51.自分の事はうまくいかないものですよ
『
「はっ!・・・くっ!」
庭の奥、木々が生い茂る人気のない一画・・・ただ黙々と剣を振る音だけが静かにその場を支配していた。
少女は、リボンのついた包みを胸の前に両手で包み込み・・・まるで想いの丈をこめるように、大切に---。
その眼差しは、まるで早く自分を、視界に入れて欲しいという、想いを熱く語っていた。』
『---もう、いいから・・・。そんなナレーションいれても全然そんな雰囲気じゃあないんだからね!』
ランセイの意味不明な、ナレーションに脱力しながら、コッソリと木の陰に隠れ、フォードお兄ちゃまの自主練習かが終わるのをこっそり隠れて様子を伺っている状態です。
昨日、焼いたクッキーを手にして、こんなところに、隠れて待っているから、変なアテレコされるんだよなぁ・・・って!なんで、こんな少女漫画みたいなシチュエーションを醸し出すの!
って、ランセイに注意をしているのだけど・・・全然伝わってない。
・・・どこまで、私の記憶をみたの?!ほんと怖いわ!
さてさて、後ろの木の影から私の様子を楽しそうに覗く、2人のメイド・・・も気になるところなんだけど・・・ランセイの暴走に比べたら、些細なことですよ!
何故、二人かというと・・・エリーは、ガイの元に大量のクッキーを届けに行っております。大量のクッキーは家族に私達からという事にして、エリーが小分けにリボンをかけたクッキーは昨日のお礼だと・・・渡す事になっている。
---まぁ、実況中継が、リーンからランセイ経由で来る予定なので、その内分かるだろう。・・・まずは、目の前の案件を片付けてしまいたい。
・・・って、なんでこんなに気が重いのか!!よくわからんよ!・・・でもさぁ、喜ばれるかどうか分からない相手に手作りクッキーって、ハードル高いよね?・・・そう思うのは私だけか?ここは手作りが基本なのか?---理由もなしに、手作りクッキーって・・・相手が引くよ~。中学生とか高校生の実習後に『食べてください!!』って渡すとかじゃないんだよ・・・。
---仕方が無い、終わって気づいてくれるまでここで待機しよう。
木の影に腰を下ろし、夏が近づいたこの季節---、足元には小さな花が咲いている。それをプチプチとつんでみた。
・・・あまりにも暇だったからね。本に挟んで栞にしよう!!
ボッーとゴソゴソ活動していると、木の影からアンリとジルが何やらバタバタとしているのが目に入った。
えっ、何?
「---・・・お嬢様、お一人でどうなされました?」
上から不思議そうに私を見下ろし、フォードお兄ちゃまが声を掛けてきたのだ!!
「えっ・・・?えっと、どうもしないよ?」
差し伸べられた手を、そっと掴み、私は立ち上がった・・・。
「ええっーと?訓練終わった??・・・お疲れさま。クッキー作ったんだけど、お茶でも飲みませんか?」
なんて言って渡したらいいのか分からなくて、ついつい逃げに走りました!!・・・お茶に出して、一緒に食べればいいじゃないか!!
視界の端に、ガックリと脱力した二人のメイドが居たけれど、そんな事は知ったことではありません!!
「---では、どうぞ召し上がれ」
そんなこんなで、池の畔に移動して、私はアンリとジルにお茶の準備をしてもらった。テーブルにはもちろんクッキーだ。
「・・・ありがとうございます」
ちょっと戸惑い気味のフォードお兄ちゃまが、身のおき場所に困ったような顔をしていた。
・・・誘っておいてなんだが、私も身の置き所に困っているよ。話題が無いのだから!!
二人でもそもそと、クッキーに手を出す。・・・一口食べ、驚きの表情を浮かべ、口元が緩む。
気に入ってくれたみたいで良かった---と胸をなでおろした。・・・でも、話題が無い。
「「---・・・」」
沈黙・・・どうしよう。黙々とクッキーを食べる私達・・・おかしい。
「エリーは、ガイさんにちゃんと渡せたのでしょうか?」
「---恥ずかしがり屋さんですからね」
と、アンリとジル。
「?大丈夫だと思うよ。---ガイは話をちゃんと聞いてくれるから心配いらないよ」
そうだよね・・・なかなか帰ってこないから心配だよね。
---断じて無言の空気に堪えられなくなって、会話に口を挟んだわけじゃないよ!!
「・・・お嬢様は---ではないのですか?」
えっ?何?大切なところ聞こえなかったよ!!下を向かないで、もう一回!
はてな?と首をかしげると、・・・意を決したように、フォードお兄ちゃまが顔を上げた。
「ガイさんがお好きなのではなかったですか!?」
「・・・ごめん、意味が分からないけど・・・私はガイ好きだよ?!えっと、友達として?違うかな・・・仲間として?---なんて言えばいいのかなぁ・・・恋人にしたい好きじゃない、好きなんだけど?」
---意味伝わりましたか?・・・そんな、えっ?て顔されても、そんなの皆分かっていると思うけどなぁ。---はい!そこ!!衝撃の事実!みたいな顔しない!!違うって否定しているのに!
今、あの二人の脳裏には、エリーの恋が叶わないのだと、思い描いたに違いない!そんな事ないって否定しているのに・・・暴走する人達が多い集まりなのか!!
「---そうなのですか?!」
確認するように、フォードお兄ちゃまに聞かれた。
首を大きく立てに振って、肯定します。違います!恋人希望ではありません!!・・・そんな誤解ありえないでしょ!
「・・・そんな事、考えた事もないよ---私の恋人は本(の中の人)だから!!」
本の中の登場人物が好き!!・・・って宣言したら、ドン引きされるよね。間違いない!なので、ここは本が恋人としておくのだ!!
「「「----」」」
何とも言えない沈黙・・・なんだ、駄目なのか?!本が恋人じゃあ!!
私が声を上げようとしたその時、・・・沈黙を破る声が背後から聞こえた。
「ぶはっ!先ほどから聞いていたが、キャロラインは本が恋人なのか!?寂しい奴だな!」
ムム・・・この声は!レッド!!
バッ!と後ろを振り向くと、ニヤリと人を小馬鹿にした笑いを浮かべたレッドと、困ったような顔をしたお兄様が立っていた。
・・・なんだ、久しぶりに来たと思ったら、来た早々人を馬鹿にするのか?!マジ帰れ!!
『報告します!!エリーは無事任務終了したと、連絡がありました。ガイが帰り家に送っていく事になりましたので、途中何らかの方法で接触できる機会を作るつもりだと!言っておりました!!』
『・・・あーっ!報告ありがとう!!』
ギッ!とレッドを睨みつける私に頭の中に響いたランセイからの報告・・・だからもうそれはいいから。もう好きにして!!足掛けして転ばせようとするのは程ほどにお願いします!!
もう、疲れました。ガックシ・・・と椅子に座ると、当たり前のように、レッドが席に着きクッキーを食べていた。




