50.・・・勝手な暴走しないで下さい
『・・・報告します!!只今、ガイとエリーが初接触をしました!』
何!急に頭の中に響いた声の内容にびっくりした!!下を見ると・・・ランセイがビシッと直立して某巨人に出てくる兵士のように胸に手を当てて、私を見上げていた。
---なんだろう、私が巨人になった気分。・・・駆逐されるのかな?!
イヤイヤ・・・報告しますって!何を!何か指示出していた?・・・もしかして私の頭の中にある言葉とか脳内で繰り返し思い出してニヤニヤしている前世の漫画の内容を見られているのか?!
変なドキドキ感を味わいながらランセイが口を開くのを待った。
『リーンからの報告によりますと、ガイを案内していたエリーさんが、廊下を歩いている最中、何かに躓き倒れそうになったところ、ガイが抱きとめ・・・思わず頬を染めているエリーさんを目撃し・・・ドキッとしたガイの報告がありました』
---なにそれ!怖い!ドキッって心音まで伝わるって事だよね。妖精にはプライバシーって言葉はないの?!
『数秒、ジーっと見つめ合ったとのとこです』
そんな心音まで報告されて、・・・それってどうなの?!何でも分かっちゃうって事---もしかして私の考えている事筒抜け!?
---私の泣き言も、くじけそうな心も、ちっ!と心の中で罵倒している声も、もしかしてランセイには聞こえているって事・・・ありえるよね。
『リリーは、こっそりと大役を遂行しました!』
・・・って、大役ってなに!??転ぶように仕掛けたの!?
もしかして、私がコッソリ思い浮かべた恋愛漫画の恋に落ちる脳内シミュレーションの事なのか?!
『・・・ソウ、アリガトウ』
あまりにも、びっくりな報告といや~な考えにとらわれてしまい、棒読みでお礼をやっとの事で告げ、会話を終了させた。
バクバクしている鼓動を周囲にばれないように、私は本を開き読書の振りをする。
---マジで、嫌な事実判明・・・。
・・・私、確かに昨日脳内シミュレーションで、転びそうになった女の子を腕に抱きとめて助ける男子高校生をイメージした。---でもそれを実行するって、リリー!!
・・・ランセイ、頭の中を覗かないで!!そして二人で勝手に実行しないで・・・マジこわ!
今日も、ガイはマヨネスの打ち合わせにやって来て帰って行った。今さっきの出来事だ。
部屋を出て数分の事で、エリーが見送りに出ている。
・・・そろそろ帰ってくるかな?
バタバタと慌ただしい足音がどんどん近付いてくる。
「ババーン!お嬢様!!」
おおう!こっそり覚悟していたけど、飛び込んで来るとは思わなかったよ。
「どっ、どうしたの!」
「聞いてください!ガイさんに抱き締められました!---正確には、転びそうになった所を助けて頂いたら、腕の中で!!私どうすればいいですか!」
・・・良かった。抱き締められたって妄想に発展してなくて---ある意味それは怖いからね。・・・怖い関係者が増えるのはイヤだ!
「---う~ん、別にお礼しておけばいいと思うけど、これを切っ掛けにこの先を続けたいのか?によると思うのだけど?・・・エリーを認識してほしいなら、動かないとね?!どうする?」
「・・・切っ掛けにしたいです、どうすればいいですか?」
そうだよね、チャンスは使わないとだよね。
「お礼ね・・・、やっぱりお菓子じゃないかな?でも、ガイの分だけじゃ駄目だよ?ちゃんとお家の方の分まで用意していかないとね!それと手作り!!これ絶対だよ!!」
「---手作りですか・・・あまり自身がありませんが。---でも頑張ります!!何がよろしいと思いますか?」
不安そうになりながらも、やる気を見せてくれたので---頑張ってお手伝いしましょう!!
・・・もとより応援しているから、手伝うんだけどね。そもそも、手作りお菓子に自信はないと思うけど、お料理は出来ているよ。
---そりゃ、これだけ私と専用キッチンにたって手伝いをお願いしているのだから、それなりに腕はあるのだ・・・ただ、私の作る料理が出来るのであって通常のご家庭料理であるか?!と聞かれると、それは微妙です。---だって、作ってるのみたことないんだもーん。
「じゃぁ、定番お菓子!クッキーでも作りますか?!大量だから皆で作りましょう!!」
という事で、専用キッチンに移動します!!
「じゃあ、簡単クッキーを皆で作りましょう!!---あっ、ガイの分はエリーが担当してください!!」
わたしは、バター、砂糖、卵、小麦粉、ドライフルーツをそれぞれ大量に用意した。おまけにチョコレート・・・これは味の違うクッキーを作る為だ。
今回作るのは、オーソドックスなバタークッキー、フルーツクッキー、チョコレートクッキーの3種類を作ろうと思います。
そしてこれは、型抜きをしないので、もっとも簡単に作れるのだ。大量に作るにはもってこいなのだ。
まあ、簡単に言ってしまえば、材料をコネコネして一つにまとめて、棒状状に丸めた生地を紙で包んで(・・・本当はラップが欲しいけど、贅沢はいけないよね)保冷庫で休ませます。
ザッと簡単に説明するとそんな感じです。
バタークッキーの分をとりあえずまとめて保冷庫に入れて、残りを半分にして、ドライフルーツを入れてコネコネして保冷庫に・・・残りにチョコレートを入れて再びコネコネして保冷庫に入れて・・・休憩する事にしました。
・・・しばし閑談する事にします。
「---・・・いい機会なので、お嬢様にお聞きしたい事があるのですか?よろしいですか?」
ウンウン・・・と口火を切ったエリーに追随するように二人が頷く。
??いい機会ってなに?改まって聞く事なの?そんなに聞きにくいこと?
「??---別にいいけど、何??」
何を聞かれるのは、内心ドキドキしていたけど、ここはお嬢様として平静を装うのだ。・・・私はミルクティーを静かに口に含む。
「・・・ギルフォードさんとは、どうなったのでございますか?」
「ゴフッ!!・・・ごふぉっ」
!!えっ?何?!・・・ここでフォードお兄ちゃま?!
「---大丈夫でございますか?」
と慌てて、メイドさんたちは、噴出した紅茶を拭いたり、私の背中をさすったり大慌てだ!
「・・・ゴメン、ありがとう。---でも何でフォードお兄ちゃま?」
質問された私は訳が分からない・・・何かそんなに聞かれる事があったのかな?!
「---いつからなのか、分からないのですが・・・ギルフォードさんがお嬢様のお傍に居る事が少なくなったというか・・・少し変わられました」
意図してそうしているつもりもないのだけど・・・結果的にそう見えているという事だろうか。
確かに、4年前のあの日から・・・私はフォードお兄ちゃまに自分から声を掛けてはいない---と言っても、勉強仲間としてお父様に紹介されたので、書庫で授業がある時は顔をあせて、今までどおりに会話をしている。
「---・・・授業の時は話をしているよ」
ふいっと、視線を下に下ろし、取り自分の顔の表情が隠れるようにカップにゆっくりと口をつける。
そもそも、授業以外での接点などないのだ・・・私が今までフォードお兄ちゃまを連れまわしていただけで。
お兄ちゃまから声を掛けたいと思ってもらえていない時点で、私はお兄ちゃまにとっては、ただのこの舘に住んでいる主の娘でしかない。・・・だったら、それでいいのではないか---と思ったのだ。わざわざ声を掛けてまで相手をしたくないと、思われているんだと感じたのだ。
「---そうではなくてですね」
と・・・3人は困った様な顔をして小さな溜息をついた。
「---・・・ギルフォードさんをお部屋に呼ばなくなったり」
「・・・廊下やお庭で姿を見かけても、声を掛けなくなったり」
「---そうやって、直ぐ視線を下にしてみない振りをしてみたり」
「「「---・・・そろそろ、お止めになってはいかがですか?」」」
と声を揃えて3人が詰め寄りました。
・・・確かにそうなんだけど、おしゃべりしている割には良く見ているね。---そんなに、問い詰められると困ってしまうね。
にへらっ、と変な誤魔化し笑いを浮かべ、3人を見るが・・・答えを待っているようだ。
「・・・そもそも、私から声を掛けないといけないのかな?!」
心の奥底で思っていた事を少し、ボソボソっと口に出していってみた。
「侍従のギルベルトさんの息子さんで使えてもらえてはいるけど、フォードお兄ちゃまは、お勉強友達のはずで、使えてもらっているわけではないから、フォードお兄ちゃまが声を掛けてくれないって事は!!」
ちょっと声にだした言葉が、意外にも心の奥で溜め込んでいたらしく、ブツブツと話出した言葉は、次第に大きくなりちょっと感情的になってしまった。
「---私に興味がないって事でしょ!!」
仕舞いには、ばば---ん!!と机を両手で叩き声を大にして立ち上がってしまった・・・。
あっ!と、気が付いて3人を見ると、唖然とした表情から・・・一気にニンマリとした笑みを浮かべていた。
「なんですか?それは---お子様ですか?」
「---すねていただけでなんですね」
「---・・・それで4年って、長すぎないですか?!」
と、グリグリと3人は三者三様の言葉で心を抉っていく。
「そもそも、私はお子様だからいいの!!」
と抗議してみたが、軽く流されました。
・・・いいよ、別に流してくれて。3人が居てくれれば楽しいし。
「では、お菓子作りを再開いた致しましょうか?」
「お嬢様は、ギルフォードさんの分を用意してください!」
「私達は皆で、ガイさんところの分と、旦那様の分を用意しますから!」
「えっ・・・いらないよ。そんな気遣い、遠慮します」
と両手を胸の前に広げ、降参します。・・・お願いそっとして置いてください。
そんな私の言葉はサラリと無視されて、3人はイソイソとクッキーを焼き始めた。
・・・なんでこうなったの?!
一人頭を抱えながら、悶々として状態で、言われるがままに口を動かし、手を動かし・・・クッキーを完成させた。3人は、クッキーが冷める間、再び雑談する事にしたらしい。
・・・もちろん、私は一人窓際読書---全然読めてないけどね。
悶々としている状態では、言葉が頭の中に入ってこなく、読書にならないのだ。・・・仕方がないので、読書するふりをして、ランセイを眺めていた。
---私には見向きもせず、クッキーを一つ手に入れ、はむはむ、と美味しそうに食べていたので、味は大丈夫なようだ。
暫くして、お菓子を食べ終わったランセイが、クルリと体を私の方に向け、ビシッ!と例の敬礼をした!
・・・だから、その敬礼は止めて。
『---報告します!ガイが、自分の右腕を見て、何かを思い浮かべたように、フッと頬を緩ませ微笑んでいたと連絡がありました!!』
---お願い!その報告もしないで!!・・・プライバシーの侵害で訴えられますよ!!・・・---私の精神がその報告に耐えられないので止めてください!!
・・・知り合いがニマニマしている姿なんで想像したくないし!---こんな事がばれたら、私が居たたまれない!!
ぎゃー!!と言う、私の心情は、一切ランセイにもリーンにも伝わらない。そもそも、ランセイが感じ取ってくれるタイプではないのが、残念なのか、結果オーライなのかは、分からない。
・・・ぎゃー!って心情がリーンに伝わったら、ガイにも伝わり、理由を問いただされると思うからだ。
この報告を止めさせるように、ランセイに得々と理解してもらえるまで話しをしなければならないようです。
・・・夜までズーッとこの状態ですか!?---体調悪い振りして、寝てもいいですか?!




