシィっと言わないと騎乗位を取られて負けちゃうんです」
「ふふ……面白いわね。それでユウタが激しく責めたのね?」
お酒を飲みだしてしばらくした後、顔を赤くして酔っ払ったユウタが武勇伝を話し出した。ホストがお客相手に自分の彼女とのエッチな話をするというのはアホとしか思えないが、内容がアホらしくて笑い話にしか聞こえなかった。
どうやら付き合いだしたばかりの彼女がいるらしく、その女性とのイチャラブ話を聞かされているが、ユウタの言っている事は誇張されているように思えた。
「……最初は良かったんですよ? こう、パチュンパチュンと激しい杭打ちピストンでリードしてたんです。七海さんも気持ち良さそうにアンアンと大きな声で喜んでいたのに、獣のように大きな喘ぎ声を上げた次の瞬間、ボクの愛棒がギュッとモグモグされて抜けなくなっちゃったんですー。そこからはいつも通りの展開でして、押し倒されたボクは成すすべもなく一方的に搾り取られてしまったのでした。でも奥まで突き刺してグリグリされるのは快感でした~」
「形勢逆転っていう訳ね。もしかしてユウタが必死にイクのを我慢している姿を見た彼女が興奮したのではないかしら? きっとだらしない顔だったのでしょうね」
「えー、イケメンなボクに限ってそれは無いですよ。いつもキリっとした決め顔が評判なんですー。こんな感じです。キリっ!!」
「プフっ、それが決め顔なの? 可笑しくてお腹痛いわ」
「ちょっと笑い過ぎですよ。こんな真剣な顔してるのにどうして笑うんですかー!」
自然と笑みが零れてしまう。ああ、今まで生きて来た中でこんなにも楽しいと思った時間はあっただろうか。他愛のない話なのにユウタと話をしていると心が躍る。それはとても幸せな時間であった。
……でも同時に湧き上がって来る未知の感情、このユウタという男に愛される七海と言う彼女に対する黒い気持ちが何なのか分からず戸惑ってしまう。これが嫉妬という感情なのだろうか……?
私の気持ちを知らずに惚気話を続けるユウタを見て思った。彼女を愛していると言う彼の中で、今の私はどのくらいの位置に居るのだろうかと。楽しそうに話しながら私の胸を興味津々に見てくるのだ、決して低い位置にいないだろう。
「そうだわ、これから簡単なゲームをしましょう。ユウタが勝ったらアフターしてあげる」
「ゲームですか? ボクが負けたらどうなるんですか?」
「どうもしないわ。アフターは無しなだけよ。どう?」
「それならやりますー!」
嬉しそうにはしゃぐユウタの白い首筋に手を這わせた後、魔法の首輪を取り付けた。一瞬、ほんの一瞬だけ白い首筋を舐めてみたいと思った私はどうかしてしまったのかもしれない。
ユウタには奴隷の首輪と言ってからかうと、想像した以上のリアクションで慌てる姿がまた楽しかった。
そしてこの首輪は本人の思考を読み取り数値化する機能、つまりユウタの中で私がどれくらい好きな女性なのかを調べる事が出来るのだ。その結果……。
「ふぁっ!? 何ですかこれー。七海さんが50%なのはいいとして、ビアンカちゃんが30%!? しかもルナ様まで入ってますよー」
「……へぇ。貴方ったら彼女を愛してるなんて言いながら随分と浮気性なのね? あら、私まで入っているじゃないの」
予想外の結果に焦る気持ちを落ち着け、平静を装った。でも内心では私が入っている事よりもビアンカというあの悪魔の名前がある事に驚きを隠せずにいた。古い付き合いのあるビアンカとは気が合った。サキュバスの癖に餌である男を厳選している変わり者の知人だ。ユウタが一方的にビアンカの事を好きだというのならいいが、もしビアンカの男だとしたら……。
「っ!?」
ふと、遠くから鋭い殺気のようなものを向けられた。殺気の元を辿れば、一人の悪魔が笑顔で私を見つめていた。その笑顔はまるで『私の男に酷い事したら戦争だよ♡』と言っているように見えた。
このユウタという冒険者は、あのサキュバスクイーンのビアンカをも惹きつけるナニカがあるのだろうか。そう考えたらもっと知りたくなった。このユウタという男の秘密を……。
ビアンカに軽く手を振り了解の合図を送り、ユウタを口説くゲームをした。……だけどゲームは私の負けであり、彼の気持ちは変わらなかったのだ。私が初めて伝えた愛の告白を受けても彼女への気持ちが揺らがない結果にイラっとしたが、エロいことばかり考えているこの男なんて体で教え込めばすぐに堕ちると思った。
「あ、あのっ、アフターってもしかしてエッチなやつですか……? ボクには彼女が居るのでそのぉ」
口ではダメだと言いながらも嬉しそうにするユウタの手を引きながら私は思った。ああ、これがユウタを気持ち良くしてやりたいと思う彼女の気持ちなのか、と。
◇
「ら、らめぇ……しょこばっかり擦っちゃ我慢出来ないですぅ……あうぅ」
ベッドの上で膝枕をしたユウタの頭を撫でながら、左手で彼の逞しいモノに指を這わす。先っぽを重点的にマッサージするように、強くもなく弱くもない絶妙な力加減で刺激していく。
くすぐるようにリズミカルに指を動かすたびにユウタの口から零れる切ない声を聞くと、私の中に存在していなかった新たな感情が芽生えていくのが分かった。この気持ちの名前はなんだろうか。
「あら、ここが気持ち良いのでしょう? 遠慮する事なんて無いわ、全部受け止めてあげるからイってしまいなさいな」
手の平を先端に当て、円を描くように転がすと面白いように体が震え出した。ああ、ずっとこうしていたい……。
「らめっ、それはむりむりーっ、あのっ、このままじゃボク情けない感じになっちゃいますー!」
「ふふ……早漏を克服したいのだったわね。じゃあほら、私の胸で気を紛らわせなさいな」
「ふぁぁぁぁ……チュパチュパ」
ユウタの体を起こし私の胸に顔を寄せるとドレスの隙間から胸を吸い出した。まるで赤子が初めて母親の母乳を飲むような自然さで吸い付くユウタを見て、これが母性本能というモノなのかと驚愕していた。
いい子いい子と頭を撫でながら幸せそうな顔をしたユウタを見つめていると自然と笑顔が浮かんでくる。今まで知識でしか知らなかった感情……これが愛なのだと初めて分かった。
ユウタが可愛すぎるあまり力加減を間違えてしまった時、体を大きく震わせてビクンビクンと大きく腰を突き出した。
「――う゛うぅぅぅぅ」
「あらあら、ちょっと強くし過ぎてしまったわ。ごめんなさいね」
左手で受け止めた大量の白濁汁はゼリーのようにプルンプルンで熱かった。これがユウタの遺伝子……。バレないようにコッソリと保管しておくことにした。
「はうぅ、やっぱりボクはダメダメなんです。ルナ様……どうやったら強い男になれますか?」
「そうね……」
薄っすら涙を溜めて瞳をウルウルさせるユウタを見て思った。この子が強くなる事は無理だろう、と。この男は天然の女たらしだ。可愛い容姿に愛らしい言動、特定の趣向を持つ女性にはクリティカルヒットするその魅力は猛毒のようだった。きっと七海という女性もこんな彼の顔が見たくて女性上位なエッチをしているのだろう。
私は理解した。この子は特別だと。アンドロイドの神である私をも魅了するナニカがある。そしてサキュバスクイーンのビアンカまでも魅了するナニカが……。
「何事も経験を積むのが大事よ。ユウタの好きなゲームだって経験値を貯めてレベルアップしているでしょう? だから焦る事はないわ。私がいっぱい手伝ってあげます。さぁ、時間も無いので少しハードに行きますよ。今日は我慢する必要ありません。全て私に身を委ねるのです」
「ルナ先生っ!! …………って、あれ? 何でロンググローブ外してるんですか? ええっ、ローションに浸したロンググローブを被せちゃうんですかー!? ちょっ、まっ、らめっ、ああああっ!!!!」
ユウタの愛らしい声を聞く度、心の底に封印されていた感情がどんどん解かれて行くような気がした。




