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73.実食

読んで頂いてありがとうございます。続けて更新できるといいのですが・・・。

 じっくりコトコトと野菜スープをじっくりと煮込んでいる間に・・・。


「---で、貴方の名前は?」


 お鍋の中をこまめに掻き混ぜながら、コトコト・・・。野菜の形がトロリと崩れるまでじっくりと。


 力なくうなだれた赤茶色の髪がビクッと跳ねた。手足は鎖でつながれたままだけど、ココン様に猿轡を取ってもらったのだから、言葉は話せるはずだ。


「・・・ルイズだ」

 少し頭があげられ、ぼそりと答えてくれた。・・・いい年をした青年が、そんな上目使いに私の様子をうかがっていた。---って、言っても調理台の上に繋がれているのだから、視線は私の上にあるのだけどね!伸びた前髪から覗き込むように観察されるなんて、カーテンの隙間から覗き込んでいるのと同じだし、私が顔を上げれば、顔は丸見えなんですからね!!・・・まぁ、そんな事はどーでもいい。


「ルイズね~。私はキャロラインよ、よろしく。ねぇ、どうして、あの二人に食材として捕まったの?」


 良い具合に煮込まれたスープをスプーンですくい取り一口。うん、まずまずです。


「---はい、味見!口開けて」


 ルイズが私の質問に答えようとしていたけど、・・・少し空いた口に、スプーンを一気に口に突っ込んだ。熱くはないと思うよ・・・少し冷ましたよ。


 一瞬ビクッとした割には、少し落ち着いたのか。強張った顔が少し緩んだ気がした。


「どう?おいしい?」


 ---まずい!って返事は聞こえなかったから、まずまずとしておこう。


 理由なんて、まあいいかなぁ~ここであの二人より強い生き物は居ないのだから。






「では、食べてみてください」


 サディディアとヴァイの前にコトッと、スープの皿を置く。ゆっくりじっくり煮込んだ野菜スープ。ココン様の隠し食材から見つけた鶏肉の燻製も入れてじっくり煮込みました。中身は濾してある。

 成人男性の為の料理として、ガッツリ味の濃い料理にしたら舌と胃がびっくりしてしまうかと思って、最初は優しい野菜スープです。


 ・・・だって、魔力を取り込んで生きている魔族。しかもここは一番魔力が一番多い場所。胃袋はほとんど使ってないはずだからね。


 最初の一品は、野菜スープ。ハムサンド、アップルシャーベットを用意しました。今ある食材で作れる料理なんてたかが知れているのだ。


 勿論、ヴァイの前にも同じ物を用意しました。


 ・・・スプーンもお皿もなくて、困ったんだよね。ココン様の隠し倉庫という名の異空間に一通りの食器も仕舞われてあって驚いたよ。まぁ、助かったんだけどね。なんでもかんでも閉まっておくのもどうかと思うんだけど、今回は結果オーライ。それでもお家に戻ったら整理整頓してもらう!と心に決めている。


「・・・では、まず私が---」

 と、ヴァイがスプーンを手に取り一口・・・口に入れる前に


「---ふむ」

 おい!ヴァイの一口を待たずに口にしたよ・・・この魔王様は!危機管理はどうなっているんだ!腹痛おこしても知らないよ~。


「何?ふむって・・・それが感想?」


「---初めての味わいですね」

 と、ヴァイ。


「---それはどうも」


 そりゃそうかもね、初めての味わいでしょうとも!初めて固形物食べたんだろうから!!

 ふー・・・私の苦労は一体なんだったんだろう。もっと簡単で時間のかからない料理で良かったんじゃないのか?この二人に食べさせる分には!


 そうだよ!食事する必要ないっていっても、飲み物は飲むんだから胃は使っているってことだよね!!強靭な魔族なのだから、気を使う事が無かったんじゃないかな・・・と淡白な反応に心の中で愚痴ってみた。


 ハムサンドもアップルシャーベットも似たような反応で・・・まぁ、つまらないね。


 黙々と食事を終えた二人。私の努力と気遣いと、その他もろもろの何とも言えない感情を混ぜ込んだ料理は、大した感想も感激も何もなく・・・こんなものか?!的な雰囲気の中、終了した。



「何か飲み物はないのですか?口の中のこの味は消しておきたいですね・・」


「じゃあ、これをどうぞ」


 私が、ココン様に出してもらったのは赤ワイン。・・・あの二人にオレンジジュースとかリンゴジュースとか似合わない。


 グラスの中身をくるくると回しながらヴァイの口元が弧を描いた。


「・・・赤ですか、何かを連想させますね」


 ぞわっ・・・いや何!!・・・鳥肌が!!


「そうそう・・・調理場のアレはどうしました?使っていないのであれば、いま役立てましょう」


 アレ?アレって?!・・・ルイズの事?!何に役立てるの~!!


「-----!!!ダメですよ、私がルイズに料理を教えるんですから!」


 やだ!何この人、怖い!


「・・・ルイズ?アレの名ですか?興味はありませんが、使うのであれば手出はしませんよ」


 全く興味がない物言いで、ある意味安心した。


 そんな私の事などお構いなく、サディディアは私の用意した赤ワインをじっくりと観察した後、軽く一口。


「・・・なんだ、血では無いのか?そなたのものでも良いのだぞ、一滴でも芳しく心踊らされる逸品でかわるであろうに。---・・・無いのか、残念だ」


 思わず一歩あとずさる。


「-----こわ!・・・さらりと恐ろしい事言うな!」


「---そうですね。では、代わりに血の滴るような噛み応えのある新鮮な肉をお持ちいたしましょうか?---何か物足りないのですね」


「味は別段問題ないが、・・・全く魔力が感じられないと何とも言いがたい」


「・・・そうですね、やはりあの者を連れて参りますか?」

 何を・・・言っているんだ?連れて来て何をするつもりなの?


「いや、その必要はない。---キャロライン手を」

 私はヴァイに意識を向けていて、深く考えもせずサディディアに言われるがまま手を差し出した。


「いっつっ、何するんですか!!」


 指先に針を刺したような小さな傷が・・・プクリと血がでた。


「ここに---」


 掴まれたままの私の腕とは反対の指でサディディアが指さしたのは赤ワイン。


「???」


「入れろ」


「???はぁ?」


 サディディアは、私の指先をギュッ掴み、血を絞りだした。痛いから!抗議の視線は、無視されポタンポタンと、血が滴り落ちた。


「いっ---地味に痛いから、止めて!」


 サディディアの手を思いっきり振りほどいた。


「それは良いですね、私にもお願いします」


 と、ヴァイに再び指を掴まれ、血を絞り出した。了承してないから!本当に痛いから!!


 私の抗議は無視!やっと自分の手を取り戻した私は、ボー然と二人の様子を見るしかなかった。


「うむ、良いな」

「これはまた・・・」


 何それ怖い!私は無事に帰れるの?本当は吸血鬼なんじゃないの?ヴァイから自分の腕を取戻し、ギュッと身を縮めた。


 ここは献血ルームなの?


 ダメだ、この二人は・・・。


 ささっと、ルイズに料理を教えて退散したかったんだけど、無理そうだ。





 部屋に帰った私は、一人反省会を開く事にした。・・・もう一人?一匹いるだろうって?だって考える事は苦手なのか、放棄しているのか、取り敢えず聞き役に徹してもらう事にしました。

 あれっ?って思うところだけ突っ込んで聞いてもらえれば、考えもより深まるでしょう?!少しは役にたっていますよ、ココン様もね。


「・・・一口食べた感想が・・・フムッ、って・・・ちょっと屈辱なんだけど・・・。しかもなんなの・・・あの献血タイムは、あり得ないでしょう!」


 魔族は、魔力が必要。・・・魔力を取り込む為に食べる。但し、空気中の魔力の少ない場所に限る。


 ・・・あれ?ココン様は魔獣・・・白狼でしたよね?詳しくは知りませんが。しかも尻尾が9本!自分で高位魔獣だって言っていた。そのココン様の魔力はどうなっているんだろう?


 此処では大丈夫だろうけど、私と一緒に生活していたのなら魔力の補充が必要だったはずだ。でも食生活では魔力は補充されないと思うのだ。---だって、食事の中心がマヨネーズだから・・・。---残念な白狼様だ。子犬だと思えばかわいいのだが、狼だからねぇ・・・。


 ここで一つ疑問が生まれた。


「---ココン様は、私の家で生活していた時、魔力の補充はどうしていたのですか?」


 フン、とそっぽと向いて、さもつまらなそうに答えてくれましたよ。


『・・・この姿であれば、主の傍にいる分には問題ない』


「・・・?それって---?」


『この姿は、魔力の消費を少なくて済む上、周囲に警戒されずに済むのだ』


 簡単に言ってしまうと、魔族の様に人型ではない為、そんな大量の魔力を必要としていないのだそうな。それに今の姿は超魔力節約モードなそうで、特に魔法を使用しなければ普通の獣と同じ生活をしている状態なので何ら問題もないらしい。

 ---食い意地に負けて、私に言われるがままに魔法を使用していたと思うんだけど・・・それは大した問題ではなく、そのうち自然回復するくらいの微々たるものなんだそうな。・・・人間が生活する場所にも魔力があるのだから。まあ、それで事足りたのだろう。


『我がいかに高位魔獣だとしても、魔王程の魔力は有していない!!・・・我は役立たずだ』


 フン!と、ややお怒り気味だ。誰もそんなことを一言も言っていない・・・被害妄想だ。


 ・・・別に、「なあぁんだ、魔王様と比べたら下位の魔物なんだね~」とかそんな事は微塵も思っていない。今の発言で小さい男?雄?だなあ・・・と思ったくらいだ。


 私のココン様としては、ここはどっしりと頼りになる男を演じで欲しかった。魔族・魔獣としての順位はどーでもいいので。


 結局のところ、ココン様のような魔獣は、人間たちの住んでいる場所でも獣として生活するのであれば少しの魔力で事なんとか事足りるし、魔力蓄える植物があるのでそれを食べているんですって。たまに---秘密のスポット魔力の多いところでマッタリ一休みしてみたり。


「・・・ココン様は私の料理で満足出来て、あの二人が満足できない理由ってなんだろう?」


『---身を以て知ったであろう?食事に含まれる魔力が足りないのだ・・・主は食事の都度、己の血を混ぜるのか?』


 そんな怖いココン様の一言。---それはイヤ~!!


 食物に含まれる魔力の量が足りないから物足りないって・・・魔力を取り込む為に、魔獣を食べるんだもんね。魔力の少ない魔獣だと量を沢山食べないといけないんだもんね。


 ・・・でもさぁ、このお城って魔王様がいるから、魔力が多いって言ってなかった?必要なくても口に入れて魔力を補充するんだから魔力が含まれてなくてもいいんじゃない?・・・あれか、出汁がきいてない?なんだか一味足りないね?って事なのか!?


 ---えーなんだか、めんどくさいな。

 魔力沢山料理って、愛情たっぷりとかと同じレベルでめんどくさい・・・魔王様とか上位魔族向けとかは無視していいかな。この国の食材集めて料理する方法で!


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