38.変な子供のお守は勘弁してほしい
今回はガイの視点・・・
「ぜーったいに駄目です!!」
「なんでどうして!!フォードお兄ちゃまが駄目だっていうの!!お父様がガイと一緒なら良いって、言ったもん。何でお兄ちゃまが怒ってるの?!意味わかんないよ」
プィっと、ついにアキラはそっぽを向いた。
昨日、アキラは家にやっと帰って来たのだが、『気になる事があると、ゆっくり出来ないの!!』と父親を説き伏せ、再び屋敷の外に出る許可をもぎ取り、翌朝俺を部屋に呼びつけたって訳だ。
まぁ・・・暫くの間、侯爵家で厄介になる事になったので、暇つぶしには丁度いいのだが、なんだ・・・この茶番は。
---まったくあいつらは、お子様だな。
「ちょっとガイなんでそんなどこに座っているの?ここ私の部屋なんだからそんなところに座らないで」
お子様たちが繰り広げる決着のつかない言い争いを、我関せずと傍観を決め出窓に腰かけていた俺に気がついたようだ。
オッと・・・怒りの矛先が、俺に向かってきたので、立ち上がりあいつの頭をぐりぐりと撫で回す。
「護衛対象が2人になるとこいつの危険度が増すからなお前は留守番だ。せめて自分の身は自分で守れるようになってからにしな」
と、ギルフォードにそう告げ、頭に銀色のカツラを乗せる。---キャロラインお嬢様が行方不明の間、この窓辺に座っている事を主に言いつけられたようだが---カツラだけとはいえ、女の振りをさせられるのは嫌なのだろうが・・・取り払う事もせずに甘んじてカツラを被る事にしたようだ。
お子様といえども、男か・・・守るべき者を決めた子供が、憎憎しげな瞳で俺を睨みつけるが・・・そんな事は、どーでもいい。まぁ、その憎しみを鍛錬にでも向けるがいいさ・・・。
「全くなんでお兄ちゃんはダメだって言うんだろう?」
「まぁあれだろ?お前が心配なんだよ」
「それにしたって外に出ちゃいけないなんてちゃんとガイが一緒なんだよ」
「まぁお子様はお子様でいろいろ思うことがあるんだろう」
男の機微には疎いこの子供・・・いや、この年で敏感に反応していたらそれはそれで末恐ろしいものがあるが・・・全くもってあのギルフォードとかいう子供の感情には、欠片も気づいてはいないようだ。こいつの影響なのか---あのギルフォードという子供も持って生まれた素質もあるのだろうが、賢い部類に入るのではないのか。
「---お前は、お子様だな・・・」
「はぁ?!見た目は子供、頭脳は大人だぞ!!ガイより賢いと思うけど!!」
「---全くもって、意味が分からん」
アキラと共に手紙の配達を終え、王都のギルドに到着した。もちろん完了報告だけをしに来たのだが・・・。
「おい・・・何をしているんだ?」
「もちろん、次の依頼を探しているんだよ」
アキラは、掲示板に張られた依頼書をジーッと眺めている。
「---子供には、難しくて読めないだろ・・・いいから帰るぞ」
首根っこを引っ張り、カウンターに依頼達成の報告に向かわせようとするよりも早く、
「エイッ!」
とジャンプをして依頼書を一枚取り、目の前に突きつけてきた。
「これ!!絶対にやってみたかったんだ!!お願い!少しだけ・・・」
---薬草とり。
「---はぁ?!俺が!文字が読めるのか??薬草とりだぞ!」
「だからだよ!!お願いします!」
本気か・・・。本当に初心者依頼を受けるのか・・・受けるのはアキラなんだが---ここで折れる訳には行かない。
「駄目だ!今日はギルドの仕事は請けない。俺の依頼主からの許可は下りていない。まずは自分で交渉しな」
まぁ、依頼主はアキラ・・・キャロラインの父親・ランドルフ侯爵なのだが---許可が下りないことにはギルドの依頼を受ける事は出来ないのだ。今、俺はランドルフ侯爵家から今回の誘拐事件の犯人が捕まるまでの間、庇護を受けると共にキャロライン・・・アキラと行動を共にして、護衛するという内容の依頼を請け負っている。この契約の期限は定められてはいないのだが---それなりに自由が利くのであれば、当分の間この状況を楽しむつもりだ。
---退屈しのぎには丁度いい。何よりも見入りがいいしな。
王都のメイン通りと案内し、屋台などの庶民が活用する市場を少し案内した後に屋敷に返す予定だったのだが---。
「---ガイにいちゃん!待ってよ・・・・」
息を切らせながら走りよってきた子供---リクルが声を掛けてきた。アキラは首を傾げて、俺を見上げている・・・全く仕事中に声を掛けるな!と言っていたのだが、こいつと手をつないで歩いていたらか・・・そう見えなかったのか??
「---はぁ、リクル。元気そうだな・・・今は仕事中なんだ、後にしてくれ。近い内に顔を出す」
「えっ??仕事中なの?」
俺とアキラを交互に見比べ・・・納得はしていないだろうが、仕事なのだと理解したようだ。俺はそのままアキラの手を引き、先を急ぐ予定だったのだが---クイッと腕を引っ張られた。
「---どちら様ですか?」
ニッコリと、微笑んでいるが---オイオイ・・・それはどこの子供のつもりだ・・・リクルがちょっと頬を染めてアタフタと腕を振っていた。
---ニッコリと微笑を浮かべ、首を傾げているだけなのだが、如何せん・・・元が残念美少女なのだが、初対面には分かるはずも無く、小僧のなりをしていてもそれなに効果があったようだ。
---・・・こりゃ、変な趣味の輩に狙われないように注意が必要だな。
リクルは、俺の顔を見上げどうすればいいのか考えあぐねているようだ。
「---こいつの名はリクルだ。俺の弟分だ」
そう告げると、ペコリと頭を下げる。
「僕はアキラ、宜しくね。ねぇ、リクルも一緒にどう?ガイと久しぶりに会ったんでしょ?!」
「おい、・・・言葉には気をつけろ」
・・・それじゃぁ、いいとこのボンボン丸出しだ。この通りの裏通り---いくら王都とはいえ、柄の悪い連中も大勢すんでいる。---今もどこかでイイカモを探しているのだ。
「ガイにいちゃん---いいのかい?!」
あ~・・・こいつは余計な事を・・・。俺はしぶしぶならが行動を許した。
アキラは、アチラこちらの店に顔を出し、様々なモノに興味を持った。露天に並んだ商品・・・金額・・・そしてそれを売っているオヤジやジジ・ババ連中にもだ。
興味を持った物の話を、「へ~、そんなんだ~、凄いね~、それは大変だ・・・」といちいち感心しながら厳つい男や年老いたジジ・ババの話を楽しそうに聞いて回るのだ。店一つ回るにも時間がかかる。
---そして、興味が沸くと料理もした事ないであろうお嬢様が、小麦や香辛料の説明を事細かに聞き、購入していくのだ。・・・もちろん金の支払いは、俺が予め依頼主から預かっており、そこからの支払いなのだ。
「---じゃぁ、ガイ、リクル・・・行こうか!」
「どこに行くつもりなんだ?」
俺は、最後に購入した菓子の代金を支払い、アキラに荷物を持たせる。今まで購入した荷物はリクルに持たせていたのだが、菓子の袋はアキラに持たせる事にした。イクルは、アキラの持つ袋から暖かく甘い香りに顔が緩んでいる。
・・・なかなか甘いものを買っていく余裕は今の俺にはない、我慢してもらうしかない。
「・・・だって、ガイ後で顔出すって言っていたでしょ?そこに行くんだよ。リクル一緒に行ってもいいかな?」
オイオイ・・・勘弁してくれよ。
こいつは見かけで人を判断する輩とは違うのは分かっているが---相手の間合いに踏み込みすぎだ。ギロリと睨みを利かせ・・・口を閉じさせようとしたのだが、このお子様には通用しなかったようだ。
「---だって、お土産のお菓子も買ったんだよ?リクル好きだよね?!」
リクルは、目を輝かせ俺を見上げてくる。・・・駄目だ、菓子に釣られている。
この菓子は、リクルを巻き込む為に買ったのか?計算ずくだとしたら・・・なんてお子様だ。
ここ数日、アキラと行動を共にしたせいかなのか・・・俺はアキラを自分の保護する対象として見すぎていたのかもしれん。他の奴等なら、許可する事は無いのだが---俺もこいつには生ぬるい対応になっている事に気が付いた。
---こいつが子供だからか?・・・まぁ、気長に観察でもさせてもらおうか。
「---それじゃぁ、足らん。その倍は必要だ」
俺は、仕方が無い、イヤイヤ行くんだからな!という対応をしながら、これからアキラによって起こるであろう変化に期待をしよう。
---さて何をやらかしてくれるのか・・・楽しみだ。




