62.私の名は・・・
王城で生活するお兄様が偶に帰ってきて一緒にお茶をしたり、お兄様に金魚の糞のように付いて回るレッドがいて騒がしかったり、ココン様にお願いして小鳥達に水辺に実る麦のような植物の捜索願を出したりして、のんびり~まったり~と日々過ごしていた。
平和だな~と毎日を過ごしていたら、・・・レッドが、いつもと違う服をきてやってきた。
---あれだ、王子様っぽい格好だ。・・・って、元から王子様だったね。・・・王子様らしくないからって、忘れていたわけじゃないよ?
生意気にも、ナイスバディなお嬢様をエスコートしてきた!---婚約者のロックラルド公爵家のシシリア様と一緒だ。
今日は何かあるのかな?
「ごきげんよう、レッド様。シシリア様」
すっと立ち上がりお嬢様らしく、淑女の礼を---。
シシリア様は、右手をレッドに預けたまま、同じ様に挨拶を交わす。
さてはて、こんな大っぴらにシシリア様の手を取って、私の目の前にやってきたのは初めてだ。しかも、後ろに従者のサリジャスさんも引き連れている。本当に---王子様仕様だね。
今までのお茶会には、シシリア様だけが参加していてレッドはちょっと覗くとか、もしくは、どちらかが参加していないなどで、レッドとして接点はなかったのだ。
それが今日に限って?首を傾げていると、レッドが、「あー・・・・、学園に入学する前に」と、頭を掻き掻き話し始めた。
やっぱり中身は王子じゃないね、と苦笑しそうだ。
「---キャロラインには言っておかなければなら無い事がある。私の名は、アルフレッド・レギンレイヴスという。・・・レッドというのは、城を出て自由に外の世界を学ぶ為に使っていた、もう一つの名なのだ。長年に渡り、黙っていてすまなかったな!」
と、頭を下げたのだ。
いや、マジで?!私が気付いてないと思っているのか?---いろんな意味で本当、驚いた!
ポカーンと、した私を見て、状況が掴めて無いと思ったのか、レッド、改め、アルフレッド殿下が、言葉を重ねた。
「其方も聞いている筈だが、シシリア嬢がこの国の王子と婚約した事を知っていると思う。自分で言うのもなんだが・・・私がその王子なのだ!」
と!
・・・知っているよ。
そもそも、お兄様よりも偉そうなのだから、同年代で位の高い子供って限られているんだから!もう、よく考えれば分かる事だよ!
今更そんな事言うから、驚いちゃったよ!・・・最初の出会いの時にギルフォードから聞いてたから、知っていたよ?
---でも、ここは乗ってあげるのが大人の対応だよね。
「---びっくりしすぎて、言葉が出ませんでした。本当に王子様なのですか?!」
と、胸の前で両手を組み俯いてみせる。
よし!これで顔は見え無いね!
「もう、気安くお名前をお呼びする事などできませんね。・・・少し寂しいです」
少し後ろに身をよじり寂しい雰囲気を演出はする。
ダメだ---笑ってはいけない。しんみりとした雰囲気をだすのだ。
「・・・我ももっと早くに本当の名を明かさなければならかったのだが---この様に遅くなってしまった。・・・いや、このまま気安い関係でいたられたらと、思ってしまっていた。だか、もう子供ではいられない歳になったのだ。・・・許せ」
あら、まともな返答だね。・・・シシリア様が一緒だからかな。
アルフレッド殿下は、私にそう告げると、シシリア様と微笑みを交わしあっていた。
・・・うん、まあ、仲良しで良かったね。
もう、私と婚約したいなんて事は、言わ無いだろう。よしよし!!
「シシリアと共に我とも一層懇意にな!」
・・・シシリア様は歓迎するけど---、アルフレッド様は嫌だな、変なフラグ持ってそうだから!!
と、思いながらも、にっこり笑顔を浮かべなければならないこの状況。
えー、シシリア様は良いけど、アルフレッド様は嫌です!って言えないのだ・・・。
めんどくさっ!王子なんて・・・聞かなきゃ良かったよ!!
「ところで其方、また、面白い事をするのであろう?」
・・・面白い事ってなんだ?はて?首を傾げ考えてみるが、思い当たる事がない。
「兄のカインにも秘密にしているらしいな?」
と、言葉を重ねられても、わからないので、反対側に首を傾げてみる。
「本当に分からぬのか!」
痺れを切らしたみたいだけど、分からないものは分からないのだ。
「キャロライン、父上の領地視察に同行した際に見つけた野菜が欲しいと、頼んだのではなかったか?」
お兄様が、ヒントをくれた。
・・・それは、別に隠してた訳ではないから。
「カボチャの事ですか?・・・隠していた訳ではないのですが---」
ココン様の事で、すっかり忘れていた私は、しばらく経ってから「さて、何作ろうかな?」と、キッチンに立って思い出したのだ。
思わず「しまった!」と、叫んだ後、エプロン姿でお父様の書斎に、乱入した。
「領地で、ココン様が噛り付いていた丸っこい野菜です。取り寄せて下さい!」
と---。もちろん、お父様は快諾して下さいました。
数日後、ギルベルトさんから早速、手渡されました。
「この野菜はカボチャと申しまして、当家の領地では、毎年農地の片隅で育てております。収穫しても長く日持ちするので、冬の食糧不足を補う為に作られている野菜なのですが、お嬢様が食すにはお口に合わないかと存じます」
と、説明付きで渡されました。
---そして、「ですから何か良い考えが御座いましたら、お教え下さい」と、言っていたが---なんなのだろうか?
と、再び首を傾げると、アルフレッド殿下が答えを教えて下さいました。
「其方は、食糧不足を解消する為だけに作られている美味くもないこの作物で、一体何をしようというのか!?」
と、もう痺れを切らして教えて下さいました。
何って・・・そりゃ勿論、決まっている。
「食べ物ですから、料理して食べます」
当たり前です。・・・食べ物で遊んでは行けません!
・・・それにしても、美味しくも無いって!美味しいよ?調理次第で!
---?!だから、ギルベルトさん「良い考えが・・・」って言っていたのかな?
確かに、先日受け取ったカボチャを一つ煮て試食してみたが、甘みが無かった。
育てていた環境によって、甘みが変わるのだからいろいろ試してないとわからないよね。
・・・試食の為に調理したカボチャは、ココン様がムシャっと食べたよ。・・・味見の為に蒸した状態の物を食べちゃったよ。
カボチャスープとかにしても良かったのに・・・一気喰いだ。しかも『我の失敗の味なのだ!』と、よくわからない事を言いながら。
・・・「失敗の味」というより、「苦い思い出の味」だと思うのだが、まあ、反省すべき事を忘れない様に、思い出すと言うのは良い事だ。---同じ間違えをして、トラブルを、起こさないように気を付けてくれればいい。
さて、そのカボチャなのだが、試食した後、種を土に植えてある。
---カボチャは無い!と言いたいとこだが、ギルベルトさんから貰ったカボチャはまだある。
・・・そして、種を蒔いた苗からも---既に実が生っているのだ。
私に実物のカボチャが届いてから、10日程しか経っていないのだ!普通の植物では考えられない成長の早さなのだ・・・。
何故って、それは一重にココン様のおかげです。ココン様は、木属性の魔法の持ち主だ。成長促進なんて、容易い!らしい。
『我の凄いとこを見せてくれよう!』と、頼んでもいないのに、いきなり魔法発動です!
なので、専用キッチンの周りにはウニョウニョと蔦が覆い茂っている。・・・しかも太くてしっかりとした蔦が!魔法って凄いよね!!
・・・でも、これじゃあ、美味しいカボチャを、収穫したい私としては意味が無いのだ。ココン様の魔法を、花が咲いたところで慌ててストップを掛けて、手で受粉作業をして、時間を掛けて実を育てているところでございます。
なので、専用キッチンに周りでカボチャを育てているので、出来れば遠慮したい!成長が早すぎるので、絶対説明求められる。
「学園に入るまであまり時間がない。入って仕舞えば気安く遊びにこられない。今のうちに、今其方が、考えている料理を食してみたいのだ」
と---アルフレッド様。
まだ、一度も作っていませんが?!と、突っ込みを入れたかったのだが、ふっと気がついた。
二人でラブラブデートを兼ねて来たのでは無いかと---。
私に、正体を明かし、シシリア様と我が家の庭でのんびりと一日を過ごし、しかも私が何か作ろうとしている事を聞きつけて、目新しい食べ物を話題性も兼ねて食べたい!と?一石二鳥ならぬ三鳥なんじゃない?一度にいろんな事をしようなんて・・・。
---お兄様達が学園に行ってしまわれると、私の作った新作料理を食べてくれる人がメイド三人とガイが中心になってしまうなぁ。
・・・ここは一つ、乗って差し上げてもいいかな?なんて思いました。
「美味しなくても、苦情は受け付けませんよ?・・・それでもよければですが。---ですが、今から作るので時間かかりますよ?」
「ならば我らは、庭を散策している」
と、言ってシシリア様と行ってしまわれた。
・・・はいはい、仲良くどうぞ。
この場に取り残されたのは、私とカインお兄様。お兄様は、二人のデートを後ろから付いて歩くのかと思ったが、サリジャスさんが付いて回るようだ。
さて、お兄様と一緒に料理・・・それは避けたいな。
テヘッ、困ったね?って笑顔をお兄様に向けたら、とってもいい笑顔で返された。
---お兄様は困って無いらしい!




