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63.私の妹

カボチャ料理を作る!の前にお兄様です。

 私の名はカインセミュー。ランドルフ侯爵家の嫡男だ。

 ---私には、とても大切にしている妹がいる。


 妹の名はキャロライン。キャロラインが誕生した頃、当時4歳だった私は妹が生まれた事をとても喜ぶ両親と屋敷の者達をみて、妬ましく思った。


 皆、朝も昼も夜も一日中、妹との事ばかりなのだ。


 生まれて1日、2日しか経っていない、赤子など、泣いて・ミルクを飲む・寝るの繰り返しなのだろう---可愛いものか!


「本日も静かに目を覚まされ、お休みになられております」


 僕は、毎回繰り返される乳母やからの報告を、ウンザリとしながら聞いていた。・・・同じ内容の報告が、毎日繰り返されている事にも気付く事なく一週間程、経過していた。


「お父様---僕はお母様には、いつ会えるのですか?・・・まだ、お部屋に行ってはいけ無いのですか?」


 妹が生まれてから僕は、お母様に会っていない。直ぐにでもお母様に会いたかった・・・でも、妹が生まれ兄になったのだからと気持ちを抑え・・・一週間待ったのだ。


 お父様は、少し考えた様だったが、僕の手を取りお母様の部屋に一緒に行ってくれた。


 僕の気持ちは、一週間ぶりに会うお母様と初めて妹に会うという、ちょっと特別な出来事で、ドキドキした気持ちで一杯だった。


 お母様とあった僕は、いつもと変わらない優しい笑顔にホッとし、心の中一杯に満たされた温かい気持ちで、ベビーベッドで眠る妹の顔を覗き込んだ。



 すうすうと、静かに眠る妹は、僕と同じ髪の色をしていた。白い肌に薄っすらとピンク色に色付くふっくらとした頬っぺたに、思わず指を伸ばす。


 ツンツン---起きるかな、気付いて欲しい・・・、でも目が覚めたら泣いてしまうのではないのか?と少し不安になりながらも数回頬っぺたを突っついた。


 ---始めは恐る恐る・・・次第に大胆になり10回目だ。


 静かに閉じていた瞼がピクリと動き・・・ゆっくりと瞬きを数回した後---明いた!瞳の色は、深い・・・濃い青だ。瞳の奥が、キラリと輝いた気がした。


 ---なんて、綺麗な瞳なのだろう。


 僕は、この瞳の輝きの虜になったのだ・・・。


 ジーッと僕は妹の瞳を覗き込む。逸らす事をせず、キャロラインは、ジーッと僕を見つめている。・・・キャロラインの瞳に僕の顔が映っていた。


 時折手や足を動かし、口を動かす。僕は飽きることなく、キャロランの傍でその日一日を過ごした。






「---カイン、キャロラインは可愛いかい?」

 お父様は、夕食の時に僕にそう尋ねてきた。もちろん、僕の答えは決まっている!


「とても、可愛いです!明日もキャロラインの傍に居てもいいですか?」


 許可が下りたら、一日中同じ部屋で過ごしたい!・・・勉強の時間も側で出来たら良いのに!


 お父様は、少し困った顔をして・・・溜息を一つ。


 ---僕は、困らせるつもりなないのだが・・・何があったのだろう・・・?と首を傾げると、お父様は言葉を続けた。


「---キャロラインが泣き声を上げたのを見たかい?」


「いいえ、とても大人しくて良い子でした」


 僕は、お父様の問いに疑問は感じなかった。・・・泣き声は聞いていない。


「キャロラインは僕と瞳をあわせるのが好きなのです!」


 僕はキャロラインが大好きで、キャロラインも僕を気に入っていてくれているって、お父様に伝えた。


「そうか・・・ならば、一緒に遊んでおやり。優しいお兄様でキャロラインは幸せ者だな」


 と、お父様の許可が下りた。


「はい!」

 僕はお兄様だ!キャロラインの好きな物を沢山探して、いろいろな事を教えてあげよう!


 それから毎日の様にキャロラインの元へ足を運んだ。


 キャロラインは、キョロキョロと瞳を動かし、次第に頭や身体を動かし始める。いろいろの物に興味があるのか、起きている時は大忙しだ。・・・その後、疲れたのかボーッとし、いつの間にか寝てしまう。


 時折むずかる素振りを見せ、不快な顔をしていたが、泣く事がない、とても大人しい赤ん坊だ。


 ・・・そんな時は、乳母やメイドに声をかける事になっていて、僕の出番はない。


 そんな日々が続いたけど、暫くして・・・お兄様である僕にも仕事が出来た。


 キャロランにご飯を食べてもらう、仕事だ。

 お母様は、「大好きなお兄様が美味しそうに食べていると、真似して食べたくなるものですよ?」とおっしゃったので、僕はキャロラインに食べてもらえるように、昼は食事を一緒にする事にした。


 そして、僕は、キャロラインの食事係りとなった。


 キャロラインにスプーンで口元に付けると口を開いて食べる。好みに合った食事があれば、少し口元に笑みを浮かべる事もある。


 でも、僕は最近になって気が付いたのだ・・・僕が聞いていた生まれたばかりの赤ん坊の様子とは違う、という事に---。


 僕が聞いていたのは、笑ったと思ったらすぐに泣いて、髪を引っ張り、手足を動かし、大忙しなのだと言っていたのに---キャロラインは、半年経っても、その様な行動はなかった。


 ・・・僕の前だけなの?・・・僕の居ない時には泣いたりしているのかな?


 僕は、いろんな時間にキャロラインの元を訪れる事にした。


 キャロラインは、時折瞳を輝かせ、キョロキョロと頭を動かし、いろいろな物に興味を示したかと思えば、急にボーッとし始め、眠ってしまう。


 ・・・いつもと、変わらないな。


 一日中ボーッと過ごす時間が非常に多く、喜怒哀楽に関して反応があまりない。


 眠っている時には、笑みを浮かべる事もある。

 だけど、音に反応して興味をもつ、ぬいぐるみや積み木などの玩具には見向きもしないし、食べ物にも反応が薄いのだ。


 キャロラインが一人で座れる様になった頃、僕は絵本を持って行った。読んで聞かせると、瞳が輝いてみえた。


 その読み聞かせは、楽しい時間で、ズーッと続けるつもりだった。


 ・・・だって僕はお兄様だから、キャロラインは妹で僕が守るって決めたのだから。他の子供と違ったってキャロラインは僕の大好きな妹なのだ。


 でも、それは2年程・・・キャロラインが3歳になった翌年の春、終わってしまったのだ。




 僕は、8歳になっていた。




 僕は・・・私は、同じ歳の皇太子殿下のご学友として選ばれ---王城で生活する事が決められた。


 私は、キャロラインの側に居たいと願ったけれど、お父様が「キャロラインの自慢のお兄様になる様にしっかり勉強するように」と---。


 最近のキャロラインは、何かに反応しては、周囲をキョロキョロと観察したり、口をモグモグと動かし言葉の練習をしたり、庭に出て、風の音に耳を澄まして楽しんだり、共に過ごす楽しみが増えたのに---。


「時間を見つけて会いに来るから・・・お土産はキャロルの好きな絵本にしよう!」

 そう耳元で約束して王城へと向かった。






 王城での生活は単調だ。


 朝は剣を振り、王子を護る為の鍛錬を---。

 その後は、様々な勉強が行われる。礼儀作法・歴史・語学・算術・魔法魔獣学・ダンス・乗馬・教養などの時間が一週間の間に割り振られている。


 王子の公務が入る時は、伴をするのも学ぶべき事になる。


 そんな王城の生活に慣れるまで、時間に追われる日々を過ごしてきたのだが、街に出る機会があればキャロラインが好きそうな絵本を探しお父様に届けてもらっていた。


 私が---読んで聞かせてあげたい!


 そんな事を言える訳もなく、キャロラインが瞳を輝かせる姿を思い描きながら日々を過ごし---この生活に慣れてきた頃、知らせが届いた。




 キャロラインが、勉強を始めたと---。




 お父様からの手紙には、突然の事だったと・・・。メイドに突然話しかけ---急に行動的になったと、言うのだ。

 しかも様々な文字の本に興味を持ち、庭にも出て歩く様になった・・・と。


 だが、最初の一言は、聴き逃したと言うのだ。


 ---やはり私が側にいるべきだった!!


 私は外出願いを出した。数日の帰宅願いだ。直ぐに許可が出ると思っていたのだが、何故か王子の公務の予定の調整が行われ予想外に時間が掛かってしまったのだ。


 そうして、私が帰宅するのが遅れのせいか愕然とさせる出来事が待っていた---。


 ギルフォードが、キャロラインの側で共に勉強を始め、あろう事か・・・「フォードお兄ちゃま」と親しげに呼ばれていたのだ。その姿はまるで本当の兄を慕う妹の様に---。


 容姿は全く似ても似つかない二人・・・だが「フォードお兄ちゃま」と呼ぶその姿に嫉妬した。


 ギルフォードは---私の場所を奪ったのだ。


 私は、キャロラインの傍に言って声を掛ける事も出来ず、呆然と立ち尽くした。


 ・・・何故、私は傍に居なかったのか・・・あと半年傍に居られたなら・・・と、どうにもならない感情に囚われていた。


 その隙に・・・アルフレッド様が---・・・茶会に来ていた子供らに絵本を読んでいたギルフォードに声を掛けていた。

「なんだ、その現実離れした、まるで夢物語だな・・・そんな子供だまし面白いのか?」と---。


 キャロラインがギルフォードに読んで欲しいとお願いをしていた本の内容にだ・・・。

 確かに現実的では無いにしろ、絵本なのだから---夢を見せてもいいのではないかと私は思うのだが、私は動けずにいたのだ。


 ・・・ギルフォードに寄り添うキャロラインの姿に愕然とし、ギリッ・・・奥歯をかみ締めていた。怯える姿に気づかず、キャロラインが涙を流したのを見て、ハッと我に返った。


 ・・・こんなところで何をしているのだ。キャロラインが怖がっているではないか!


 結局、私は・・・アルフレッド殿下を傍から離すしか出来ず、こともあろうかギルフォードにキャロルを頼む事になったのだ。


 私は、何と情けない兄だ・・・涙ではなく・・・---笑顔を見に来たはずだ!



 あれから4年・・・アルフレッド様と行動を共にする事で、キャロラインと二人でゆっくりと話す時間が無かった。---でも、もう良いのだ。



 今日はこれからキャロラインと共に二人の時間を取り戻すのだ。


 アルフレッド様はシシリア様との時間を楽しまれ・・・私はキャロラインとの時間を過ごすのだから。


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