71.・・・しまった、迷子です
「・・・ここは何処だろう?」
ココン様が隠し持っていた食材の中から、香辛料と小麦粉、おやつを個々に袋に入れて準備完了。これを手に持ち、部屋を出て30分程・・・階段を上がって下がって・・・ここはお城の何処なのだ?
そもそも、生まれてこの方前世も含めて王城なんて入った事がない。日本の城は入った事はある。子供の勉強と少しでも歴史に興味を持ってもらえれば勉強も楽しくなるよね?と観光しましたよ。---そんな親の思惑も無駄な努力でしたけど・・・今はそんな事はどーでも良い事でしたね。
はっきり言おう!迷子です!
・・・迷路、迷宮っていうのですかね。昔読んだ本に書いてあったなぁ・・・王城は迷路の様になっていて、敵が侵入してきても簡単に王の下に辿り着けないようになっていると・・・!!
ここもそうなのですか!?
・・・魔王様はチートだからそんな迷路設定必要ないよね!?ほんと無駄な事はしてほしくない。
・・・私のお供はもちろんココン様。ココン様が言うには、私の匂いを辿れば元の部屋に戻る事が出来るという事ですが---それでは意味がありません!!
「・・・他に良い案は無いですか?」
『・・・強力な魔力は避ける事が出来る』
と、歯切れの悪い物言いだ!
「・・・あの二人の場所は分かるという事ですね。分かりました・・・避けましょう」
---私の中で、あの二人との遭遇は有り得ませんよ!・・・まぁ出会っても文句とハゲの呪いをかけるだけですけどね!
「・・・この部屋も空っぽだね」
これまでも、途中にあった部屋やこれは隠し部屋なのって感じの小さな扉の中など、調べたけど何もなかった。
・・・あれこれ歩き回る事、そして30分、もうヘトヘトです。
そもそも、1年寝ていたのにこれだけ歩けるだけ凄い!それを1時間!普通ならありえないだろう!
「もう、歩けない・・・ちょっと休憩、ココン様は周囲を警戒していて下さいね」
はぁぁ~、一休み。
物置だろうか、小さな扉の大人一人入れるくらいのスペースに中に体を滑りこませ私は膝を抱えて蹲る。
少し休もう・・・と、目を閉じると急に睡魔に襲われた。少しだけ・・・寝てもいかな。
「人間の城を模し作っただけで、此処には誰も居りませんが・・・。あの手に持った食材は何に使えのでしょうか?」
「・・・飽きずによく歩き回る」
サディディア様は、スッと腕を上げ、石の壁に背を預け眠る人間の子供を浮かび上がらせた。
そのまま、元の部屋へと転移させるのかと思っていたが、胸元に引き寄せ・・・中へと入れた。
「・・・水か」
子供の顔を見たサディディア様が静かな声を零した。
マントの内に収まった子供の目から水が・・・流れ落ち胸元に吸い込まれ、小さな跡になる。
すぐに取り去ろうと「失礼いたします」と、指を伸ばす前に制された。
「・・・よい。---このままで良い」
そして、そのまま部屋へと移動した。
サディディア様、自らの手を動かすとは---面白い子供を見つけた。
足元で、我らの行動に驚きつつも、主人の為に---という意志をみせる白狼。
「---働け」
我が主---サディディア様と己の主人の為に。
・・・薄暗くて、ヒンヤリと冷たい空間で、私は光を求めて歩いていた。
「---ココン様?何処なの?・・・お兄様、ガイ、ランセイ!!一人は嫌だよぉ~」
シクシク泣いて歩いたって、光が見えないから何処に行って良いのか全くわからない。そんな状態で歩いたって意味ないし、どうせ夢だって心の片隅で思っている。
だからだろうか、幼い子供の様にうろうろと意味もなく暗闇を歩いてしまうのは・・・頭で考えるのではなく、とりあえず心に任せて夢の中を歩き回る。
「・・・寒い」
ううぅ~っと、体を小さく丸めて冷たくなった手に息を吹きかけると、ふわりと体が浮かび上がり、少しあたりがあかるくなり、はぁ~とあくびが出た。
暖かな何が隣にあって、---お庭でお昼寝しているみたいな・・・。
縮こまった体を伸ばし、身をまかせる事にした。
ゆらゆらと水面に漂う船の様に心地よい揺れと、陽だまりの様な温もりが気持ち良くて・・・ムカッとする二人の声が聞こえた様な気がしたが、さっくりと無視する事にした。
だって、こんな気持ちの良い陽だまりで、むかつく相手は思い出したくない・・・・・。
やっぱり、魔王様は夢だ---悪い夢。
そんな事あるわけ無いじゃん。魔王様が自ら誘拐なんてね。
やけにリアルで面白かったから、みんなに聞かせてあげよう。---そして笑い話にして・・・くふふふふっ。
「・・・---あ~、よく寝た。ねぇ変な夢をみたの~聞いてよ」
って、私が朝起きる時にいるはずのメイドの誰かに向って話しかけた。
エリーなら、話が膨らむから楽しく話せるのだけど---誰かな?なんて思っていたけど・・・。
「・・・聞いてやろう。話してみよ」
って、夢が覚めてない!
隣で横たわる男に驚愕した。
乙女のベッドに入り込むなんて言語道断!
丸投げ男はお呼びじゃないのだよ!
「・・・なんだ、遠慮は必要ない」
無駄に色気を撒き散らし、片腕を枕にして目を細める。
うん、お兄様やギルベルトさんからの耐久性で通用しませんよ。
じゃあ、ありったけの文句を聞いてもらいましょうか?!
取り敢えず、誘拐した私を放置した件、食材もない、調理場もないのに丸投げした件、私の食事を忘れた件、そして乙女の寝台に横になった件だ!
ほんと、有り得ない事だらけなのですけど!!
絶対逃がさない!とばかりに、文句を言った!私はやりきった!
・・・その筈なのだけど、終始目元を細め、ほんのちょこっとだけ口元が弧を描いていた。本当に・・・ちょこっとだけ。
・・・あれ?なんだか機嫌良くないか?---これが生暖かい目なの?!
と、思ったら文句を言っているのが馬鹿馬鹿しくなった。
---だって、反応がさぁ~。文句言っても反応が微妙だと意味がないよね。
暖簾に腕押し?・・・聞いてないのか頭の上を滑っているだけな感じ。
・・・私が疲れるだけだ。
「なんだ?もうお終いか?---他に要望はないか?」
だって・・・それじゃあ、文句言っても意味ない。建設的に要望をした方がいい。
「私だけが料理を作ってもこの国に広がらないので、料理する人を寄越して下さい。後、調理場と食材です」
「わかった。・・・用意しよう」
おっ、わかってもらえて良かった、話せばわかるのか?サッサと料理人育ててこの国からおさらばしよう!




